ケアマネージャーはなぜ天気に振り回されるのか?~雪の日の本音と心構え~
目次
はじめに…空を見上げて一日が始まるケアマネージャーの朝
朝、カーテンを開けて空を見上げた瞬間に、その日の大変さが凡そ決まってしまうお仕事があります。ケアマネージャーも、その1つと言っていいでしょう。晴れている日と、土砂降りの日。強い風の日と、地面が真っ白になるほど雪が積もった日。同じ一日でも、空模様によってお仕事の中身と疲れ方が、ガラリと変わってしまいます。
ケアマネージャーは、だいたい数十人分の暮らしを同時に預かっています。一人一人に、「どのような支えがあれば、いつもの生活が続けられるのか」を考え、在宅サービスや施設サービスを組み合わせていく役割です。書類を作るだけでなく、お宅を訪ねて話を聞き、事業所と相談し、市役所ともやり取りしながら、暮らし全体のバランスを整えていきます。
ここに「天気」という要素が重なると、話は一気に難しくなります。雨や風で道が通れなくなることもあれば、急な寒さで体調を崩す方もいます。雪が積もれば車は動きにくくなり、転倒の危険も増えます。サービス提供側の事業所が「今日は危ないから休みます」と判断すれば、その瞬間から、利用者さんの生活リズムと安全をどう守るかという新しい課題が生まれます。
しかもケアマネージャーは、基本的に「その人の暮らしを最初から最後まで見届ける立場」です。暴風警報が出ていようが、大雪で交通が乱れていようが、「今日は全部お休みです」と簡単には言えません。外に出て動くか、自宅から電話や連絡手段を総動員して調整するか、どちらにしても頭と心はフル回転になります。
この記事では、ケアマネージャーという仕事が、どのように空模様に振り回されやすいのか、特に雪の日を中心に振り返りながらまとめていきます。単なる「大変だった話」で終わらせるのではなく、「どう備えれば少しでも楽になるのか」「心が折れないために、どんな工夫ができるのか」という視点も交えながら、同じ仕事をしている方にも、これから目指したい方にも読んでもらえる内容を目指します。
天気は変えられませんが、備え方や考え方は変えられます。空を見上げるたびにため息をつくのではなく、「今日はこう動こう」と少し前向きに考えられるようなヒントを、これからの章で一緒に見つけていきましょう。
[広告]第1章…書類だけじゃない!~天気と共に走り回るケアマネの仕事~
「ケアマネージャー」と聞くと、机に向かって書類を書いている姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。確かにパソコンと書類の時間はとても長いのですが、実はそれと同じくらい、いや事業所によってはそれ以上に「外に出て動き回る時間」があります。ここに天気の影響が、じわじわと、そして時にドンッと重く圧し掛かってくるのです。
ケアマネージャーには、担当している利用者さん一人一人の状況を、少なくとも月に1回は直接会って確認するという決まりがあります。ご自宅に伺って顔を見て話を聞き、体調や生活の変化、家族の様子、サービス内容が今の暮らしに合っているかどうかを確かめるためです。これが、晴れた日ならスムーズに進んでも、雨風が強い日や雪の日になると、一件一件の移動が一気に「小さな冒険」になります。
さらに、新しく依頼があった方の相談を受ける時には、自宅訪問に加えて、関わる事業所を集めて担当者会議を開きます。訪問介護、通所介護、福祉用具、訪問看護、医師や看護師、必要に応じて行政の担当者など……関係者が多いほど、日程調整も移動も大仕事です。途中で大雨や強風、急な雪予報が入ると、「安全に集まれるか」「オンラインを併用するか」「日程をズラすか」といった判断も迫られます。
都会と地方では、この「移動」の負担の掛かり方がまったく違います。都市部では、マンションや集合住宅が多く、自転車や徒歩、公共交通機関で移動できる範囲に利用者さんが集中していることが少なくありません。それでも、雨の日の傘と書類とカバンを持っての移動はなかなかの重労働ですし、エレベーターの混雑や駅の階段にヒヤッとすることもあります。
一方で、地方や郊外では、1軒1軒の距離がグッと広がります。片道で車を20分、30分、時には40分以上走らせて訪問することもあり、訪問件数が多い日は、ほぼ1日中ハンドルを握っているような感覚になることもあります。そこで雨が強くなれば視界が悪くなり、冬になれば路面凍結や吹雪に悩まされます。安全に運転しながら時間通りに訪問しようとすると、気を張りつめた状態が長時間続きます。
しかも、ケアマネージャーの移動は「ただ行って帰る」だけでは終わりません。利用者さんの体調やご家族の様子を見る、サービスに何か問題がないか確認する、その場で変更の相談に乗る、必要ならその足で事業所に連絡する……こうした判断と調整が、訪問ごとに待っています。移動中の車内も、次の予定や連絡の段取りを頭の中で組み立てる時間です。そこに「急な天候悪化」という追加要素が入ると、心の中の余白が一気に削られてしまいます。
また、天気が悪くなると、利用者さん側にも変化が起きます。気圧の変化で体調が揺らぎやすい方、寒さで関節が痛みやすい方、外に出るのが怖くなってしまう方。送迎付きのサービスが中止になると、そのまま「今日は食事どうしよう」「トイレは誰が見る?」という不安に繋がります。ケアマネージャーは、その不安を想像しながら、前もって事業所と確認をしたり、家族に連絡を入れたり、場合によっては自分も動く想定を頭の中で組み立てています。
こうして見てみると、ケアマネージャーの仕事は、書類作成とデスクワークだけではとても語り切れません。空模様が変わるたびに、移動時間や安全管理、利用者さんの体調や心の揺れまでセットで考えなければならない、「天気とセットのお仕事」と言ってもよいかもしれません。
次の章では、そんな中で「休む」という選択をどう考えるのか、警報級の雨風や台風の日にケアマネージャーが抱えるジレンマについて、もう少し踏み込んでいきます。
第2章…警報級の雨風の日~休むべきか行くべきかのジレンマ~
台風が近づいている日、朝からスマホのアラートは鳴りっぱなし。テレビを点ければ「暴風警報」「特別警報」の文字が並びます。そんな中で、ケアマネージャーが最初に考えるのは、「今日は自分がどう動くか」だけではありません。「利用者さんの一日が、これでどう変わるか」という視点が、同時に頭の中で動き始めます。
多くの学校では、暴風警報が出れば「休校」という分かりやすい基準があります。ところが、大人の世界、特に介護の現場はそう単純にはいきません。通所介護や訪問系のサービスが「安全のため、本日はお休みします」と判断した瞬間、その穴をどう埋めるのかという課題が、担当のケアマネージャーに向かって飛んできます。
本来であれば、サービス事業所側が利用者さんや家族に、休業や時間変更の連絡をきちんと行うのが基本です。しかし現実には、「うちらは休みやから、後の調整は頼んだで」とばかりに、ケアマネージャーへ一言だけ連絡して終わり、というケースもゼロではありません。中には、事前連絡も乏しく、提供予定だったサービスがいつの間にか消えているような扱いをされることもあります。そうなると、利用者さんからの「今日はどうなるの?」という不安の電話が、ケアマネージャーの携帯に直接かかってくるわけです。
さらに厄介なのは、「休むべきか、無理をしてでも行くべきか」という判断を、自分自身にも突きつけられることです。外は横殴りの雨、交通機関も遅れ気味。子どもは休校で家にいる。そんな中で、「担当者会議の予定が入っているから、どうにかして事務所まで行かなければ」「新規の相談があるから、キャンセルしづらい」と心が引っ張られていきます。
担当者会議は、ただの日常業務ではありません。関係する事業所の担当者が一堂に会し、今後の方針を話し合う大事な場です。訪問介護、通所サービス、福祉用具、医療職、必要に応じて行政のスタッフなど、沢山の人の予定を合わせてようやく実現します。その日を延期するとなれば、また全員分の予定を組み直し。何度も延期が続けば、利用者さんの支援内容の見直しも遅れてしまいます。だからこそ、「今日は中止にしましょう」と言い出すこと自体が、大きな決断になります。
一方で、「自分が無理をして外に出ることで、本当に守りたい相手は誰なのか」という問いも生まれます。利用者さんの生活を守りたい気持ちは本物です。でも、暴風雨の中での移動は、ケアマネージャー自身の命にも関わることがあります。家には自分の家族もいます。子どもを見守る人が必要な場合もあります。それでも、「自分だけ休んでいいのか」「自分が行かなければ困る人がいるのではないか」と、自分を追い込みがちなのが、この仕事の難しいところです。
ここで、さらに心を重くするのが「電話」という存在です。事業所や利用者さんからの問い合わせが、早朝から夜遅くまで続くこともあります。公休の日であっても、年末年始であっても、天候が荒れた日ほど着信音は鳴りやすくなります。気づけば、手にしているスマートフォンが、「いつ鳴るか分からない爆弾」のように感じられることもあります。
もちろん、全ての事業所が丸投げをするわけではありません。中には、休業の判断を早めに行い、利用者さんや家族へ丁寧な連絡をした上で、「ケアマネさんには、状況の共有だけお願いできますか」と協力し合えるところもたくさんあります。そうした関係が築けていると、警報級の日でも「皆で何とか乗り切ろう」という心強さを感じることが出来ます。
それでもなお、「今日は自分がどう動くべきか」という葛藤から、完全に自由になることは難しいかもしれません。責任感が強い人ほど、「本当は休んだ方が良かったのに」「もっと別のやり方があったのでは」と、後から自分を責めてしまいがちです。
次の章では、そんな天候トラブルの中でも、特にダメージが大きい「雪」の日について掘り下げていきます。ただの悪天候ではなく、「物理的に動けなくなる」状況で、ケアマネージャーがどんな工夫と苦労を重ねているのか、その一端を見ていきましょう。
第3章…大雪・路面凍結の日に起こる利用者さんと現場のピンチ
雨や風の日も大変ですが、「これはもう別格だ」と感じるのが大雪と路面凍結の日です。台風ならば進路予報があり、通り過ぎれば少しずつ落ち着いていきます。しかし雪は、一度積もってしまうと簡単には消えてくれません。朝目覚めてカーテンを開けた瞬間、真っ白な世界が広がっているのを見て、「今日はどうやって回ろうか」と頭を抱えたことがあるケアマネージャーは少なくないでしょう。
まず直面するのが、「自分が物理的に動けるかどうか」という問題です。車のタイヤは冬用に変えていても、路面がカチカチに凍っていれば発進するだけでヒヤリとします。少し坂になっている道なら、上ることも下ることも怖くなります。チェーンを巻かないと到底進めないような状況では、「運転する」こと自体が危険と紙一重です。
そんな中でも、利用者さんの暮らしは止まりません。通所介護がお休みになれば、いつもデイサービスで入浴している方は、自宅でのお風呂や清拭をどうするかという問題がすぐに浮かびます。訪問介護が時間短縮になれば、食事作りやトイレ介助の回数も減ってしまいます。定期巡回のようなサービスが全面休業となれば、「あの方の夜間は誰が見るのか」という不安が一気に膨らみます。
大雪の日のケアマネージャーは、外を走り回るよりも先に、電話とメモ帳を手放せなくなります。事業所からの「今日はここまでしか動けません」「このエリア一帯は道路が使えません」という連絡を受け取りつつ、一人一人の利用者さんに影響が出ないか、頭の中で組み立てていきます。場合によっては、家族や近所の方に協力をお願いしたり、「この日だけは訪問時間をずらせないか」と再交渉したりと、綱渡りのような調整が続きます。
忘れてはいけないのが、こうした対応は「休日だから関係ない」という線引きがし辛いことです。自宅から一歩も出られないほどの雪の日にも、ケアマネージャーのスマートフォンは着信音を鳴らし続けます。コンセントに充電器を差しっ放しにしながら、朝から晩まで何本も電話をかけ、状況を整理していく──そんな一日を経験した方もいるのではないでしょうか。
その時、手元のメモ帳には、時刻や相手、内容がビッシリと書き込まれていきます。後から事務所に出勤できたタイミングで、それらを「支援経過」として正式な記録にまとめる必要があります。ここで大切なのは、自分がどれだけ大変だったかではなく、「利用者さんにどのような影響が出たのか」「それに対してどんな対策をとったのか」を客観的に残すことです。日記ではなく、公的な記録として未来の自分や他の職員が読み返せる内容にしておくことが求められます。
しかし、内心では思うところもあるでしょう。非番の日に何時間も電話対応をしても、外から見れば「何事もなかった一日」として流れていってしまいがちです。監査や実地指導で評価されるのは、あくまで仕組みや書類の整い方が中心で、「あの日、雪の中でどれだけ踏ん張ったか」は伝わり難いものです。「こういうところを、もう少し汲み取ってくれてもいいのにな」と、こっそり呟きたくなる瞬間もあるかもしれません。
それでも、雪の日に一番心配なのは、やはり利用者さんの安全です。足元が滑りやすくなっている中でのトイレ移動や、玄関先の段差、濡れた玄関マットなど、ちょっとしたことで転倒リスクが高まります。外に出られないことで気分が落ち込む方もいますし、ヘルパーさんが来られない寂しさを感じる方もいます。ケアマネージャーは、電話越しの声や、ご家族からの様子の報告をヒントに、「今日はここに重点を置こう」「この方には一度様子伺いを入れよう」と、優先順位を考え続けることになります。
中には、自家用車も電車も当てにならない状況で、「歩くしかない」と判断して現場に向かった経験を持つ方もいるでしょう。雪に足を取られながら何キロも歩き、ようやく利用者さんの自宅に辿り着いて介助を行い、帰り道でドッと疲れが押し寄せる──そんな一日が、心と体に大きな負担を残すことがあります。後になって振り返ると、「あれが燃え尽きの始まりだったのかもしれない」と気づくことも少なくありません。
雪の日は、単に「仕事が増える日」ではありません。自分の安全、利用者さんの暮らし、家族の心配、事業所との連携、記録の整え方……あらゆる要素が一度に押し寄せる日でもあります。だからこそ、「気合いだけで乗り切る」のではなく、次の章で触れるような事前の備えや、心の守り方をセットで考えておくことが、とても大切になってきます。
第4章…燃え尽きる前に~天気トラブルへの備えと心のセルフケア~
ここまで見てきたように、ケアマネージャーの仕事は、天気にとても左右されます。晴れの日でさえ予定がギッシリなのに、大雨や台風、大雪が重なると、頭も心もあっという間にいっぱいいっぱいになってしまいます。「あの時、もう少し早く手を打てていたら」「あそこまで無理をしなくても良かったのでは」と後から自分を責めてしまうこともあるでしょう。だからこそ、「燃え尽きてから立ち止まる」のではなく、「燃え尽きる前にブレーキをかける工夫」が、とても大切になってきます。
まず出来ることは、「天気を味方に付ける意識」を持つことです。朝と夕方に天気予報を確認し、週間予報も合わせて眺めておくと、「この日は荒れそうだから遠方の訪問は前倒ししておこう」「路面が凍結しそうな日は、無理な移動の予定は入れないでおこう」と、少しずつ工夫が出来ます。全てを思い通りには出来ませんが、「何も考えていなかった」日よりも、気持ちの余裕は確実に変わります。
訪問スケジュールの組み方にも、天気を織り込むことができます。例えば、普段から「移動距離が長い利用者さんの日」と「近場でまとまって回れる日」を分けておくと、悪天候が予想される週には近場中心の日をあてる、といった調整がしやすくなります。また、どうしても外せない訪問と、「電話での様子確認でも大丈夫な方」「日程変更しても生活に大きな影響が出にくい方」とを頭の中で整理しておくと、いざという時に優先順位を付けやすくなります。
次に大切なのは、「一人で背負い込まない仕組み」を作っておくことです。天候が荒れた日の対応は、どうしても担当者任せになりがちですが、事業所全体でルールや方針を決めておくと、心の重さが少し軽くなります。「警報級の天気の時は、この時間までに事業所側が休業の可否を判断する」「利用者さんへの連絡は、事業所がまず行い、その後にケアマネージャーへ情報共有をする」といった流れを前もって話し合っておくと、当日の混乱も減らせます。
また、家族や地域との「お願いの仕方」を考えておくことも、心を守ることに繋がります。大雪や路面凍結でサービスが入れない可能性がある方には、普段から「もしもの時」にどうするかを一緒に考えておくと安心です。例えば、「この日はお孫さんが様子を見に寄ってくれるよう頼んでおきましょう」「近所の方に、ゴミ出しだけでもお願いできますか」といった小さな一歩です。全てを専門職だけで背負うのではなく、支え合いの輪を少しずつ広げておくことで、非常時の負担は変わってきます。
そして忘れてはならないのが、「自分自身の心を守るセルフケア」です。天候トラブルが続くと、「もっと出来たはずなのに」「自分が頑張り足りないからだ」と、自分を責めてしまいがちです。でも、本当に大事なのは、「その時の状況の中で、どこまでベストを尽くせたか」です。後から振り返る時には、「出来なかったこと」だけでなく、「あの電話を早めに入れたから大事に至らなかった」「あの利用者さんには、事前に家族との連携を取っておけた」といった「出来たこと」にも、意識を向けてあげてください。
心が限界に近づいているサインにも、早めに気付いてあげましょう。夜になっても仕事のことが頭から離れない、天気予報を見るだけで胸が重くなる、着信音を聞くとドキッとしてしまう……そんな時は、一人で我慢を続けるのは危険です。上司や同僚に、正直な気持ちを打ち明けるだけでも、心の重さが少し和らぎます。「あの日、自分も同じように悩んだよ」と共感してくれる仲間の存在は、何よりの支えになります。
また、携帯電話や連絡手段との距離の取り方も、工夫の余地があります。事業所内で当番制を取り入れて、「この時間帯はこの人が中心になって電話に出る」という役割分担をしておくと、常に全員が張りつめている状態を避けることが出来ます。留守番電話のメッセージを整えて、「緊急の場合はこの連絡先へ」「それ以外は、後ほど折り返します」といった案内を入れておくだけでも、「いつ鳴るか分からない不安」は少し落ち着きます。
天気と付き合いながら続けていくこの仕事は、どうしても負担が大きくなりがちです。それでも、「事前に備えること」「人と役割を分け合うこと」「自分の心の声に耳を傾けること」を少しずつ積み重ねていけば、同じ大雪の日でも、感じるしんどさは変わってきます。
次の「まとめ」では、空模様に振り回されながらも、それでもこの仕事を続けていく意味や、明日から意識できる小さな一歩について、改めて整理していきます。
[広告]まとめ…空模様に負けない働き方を考えるケアマネージャーへ
空を見上げて、「今日は大丈夫そうかな」「嫌な予感がするな」と感じながら一日が始まる。そんな仕事はたくさんありますが、その中でもケアマネージャーは、天気と人の暮らしが直結している現場を預かる存在と言えるかもしれません。晴れた日には当たり前に進んでいく支援も、大雨や台風、大雪の日には、1つ1つの約束やサービスが揺さぶられます。そのたびに、利用者さんの生活を頭に思い浮かべながら、組み立て直していくのがこの仕事です。
この記事では、書類仕事という顔だけでは見えてこない、もう1つの側面を辿ってきました。外回りが多く移動時間が長くなりがちなこと。警報級の悪天候の日に「自分は出るべきか」「休むべきか」と揺れ動くこと。大雪や路面凍結で、そもそも「動きたくても動けない」状況に追い込まれること。それでも、利用者さんの安全や暮らしのリズムを守るために、電話と記録と調整を重ねていく姿がありました。
そうした日々の積み重ねは、外からはなかなか見え難いものです。非番の日に何件も連絡を取ったことも、雪の中を歩いて訪問したことも、支援経過記録の中に短い文章で残されるだけかもしれません。それでも、その1つ1つが「その人の暮らしが途切れないように」という願いから生まれた行動であることは、誰よりも自分自身が知っています。まずは、その事実を静かに認めてあげることが、とても大切な一歩です。
同時に、「気合いだけで乗り切る」働き方には、どうしても限界があります。朝夕の天気予報と週間の動きを意識して予定を組むこと。遠距離の訪問と近場の訪問を分け、荒れそうな日は無理をしない工夫をしておくこと。事業所や他職種と、悪天候時の連絡方法や役割分担を前もって話し合っておくこと。家族や地域の方と「もしもの時」の備えを作っておくこと。こうした少しずつの工夫は、天気そのものを変えることは出来なくても、「自分だけが背負い込んでいる」という感覚を和らげてくれます。
そして何より忘れたくないのは、ケアマネージャー自身の心の守り方です。天気予報を見るたびに胸が重くなったり、着信音が鳴るたびに身体がビクッとしたりするようになったら、それは「そろそろ立ち止まって欲しい」という心からのサインかもしれません。「あの日、自分も同じように悩んだよ」と共感してくれる同僚や先輩に話を聞いてもらうこと。上司に、正直に負担感を伝えて相談してみること。そうした小さな声掛けが、自分を守る大きな一歩になります。
天気に左右される仕事だからこそ、「頑張り過ぎない仕組み」と「一人にしない関係」が必要です。空模様は毎日変わりますが、その中で自分なりのペースと守り方を見つけていくことが出来れば、同じ大雪の日でも、感じるしんどさは少し違ってくるはずです。
この記事を通して、「ケアマネージャーは天気の影響を最も受ける仕事の1つ」という側面と同時に、「それでも工夫しながら続けていける仕事である」という希望も、少しでも伝わっていれば幸いです。今日も空を見上げながら働くケアマネージャーの皆さんが、自分の頑張りをちゃんと認め、無理をし過ぎずに明日を迎えられますように。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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