3月19日は眠育の日~眠れない夜を責めない「1日仕込み」の睡眠術~
はじめに…眠りは夜だけで作れない~布団に入る前から始まる回復準備~
3月19日は「眠育の日」。眠ることを少し学び、毎日の暮らしに役立てていこうという日です。
ところが睡眠は、毎晩ほぼ欠かさずしているのに、なかなか思い通りになりません。昼間はあれほど眠かったのに、布団へ入った途端に目が冴える。すると頭の中では「今日のあの言い方、まずかったかな?」「明日は何時に起きるんだっけ?」と、頼んでもいない深夜会議が開幕します。昼間に開催してくれれば助かるのですが、脳にもどうやら都合があるようです。
そんな夜が続くと、「早く寝なければ…」「ちゃんと眠らなければ…」と焦りやすくなります。しかし、眠りは気合いで押し切る仕事ではありません。朝の光、日中の活動、食事、入浴、部屋の明るさ、寝る前の過ごし方など、いくつもの小さな条件が重なって夜の眠気へ繋がっていきます。体内時計(眠気や目覚めのリズムを整える体の仕組み)も、その流れの中で働いています。
眠りは、布団に入ってから作るものではなく、朝から夜までの暮らしの中で少しずつ育てていくものです。
こう考えると、眠れなかった夜にも少し逃げ道ができます。「昨夜は失敗だった」と一喜一憂するより、「今日は朝から少し整えてみよう」で良い。完璧な生活を目指す必要もありません。朝にカーテンを開ける、昼間に少し体を動かす、夕食を食べ過ぎない、寝る前だけ照明を落とす。その中から、自分に合うものを1つ拾えば十分です。眠りを良くするために予定が増え過ぎて寝る時間が遅くなったら、流石に本末転倒です。
そして睡眠は、若い人だけの話でも、高齢者だけの話でもありません。仕事で帰宅が遅い日、子育てで夜中に起きる時期、介護で気が張っている夜、何となく心配事が離れない日。人生のあちこちで、眠りは私たちの調子を静かに支えています。
3月19日を、立派な睡眠生活を始める日ではなく、「明日の自分を少し楽にする準備の日」にしてみる。そう思えば、今夜の布団も少しだけ気楽な場所になりそうです。
[広告]第1章…眠育の日って何の日?~眠ることを学ぶと朝の景色が変わる~
「眠育」と聞くと、子どもに早寝早起きを教える授業のようにも聞こえます。けれど3月19日の「眠育の日」が投げかけているのは、もっと身近な問いです。私たちは毎日眠っているのに、自分がどうすれば眠りやすくなるのかを、意外なほど知らないまま暮らしています。
歯磨きなら磨き方を教わりますし、料理なら火加減や包丁の使い方を覚えます。ところが眠りとなると、子どもの頃から「早く寝なさい」、大人になれば「ちゃんと寝た方が良いよ」で終了しがちです。「ちゃんと、とは何時から何時まででしょうか?」と聞き返したくなりますが、布団は回答してくれません。
睡眠は、体を横にして動かない時間というだけではありません。眠っている間にも、体や脳は翌日に向けて休息や調整を続けています。 そのため、長く布団に入ったから必ず爽快な朝になるとは限らず、「寝たはずなのに疲れている」という日も出てきます。睡眠時間だけを見て一喜一憂するより、自分がどんな夜を過ごした時に朝が楽だったかを見る方が、眠りとの付き合い方はグッと現実的になります。
厄介なのは、眠りが体だけでなく気持ちにも左右されるところです。明日の予定、仕事の失敗、人間関係のモヤモヤなどを抱えたまま横になると、体は布団に入っているのに頭だけ残業を始めることがあります。気持ちの緊張が眠りを浅くする要因になるという視点は、「眠れない=寝方が下手」と決めつけないためにも大切です。
特に夜勤や早出がある仕事、急な対応が入りやすい仕事では、毎日同じ時刻に眠ること自体が難しくなります。介護や医療のように人の暮らしや命に関わる仕事なら、帰宅して制服を脱いでも頭の中ではまだ勤務中、なんてことも珍しくありません。「帰ったぞ」と玄関は知っていても、脳がまだタイムカードを押していないわけです。
だから眠育で大切なのは、理想の睡眠を押しつけることではなく、自分の眠り方を知ることなのでしょう。寝つくまで時間がかかるのか、途中で何度も起きるのか、早朝に目が覚めるのか。眠りの困り方は人それぞれ違い、そこが分かれば工夫する場所も変わってきます。
良い睡眠を目指す第一歩は、「何時間寝たか」だけでなく「自分はどんな時に眠りやすいか」を知ることです。快刀乱麻の一発解決を狙うより、眠れた日の暮らしを少し思い出してみる方が役に立ちます。朝に光を浴びた日だったのか?、日中によく動いたのか?、心配事が少なかったのか?眠りには、その人の一日の足跡が静かに残っています。
「急がば回れ」と言いますが、睡眠もなかなか正直です。早く眠ろうと力むより、眠れる体と暮らしを少しずつ作った方が近道になることがあります。眠育の日は、睡眠に100点をつける日ではなく、自分の朝を少し気持ちよくする方法を覚える日くらいが、ちょうど良さそうです。
第2章…夜より先に昼を整える~光・食事・活動で眠気を育てる~
朝は眠い。昼も眠い。ところが夜になると、何故か目が冴える。「昼間にあれだけ眠かったんだから、夜は秒で寝られるはず」と期待して布団へ入ったのに、天井を見ながら30分。体というものは、こちらの予定表をあまり読んでくれません。
眠りは夜だけの出来事に見えますが、日中をどう過ごしたかも夜の落ち着きに関わります。ずっと座ったままで体をほとんど使わなかった日と、少し歩いたり家事をしたり、人と話したりした日では、夜を迎えた時の状態も違ってきます。介護の場でも、軽い体操や短い散歩、手を使う作業や会話など、無理のない活動が夜の落ち着きに繋がることがあります。
ただし、「夜に眠りたいなら昼間は疲れ果てるまで動けば良い」という話ではありません。活動が多過ぎて興奮したまま夜を迎えても、今度は気持ちが静まりにくくなります。動かなさ過ぎても困るし、張り切り過ぎても困る。正に一長一短です。体に必要なのは、グッタリするほどの疲労ではなく、「今日はそれなりに動いたな」と感じる程度の心地良い区切りなのでしょう。
光も、暮らしの時間を感じる大切な手掛かりになります。昼間は明るい場所で過ごし、夜が近づいたら少しずつ刺激を減らしていく。寝室では眩しい光を避け、必要な明るさは残しながら顔へ直接当たりにくくするなど、小さな調整でも落ち着きやすさは変わります。施設や病院では安全確認のための明かりも必要ですから、真っ暗にすれば正解というわけではありません。
食事も同じです。眠る頃になって胃腸が大忙しでは、体は「休憩時間です」と簡単には切り替わりません。反対に、お腹が空き過ぎて気になってしまうのも困りものです。寝る前に小腹が気になる時は重たい食事を避け、温かい飲み物や軽いものへ寄せるという方法もあります。水分も、喉が渇くほど我慢する必要はありませんが、寝る直前に大量に飲めば夜中のトイレに繋がることがあります。
夕食後、テレビを見ながらお菓子を摘まみ、気づけばもう遅い時間。「今日はよく頑張ったから、ご褒美くらい良いでしょう」と袋を開けたら止まらない。ありますよね。そして翌朝、「誰だ、昨日こんなに食べたのは」と犯人探しを始めるのですが、容疑者はだいたい自分です。眠りを考える時も、禁止事項を増やすより「少し早めに食べ終えてみる」くらいの方が、長く続けやすくなります。
夜の眠りを変えたい時ほど、夜だけを直そうとせず、1日の流れを少しだけ見てみることが大切です。
朝から晩まで規則正しく完璧に暮らす必要はありません。仕事が遅くなる日もあれば、家族の用事で夕食がずれる日もあります。そんな時は臨機応変で構いません。「今日は少し歩けた」「夕食を重くし過ぎなかった」「寝る頃には部屋を少し静かにした」と、小さな積み重ねを残していけば十分です。
眠気は、夜になった瞬間に空から降ってくるものではありません。昼間に体をほど良く使い、食事を済ませ、少しずつ刺激を減らしながら夜へ向かう。その流れが出来てくると、布団は「何としてでも眠る場所」から、「そろそろ休もうか」と体が向かいやすい場所へ変わっていきます。
[広告]第3章…布団の中で頑張らない~スマホ・考え事・寝室の刺激を減らす~
夜になり、歯を磨き、布団へ入り、「よし、寝るぞ」と目を閉じる。ところが5分ほどすると、何故か明日の予定が気になってくる。少し確認するだけのつもりでスマホを手に取り、時刻を見たはずが、気づけば別の画面を眺めている。「私は何を確認するためにこれを開いたんだっけ?」となった頃には、眠気の方が先に帰っています。
寝る前のスマホが厄介なのは、画面の明るさだけではありません。動画、通知、ニュース、メッセージなど、新しい情報が次々に入ってくることで、休みたい脳へ「まだ今日の続きがありますよ」と声を掛け続ける形になります。寝る直前の時間だけでも通知を静かにしたり、刺激の多い内容から離れたりすると、頭を休む方向へ切り替えやすくなります。
とはいえ、「寝る1時間前からスマホ禁止」と決めた途端、妙に触りたくなるのも人情です。完全に遠ざけるのが難しければ、まず最後の30分だけでも構いません。白黒分明に敵と味方へ分けるより、自分が扱える距離まで刺激を下げる方が現実的です。連絡を確認する必要がある人なら、見る内容を絞るだけでも違います。
もう1つ、布団の中で暴れやすいのが考え事です。日中なら「まあ明日考えよう」と流せたことが、夜になると妙に重大事件へ昇格します。明日の仕事、家族への言い方、忘れている用事。「あれもやらなきゃ」と思った瞬間から、脳内会議の出席者がどんどん増えていきます。
そんな時は、頭の中で全て解決しようとせず、気になることを紙やメモへ逃がしてしまう方法があります。「明日確認する」「電話する」「買う」程度で十分です。書いて残せば、今夜ずっと覚えておく役目から少し離れられます。眠れない夜に問題解決まで始めると、布団が寝床ではなく会議室になってしまいます。
そして寝室も、豪華である必要はありません。光、音、室温、枕や布団の感触など、「気になってしまうもの」が少ない方が休みやすいことがあります。施設や病院でも、廊下の足音やテレビの音、カーテンの隙間から入る光など、小さな刺激の積み重ねが眠りを邪魔する場合があります。 自宅なら、テレビを消す、明かりを少し落とす、枕元に物を置き過ぎないなど、出来るところから変えれば十分でしょう。
眠れない時ほど「眠らなければ」と頑張るより、眠りを邪魔しているものを1つ減らす方が体にはやさしいものです。
どうしても眠れない夜には、「今すぐ眠る」という目標を少し下げて、目と体を休ませるくらいに考える方法もあります。焦って「あと4時間しかない」「3時間半になった」と時計を監視し始めると、もはや睡眠ではなくカウントダウンです。四六時中がんばっている人ほど、夜くらいは採点係を休ませても良いでしょう。
寝室は、一日の反省会を開く場所でも、明日の作戦を完成させる場所でもありません。スマホを少し静かにし、考え事は一旦、外へ預け、部屋の刺激を一段落とす。そうして布団の役割を「ただ休む場所」へ戻してあげると、眠りも少し入り口を見つけやすくなります。
第4章…介護の眠りは「本人らしさ」が鍵~夜間覚醒を責めず環境から見る~
介護施設の夜。消灯を終え、廊下も静かになり、「今夜は皆さんぐっすり眠れますように…」と願ったところで、ナースコールが鳴ることがあります。「眠れない」「トイレに行きたい」「何だか落ち着かない」。職員からすれば夜勤はまだ長く、本人からすれば夜そのものが長い。時計だけは平然と進んでいくので、少しくらい空気を読んでほしいものです。
高齢者が眠れない理由は、1つとは限りません。痛みや痒み、息苦しさ、排泄への不安、部屋の光や音、昼寝の長さ、日中の活動量、心配事など、いくつもの事情が重なることがあります。しかも本人自身が「どうして眠れないのか分からない」という場合もあります。そんな時は原因を決めつけるより、寝つけないのか、途中で何度も起きるのか、朝早く目覚めてしまうのかと、困り方から見ていく方が手掛かりを得やすくなります。
夜中に何度も目を覚ます人を見て、「昼間に寝過ぎたからでしょう」と一刀両断してしまえば話は簡単です。でも、昼寝を減らしたら全部解決するほど、人の眠りは単純ではありません。体の痛みで同じ姿勢が続かないのかもしれませんし、慣れない部屋に落ち着かないのかもしれません。家では小さな明かりをつけて寝ていた人が、施設では暗過ぎて不安になることだってあります。逆に廊下の照明が眩しくて眠れない人もいるでしょう。
そこで大切になるのが「その人は、どんな環境なら落ち着ける人なのか」という視点です。病院や施設では安全や衛生、管理上の理由から寝具や部屋の条件を統一する必要がありますが、枕の高さやシーツの肌触り、いつも使っていたクッションやブランケットなど、本人に馴染みのあるものが安心に繋がることがあります。豪華な寝室を用意する話ではありません。眠りを守る介護は、眠らせることより「安心して休める条件」を本人と一緒に探すことです。
光や音も見逃せません。夜間の安全確認には明かりが必要ですし、職員が無音で働くこともできません。それでも、照明が顔へ直接当たらないようにする、テレビの音量を下げる、ドアを静かに閉めるなど、出来る工夫はあります。完全無欠の静寂を目指すのではなく、必要なものを残しながら余計な刺激を少し減らす。こうした臨機応変な調整が、その人の夜を穏やかにすることがあります。
日中の過ごし方を見ることも欠かせません。長時間ベッドで過ごしている人なら、昼と夜の境目が曖昧になりやすいことがあります。無理のない範囲で体を動かす、人と話す、窓辺で季節を感じる、手を使う作業を楽しむ。そんな小さな活動が一日の抑揚を作ります。眠らせないために昼間を忙しくするのではなく、「昼には昼らしい時間、夜には夜らしい時間」を作っていく感覚が大切です。
そして介護する側が忘れたくないのが、眠りはとても私的な時間だということです。「眠った方が体に良いですよ」という正論を何度重ねても、それだけで眠気が来るわけではありません。「枕を少し変えてみましょうか?」「眩しくありませんか?」「合わなければ戻しましょう」と、本人が選べる余地を残して提案する方が受け入れられやすいことがあります。
夜中に目を覚ましたことを失敗にせず、昨日より少し落ち着いていた、起きる回数が減った、朝の表情が穏やかだったという小さな変化を見る。その積み重ねなら、職員も本人も疲れ切らずに続けられます。十人十色という言葉通り、心地良い眠り方まで全員同じである必要はありません。介護の夜に必要なのは、「全員を同じように寝かせること」ではなく、1人1人が安心して夜を越えられるように支えることなのだと思います。
[広告]まとめ…眠れない日があっても大丈夫~明日の自分へ小さな回復を渡そう~
眠りを良くしようと思うと、つい「何時に寝る」「何時間眠る」「寝る前はこれを禁止する」と、夜の予定表を細かく作りたくなります。けれど睡眠は、一朝一夕で完成する生活技術ではありません。朝の光を浴び、昼間にほど良く動き、食事を楽しみ、夜になったら刺激を少しずつ減らす。そんな1日の流れの先に、自然な眠気がやって来ます。
そして、どれだけ暮らしを整えても眠れない夜はあります。仕事で気が張った日もあれば、家族のことが心配な夜もあるでしょう。介護を受けている方なら、痛みや排泄への不安、いつもと違う寝具や物音が気になっていることもあります。眠れない理由は1つではなく、小さな刺激を減らしながら本人が落ち着ける条件を探すことが、夜を支える手掛かりになります。
そんな時に「また眠れなかった」と一喜一憂し過ぎなくても大丈夫です。眠るために頑張り過ぎて、時計とにらめっこを始めたら、もうこちらが夜勤中のようなものです。「あと3時間しかない」と計算したところで、布団から追加の睡眠時間が支給されるわけでもありません。
眠れなかった夜を失敗にするのではなく、次の1日を少し休みやすくする材料に変えていけばいいのです。
スマホを見る時間を少し短くする。昼間に数分だけ外へ出る。夕食を少し早めに終える。枕の高さを変えてみる。介護の場なら、本人に「眩しくないですか?」「寒くないですか?」と尋ねてみる。全部やる必要はありません。合うものを1つ残し、合わなければ別の方法へ替えるくらいの柔らかさで十分です。眠りを良くする工夫も、毎日の暮らしに馴染んでこそ続いていきます。
3月19日の眠育の日は、完璧な睡眠を競う日ではありません。自分や大切な人が「今日は少し休めたな」と思える朝を増やしていく日です。今夜ぐっすり眠れたら嬉しい。眠れなかったとしても、明日また少し整えればいい。そのくらいの余白を残して布団へ向かう方が、眠りとは長く仲良く付き合えそうです。
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