本を読むってこんなに自由?~世代と時代を越えて楽しむ読書の世界~
はじめに…本との出会いは季節よりもっと自由で良い
本棚から少し黄ばんだ一冊を取り出す人もいれば、スマートフォンを開いて寝る前に物語の続きを読む人もいます。子どもなら親と一緒に絵本をめくり、高齢になれば昔読んだ小説をもう一度味わうこともあるでしょう。読書週間や夏休みの読書感想文は、本を手に取る良いキッカケですが、本との付き合い方まで季節に決めてもらう必要はありません。読む本も、読む場所も、読む速さも十人十色。それでも心に何か1つ残れば、十分に実りある読書です。
紙の本には、ページをめくる感触や書店で偶然一冊と出会う楽しさがあります。デジタルには、いつでも持ち歩けて、紙では見つけにくい作品まで届きやすい面白さがあります。プロの作家だから必ず自分に響くとも限らず、名も知らなかった書き手の物語に夢中になることだってあります。本との出会いは正に一期一会。「評判だから読まなくちゃ」と構えた途端、読書が宿題の顔をしてこちらを見てくるのですから困ったものです。
春には新しい世界へ手を伸ばし、夏には物語へ深く潜り、秋には読む幅を広げ、冬にはゆっくり味わう。そんな季節の流れも楽しみながら、子どもから高齢者まで、自分に合った一冊との距離を見つけていきたいものです。読み終えた後に「面白かった」「少し分かった」「明日はこれをやってみよう」と思えたなら、その本はもう立派に今日の暮らしへ届いています。
[広告]第1章…春から始まる読書~子どもは「読んでもらう」から世界を広げる~
入園や入学、新しい教室、新しい友達。春は子どもの暮らしに「初めまして」が一気に増える季節です。本もその仲間に入れてしまえば、読書は勉強より先に小さな冒険になります。まだ文字を十分に読めない子なら親が声に出して読み、少し大きくなれば「次はどれにする?」と一緒に選ぶ。やがて自分だけでページを進めるようになる。この流れには、急がずとも自然に世界を広げていく楽しさがあります。興味津々で恐竜ばかり追いかける時期があっても、同じ昔話を何度もせがんでも、それは寄り道ではありません。「またこれ?」と大人は思いますが、本人にとってはお気に入りの世界へ今日も無事に帰宅しているのです。
今の子どもにとって、本の入口は紙だけではありません。タブレットやスマートフォンで絵本や図鑑を見ることもでき、音声付きの作品なら、まだ読めない言葉にも触れられます。親が傍で内容や利用時間を見守れば、デジタルは膨大な本棚へ繋がる便利な扉になります。一方、紙の本には好きなページへすぐ戻れたり、親子で同じ絵を指さしたり、読み終えた本を棚へ戻して「これだけ読んだ」と実感できたりする良さがあります。紙かデジタルかを勝負させるより、その子が「もう少し読みたい」と思える方を選ぶことが、読書を長く楽しむ近道です。
子どもの読書で気をつけたいのは、大人が良かれと思って「何分読んだ?」「何冊読んだ?」と成績表を作り始めてしまうことです。五分で笑って本を閉じる日もあれば、休日に一時間近く夢中になる日もあるでしょう。集中できる長さは年齢だけでなく、その日の疲れや本との相性でも変わります。毎日一定量をこなすより、「面白かったところを教えて」と声をかける方が、本の内容は会話になりやすいものです。試行錯誤しながら好きなジャンルを探すうちに、図鑑から科学へ、昔話から歴史へ、漫画から原作小説へと興味が枝分かれすることもあります。
春に始めた読書習慣が、そのまま一年続かなくても構いません。本棚から離れて外遊びに夢中になる時期があっても、ある日ふと戻ってくれば良い。子どもに渡したいのは「読まなくてはいけない本」ではなく、「知りたい時や疲れた時に、本という行き先もあるよ」という感覚なのでしょう。親が選び過ぎず、放っておき過ぎず、少しだけ隣にいる。その距離から始まる1冊は、教科書とは違う形で子どもの毎日を広げてくれます。
第2章…夏に夢中になる読書~宿題の本から自分で選ぶ1冊へ~
夏休みと本を並べると、多くの人の頭に浮かぶのが読書感想文ではないでしょうか?課題図書を前にして「面白そう」と目を輝かせる子もいれば、原稿用紙までセットで思い出して急に遠い目になる大人もいそうです。読書そのものは楽しいはずなのに、読み終えた後に感想を書かなければならないとなると、途端に宿題らしい顔つきになります。それでも夏は、学校の時間割から少し離れられる分、1冊の世界へ一心不乱に入り込める季節でもあります。短い物語を何冊も楽しんでもヨシ、普段なら手を出さない長編へ挑んでもヨシ。夏の読書は「読ませる時間」より「好きな世界へ潜れる時間」にできれば、グッと印象が変わります。
本選びも、立派な作品から始めなくて構いません。野球が好きなら選手の物語、虫が好きなら昆虫図鑑、ゲームが好きなら攻略や制作の舞台裏、怖い話が好きなら背筋が少し涼しくなる1冊も夏らしいでしょう。漫画から歴史上の人物に興味を持ち、そこから伝記へ移ることもありますし、映画やアニメを見て原作を読みたくなることもあります。入口は千差万別で、どこから入ったかより「もっと知りたい」が生まれた方が大切です。大人が思い描く正しい読書コースから少々外れていても、本の世界では寄り道した先に本命が待っていることがあります。
デジタルの本棚は、そんな寄り道をとても得意としています。1冊を読み終えた直後に関連する作品へ進めたり、書店では見つけにくい作品へ出会えたりするので、興味が熱いうちに次の扉を開けます。一方、紙の本を図書館で何冊か借りて机の端に積んでおけば、「今日はこれにしよう!」と表紙を眺めながら選ぶ楽しさがあります。夏休みだから毎日30分、何冊以上、と時間や冊数を決める方法もありますが、それが負担になるなら少し緩めても良いでしょう。時計を見るのを忘れるほど読めた10分間は、義務感でページを追った1時間より、その人にとって豊かな読書になることがあります。
そして、読書感想文があるなら「何を感じるべきか?」まで大人が先回りしないことも大切です。「主人公は勇気があって立派でした」で終わらず、「自分なら絶対そこへ行かない」「この人ちょっと苦手」「途中は退屈だったけど最後だけ好き!」でも、それは本人が本と向き合った証拠です。正解を探すより、自分の感じ方に気づければ、本は宿題から少しずつ自分のものへ変わります。夏の終わりに1冊の題名を覚えていなくても、暑い午後に夢中でページをめくった感覚が残っているなら、それも十分に夏の読書の思い出なのです。
[広告]第3章…秋に広がる読書~紙とデジタルとプロとアマの境界を越えて~
秋になると「読書の秋」という言葉を耳にする機会が増えます。けれど、本棚の前に立ってみると、今の読書は昔よりずっと百花繚乱です。書店には新刊が並び、図書館には長く読み継がれた作品があり、スマートフォンを開けば電子書籍や投稿作品まで待っています。「本を読む」と言っても、入口はもう1つではありません。紙の匂いが好きな人もいれば、布団に入ってから画面を数ページ読む人もいる。どちらも同じように、言葉の向こうへ出掛ける読書です。
紙には紙の良さがあります。手に持った厚みから残りのページを感じ、気になるところへ指を挟み、読み終えた1冊が本棚に残ります。新しい作品がまず紙で発売され、電子版を少し待つ場合もあります。一方、デジタルなら本棚の場所を取らず、端末1つで何冊も持ち歩けます。紙では手に入りにくくなった作品に出会えたり、反対にデジタルでしか公開されていない物語を読めたりすることもあります。「紙の方が本らしい」と決めつけてしまうと、折角、目の前に広がった巨大な本棚の半分を閉めてしまうようで、少々もったいないです。
さらに面白いのが、誰が書いた文章を読むのかという選択です。出版社から出る商業作品は、企画や編集、校正など多くの人の手を経て読者へ届きます。それは品質を整える大切な仕組みですが、出版社を通ったから自分にとって必ず面白いとは限りません。評判の一冊を読み始めて「世間では傑作らしい……私の感性、ただいま留守ですか?」となる夜もあります。反対に、投稿サイトで偶然出会った無名の書き手の短編に、夜更かしするほど引き込まれることもあるでしょう。アマチュア作品には玉石混交という面がありますが、それは読者自身が好みの一作を掘り当てる楽しさにも繋がっています。
作品が世に届くまでには、商業出版なら出版社の判断があり、デジタルの世界なら投稿先の仕組みやランキング、おすすめ表示などがあります。入口の形が違うだけで、どちらの世界にも「読者の目に触れるまでの道」があります。その先で最後に選ぶのは読者です。有名だから読む、無名だから避けるではなく、冒頭を少し読んで面白ければ進み、合わなければ閉じても良い。本の価値を最後に決めるのは肩書ではなく、「この続きを読みたい!」と思った読者自身の心です。
紙から電子へ、商業作品から投稿作品へと行ったり来たりできる今は、読書好きにはなかなか贅沢な時代です。本屋で見つけた作家をデジタルで追いかけても良いですし、ネットで知った物語から紙の1冊を買って手元に残しても良い。秋の読書週間をキッカケに1冊を手に取ったとしても、その先は四季を越えて続いていきます。読む場所も書き手の肩書も越えて、自分の「面白い」を頼りに歩けること。それこそ、今の読書が持つ自由な楽しさなのかもしれません。
第4章…冬に深まる読書~高齢者も自分の速さで味わえる本との時間~
冬の午後、窓の外は早くも夕方の色になり、温かい飲み物の湯気がゆっくり上がっている。そんな時間には、1冊の本がよく似合います。寒い季節は外へ出る機会が少なくなりやすいからこそ、家の中で過ごす時間を「退屈」にするか「自分の時間」にするかで景色が変わります。若い頃のように一晩で長編を読み切らなくても構いません。短編を1つ、随筆を数ページ、写真集を眺めながら昔の旅を思い出す。晴耕雨読のように、その日の体調や気分に合わせて本を開く暮らしは、高齢期だからこそ似合う悠々自適な楽しみでもあります。
高齢者と読書というと、やはり紙の本を思い浮かべやすいでしょう。長年親しんだページの感触があり、読みかけの場所には栞を挟めば良い。充電も通信も必要なく、本棚を眺めれば「あの本をもう一度」と手が伸びます。ただ、年齢を重ねれば小さな文字が読みづらくなったり、分厚い本を長時間持つのがしんどくなったりすることもあります。そんな時は大活字本や軽い文庫、短編集などを選ぶのも1つの方法です。「昔はもっと読めたのに」と過去の自分と競争する必要はありません。十数分読んで目や肩が疲れたなら、そこでお茶休憩。本は逃げません。むしろ栞だけが「続きはここですよ」と律儀に待っています。
一方で、高齢者にこそデジタル読書が助けになる場面もあります。文字の大きさを変えられ、端末1つなら何冊もの本を抱える必要もありません。紙では入手しにくくなった作品へ届くこともあり、昔好きだった作家をもう一度追いかける楽しみも生まれます。操作に慣れるまでは家族の手助けが必要になるかもしれませんが、「高齢者だから紙」と決めてしまうと、便利な入口まで閉じてしまいます。反対に、何でもデジタルへ替える必要もありません。紙は安心して戻れる本棚、デジタルは遠くまで出掛けられる本棚と考えれば、どちらも味方になります。
読む内容も若い頃と同じでなくて良いのです。歴史小説をじっくり読む人もいれば、郷土の本から昔の町並みを思い出す人もいるでしょう。料理本を眺めて「これは昔よく作った」と家族へ話せば、1冊が会話のキッカケになります。俳句や短歌なら数行から楽しめますし、旅行記なら座ったまま遠い土地へ出掛けられます。さらに、昔読んだ本を再読すると、若い頃には気づかなかった登場人物の気持ちが妙に分かることもあります。同じ物語なのに、読む人の人生が進んだ分だけ違って見える。これは年齢を重ねた読者だけが味わえる、なかなか贅沢な読書です。
冬は「たくさん読む季節」でなくても良いのでしょう。静かな時間の中で1冊と長く付き合い、今日は3ページ、明日は10ページと自分の歩幅で進めば十分です。読み切ることより、読んでいる間に昔を思い出したり、知らなかったことへ心が動いたり、「明日は誰かにこの話をしよう」と思えたりする方が暮らしにはよく残ります。ページを閉じた後にも何かが続いていくなら、その読書はそこで終わっていません。冬の部屋から始まった小さな1冊が、春になって外へ出る理由まで作ってくれることだってあるのです。
[広告]まとめ…良い読書は今日を満たし明日へ何かを持ち帰れる
本を読む時間は、人生のどこかに用意された特別な時間ではありません。子どもが親の膝で絵本を眺める5分も、学生が夏休みに長編へ夢中になる午後も、仕事帰りにスマートフォンで数ページ進める時間も、高齢者が昔の1冊をゆっくり読み返す冬の夜も、全て同じ読書です。春夏秋冬で本を手に取るキッカケは変わっても、人が言葉から何かを受け取る楽しさに季節の境界線はありません。
紙かデジタルか、商業作品か投稿作品か、小説か漫画か、長編か短編か。選択肢が増えた今だからこそ、読者は臨機応変に自分へ合う入口を選べます。評判の本が合わなければ途中で閉じても良いですし、誰も知らない作品を何度も読み返したって良い。「最後まで読まなければ」「難しい本を読まなければ」と肩に力が入った瞬間、本棚の方まで妙に威圧感を出してくる気がします。いや、本棚は何もしていないのですが。
読書には、決まったゴールも卒業年齢もありません。「好きこそ物の上手なれ」ということわざのように、まず面白いと思えることが長く付き合う力になります。たくさんの知識を覚えなくても、物語に笑ったり、知らなかった暮らしを知ったり、自分とは違う考え方に出会ったりする。その小さな積み重ねが、時には明日の行動を変え、時には昔の出来事を見る角度まで変えてくれます。
良い読書とは、何冊読んだかではなく、本を閉じた後に自分の中へ何か1つ持ち帰れた読書なのだと思います。「面白かった」だけでも十分です。「今度やってみよう」ならなお楽しい。「この考え方は自分とは違うな」と分かっただけでも立派な収穫でしょう。本との付き合いは自由自在でよく、読む速さも読む場所も、その日の自分に合わせれば良いのです。
季節が変われば手に取りたい本も変わり、年齢を重ねれば同じ1冊から見える景色まで変わります。今日読んだ数ページが、明日の会話の種になるかもしれませんし、何年も先になって「あの本に書いてあったな」と思い出す日が来るかもしれません。そんな小さな出会いを楽しみに、まずは気になる1冊をそっと開いてみる。それくらいの軽さから始まる読書が、長い人生にはちょうど良いのでしょう。
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