服装ひとつで伝わるケアマネージャーの姿勢と信頼のつくり方

[ ケアマネの流儀 ]

はじめに…利用者さん宅に入る前から始まっているケアマネの仕事とは?

ケアマネージャーのお仕事は、利用者さんの暮らしにそっと入り込んでいくところから始まります。書類を作ることやサービス担当者会議をまとめることも大事ですが、その前に「この人になら話してもいい」と思っていただけるかどうかが、実はとても大きいですよね。初めての訪問で玄関が開いた瞬間、相手は言葉より先にこちらの雰囲気を見ています。そこで伝わるのは名刺の肩書きではなく、服装や身だしなみから滲む仕事への姿勢です。

ところが、同じ専門職なのにケアマネージャーの装いは事業所によってかなり差があります。統一のユニフォームを着ているところもあれば、普段着に近い方もいる。中にはスーツでビシッとしている人もいますし、逆に「今日は訪問あるのかな?」と心配になるくらいオシャレに寄せている人もいます。自由度が高いのは良いことなのですが、その自由さがそのまま利用者さんへの距離感になってしまうこともあるのです。

本来、ケアマネージャーは利用者さんやご家族の本音を引き出して、目の前の生活に合わせた支援を組み立てていく役割です。つまり、話しやすさや安心感をまとっていることが仕事の土台になります。動きにくい服、汚れを気にする服、威圧感のある服だと、その場で手を貸したり、急な介助に移ったりすることがしづらくなります。結果として「今日は様子だけ見て帰りますね」となりやすく、せっかくの訪問回数が勿体ないのです。

この後、お話しするのは、ファッションの評価ではなく、現場で動きやすくて、なおかつ利用者さんから受け入れられやすい装いの考え方です。特に、清潔であること、公私を切り替えられること、いざという時に身体を使えること――この3つを意識するだけで、訪問の質はグッと変わります。毎回の訪問を「1回で決める」つもりで臨むために、まずは服装から整えていきましょう。

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第1章…ケアマネの服装がバラバラに見える背景と事業所ごとの事情?

ケアマネージャーという職種は、介護職や看護師のように「この服で働きましょう」と全国一律で決まっているわけではありません。訪問が中心の仕事であること、法人ごとに歴史や考え方が違うこと、そして「動けること」が大事な職種であることが重なって、どうしても装いに幅が出てしまいます。
利用者さんやご家族から見ると、「あの人はジャージなのに、この人はスーツ」「今日は綺麗めだけど、前回来た人はすごくラフ」など、同じ肩書きでも空気感がかなり違って見えるはずです。これにはちゃんと理由があります。

まず、事業所によっては最初から制服を用意しているところがあります。職員全員が同じ色や形のポロシャツ・パンツで揃えているところですね。こうした事業所は「訪問先でどの人が来ても同じ安心感を持ってもらいたい」「清潔さの基準を揃えておきたい」という考えが強いところです。制服があると洗濯の回数や保管の仕方も決めやすく、衛生面でもコントロールがしやすいので、医療や介護に近い法人では採用されやすい形です。

一方で、ケアマネージャーだけが事務所内で半分デスクワーク・半分外回りという働き方をしている場合、統一の服装がないことも多いです。朝は書類を作って、昼から利用者さん宅を2件まわって、夕方また戻って会議というような動き方をすると、どうしても「動きやすくてそのまま外に出られる服」が優先されます。すると、綺麗めな私服にカーディガンを羽織った人もいれば、スポーツ系のパンツでさっと動く人もいて、外から見るとちょっと統一感がないように見えるわけです。

さらに、地域性も影響します。豪雪地帯や坂の多い地域では、革靴やタイトスカートでは安全に訪問できません。夏場の高温多湿の地域で一日中車に乗り降りするとなれば、スーツや長袖のブラウスは現実的ではなくなります。つまり、その土地で「無理なく回れる服」に変えていった結果、ラフに見える服装が定着していることもあるのです。現場で長く働いている人ほど、この辺りは実用重視になりやすいですね。

それから、ケアマネージャーという仕事は、利用者さんの暮らしを細かく聞き取る場面が多いので、最初からカチッとした服だと相手が緊張してしまうことがあります。中には「スーツの人が来る=契約やお金の話がある」と連想されるご家族もいます。そうした心理的なハードルを下げるために、あえて普段着に近い装いで訪問する人もいます。これは「だらしない」ではなく「距離を近くするための選択」であることも多いのです。

とはいえ、自由度が高い分だけ、見る人によっては「え、これで仕事?」と思われるラインに滑り込みやすいのも事実です。髪がまとめられていない、アクセサリーが多過ぎる、パンプスで介助が出来なさそう、香りが強い――こうしたものは、事業所の規定が緩いほど、個人のセンスに任されてしまいます。その結果として「ケアマネの服装はバラバラ」という印象に繋がっていくわけです。

つまり、統一されていないのは手抜きだからではなく、仕事の性質上、現場に合わせた服を選ばざるを得ないからです。ただし、その自由さの中にも、利用者さんやご家族に安心してもらえる共通の軸は持っておきたいところです。次の章では、その「軸」をどう考えると良いのかを整理していきます。


第2章…清潔・動きやすさ・公私の切り替え~基本スタイルはここを押さえる~

ケアマネージャーの服装を考える時に、一番迷いが少なくて、しかも現場で使いやすい考え方があります。
それが〈清潔〉〈動きやすさ〉〈公私の切り替え〉の3点を常に揃えておくことです。
この3つが揃っていれば、事業所ごとの雰囲気が違っていても、利用者さんのご自宅に入った時の印象は安定しますし、急な対応にもすぐ移れます。

まず〈清潔〉です。
ここでいう清潔は、白衣のような「無菌」のことではなくて、「この人に家の中を任せても大丈夫そうだ」と思ってもらえる状態のことです。シワだらけのTシャツや色あせたジャージ、ほつれたカーディガンは、その人の能力とは関係なく「雑に仕事をするのかな」と見られてしまいます。訪問はたいてい玄関から始まりますから、最初の数秒でそう思われるのはとても大きな損です。洗いたての物を着る、毛玉や汚れをチェックしておく、香りを強くし過ぎない――これだけでも印象はずっと良くなります。

次に〈動きやすさ〉です。
ケアマネージャーは本来、計画を立てる仕事ですが、実際の訪問ではご家族が困っている場面に出くわすことが少なくありません。ベッドからずれてしまった利用者さんを戻したり、トイレでお洋服が汚れてしまったのを一緒に片付けたり、床に落ちたお薬を拾ったりと、ほんの数分だけ介助に入ることがあります。こうした時にタイトなスカートやヒール、袖がヒラヒラした服を着ていると、動く前から「これは無理かな」となってしまいます。せっかくその場で解決できるのに、服のせいで一歩が出ないのは勿体ないですよね。ストレッチの効くパンツや、しゃがんでも背中が見えないトップスなど、介助動作を想定した服を基本にしておくと安心です。

そして、現場で意外と忘れられがちなのが〈公私の切り替え〉です。
自宅からそのままの服で出勤して、事務所で少し仕事をして、そのまま訪問に行く――という流れだと、どうしても私服モードが残ります。私生活で使っているバッグやアクセサリーのまま利用者さん宅に入ると、訪問というより「お邪魔します」に近い空気になってしまいます。逆に、ロッカーや車内に訪問用の1セットを置いておき、出かける時にそれに着替えるようにすると、「今から仕事で伺います」というスイッチが入ります。自分の心構えが整うだけでなく、服装で事業所のカラーも伝えやすくなります。

こうしてみると、この記事の元になっている「綺麗めのジャージがお勧め」という考え方も理にかなっているでしょう?ジャージといっても、スポーツ大会のような上下おそろいではなく、無地で落ち着いた色のものを選べば十分にきちんとして見えますし、洗濯も簡単です。上はポロシャツやシンプルなカットソー、羽織は季節に合わせて軽いパーカーやカーディガンを合わせれば、どのご家庭にも入りやすい装いになります。動きやすくて、汚れてもすぐ洗えて、なのに雑に見えない――この条件を満たせる服はそれほど多くありません。

ここで少しだけ注意しておきたいのは、「綺麗にしている=オシャレを盛る」ではないということです。長く垂れるアクセサリー、巻き髪をほどかないスタイル、強いネイルや香水などは、それだけで介助の妨げになりますし、利用者さんの中には匂いや光りものに敏感な方もおられます。清潔に整えてあれば十分印象は上がりますので、足し算よりも引き算で考えた方が、訪問の仕事には向いています。

この3点を揃えていると、利用者さんやご家族から「この人なら何かあっても動いてくれそうだな」という期待を持ってもらえます。次の章では、その期待が実際の支援の質とどう繋がるのかを、もう少し踏み込んで見ていきましょう。


第3章…その場で動ける人は信頼される~装いが支援の質に直結する理由~

ケアマネージャーの訪問は、事前に予定した内容を確認するために行くことが多いですよね。
「今月のサービスはこのままでいきましょうか」「福祉用具の変更を考えましょうか」など、いわば話し合い型の仕事です。ところが現場では、予定していなかった出来事に出会うことが少なくありません。利用者さんがベッドから少しずれている、食事の後の片付けが手つかずで残っている、トイレで着衣が乱れている、ご家族が疲れて座り込んでいる――こうした場面は、実際には良くあります。

この時、服装が「すぐ動ける状態」になっているかどうかで、その訪問の価値が変わります。
上着を脱がなくても介助できる。
しゃがんでも裾が汚れない。
袖をまくれば手洗いができる。
このレベルで準備が出来ていると、「それ、今こちらでやってしまいましょうか?」と自然に口に出来るのです。利用者さんやご家族は、専門職にこう言ってもらえると一気に安心します。ケアプランに書いてあることだけでなく、目の前の困りごとにも手を伸ばしてくれる人だと分かるからです。

反対に、固い素材のスカートや、装飾の多い服、汚れを気にするような靴で訪問した場合、頭では「助けてあげたい」と思っていても身体がついてこないことがあります。1つ介助をするにも、いったん車に戻って着替える、汚れないようにタオルを敷く、荷物をどける……と準備が増えます。そうすると、その場でパッと手を貸すタイミングを逃してしまうのです。訪問は滞在時間が限られていますから、この小さな遅れが積み重なると「また今度にしましょうか」となり、支援が後ろにズレていきます。

ここで思い出しておきたいのは、ケアマネージャーは利用者さんからすると「相談しやすい窓口」であると同時に、「動ける専門職」であって欲しいということです。
言葉で説明するだけの人と、説明しながら手も動かす人。
どちらの方が安心できるかは、考えなくても分かりますよね。身に着けているものが安全で清潔であれば、ベッド柵の位置を変えたり、マットのズレを直したり、簡単な体位調整をしたりと、その場で出来ることが増えます。すると利用者さんは「この人に言えば何とかしてくれる」と感じ、次の訪問ではもっと深い話をしてくれるようになります。服装が、信頼を育てる入口になっているわけです。

もう1つ大事なのは、動ける服装はそのまま「心理的な距離の近さ」にもつながるという点です。スーツや事務服にはきちんとした良さがありますが、どうしてもテーブルを挟んだ話し合いの雰囲気になりやすく、利用者さん側が身構えてしまいます。介護の場面は、家族や本人が少し恥ずかしいと思う話題も多いので、威圧感がある装いは不利です。やわらかい色や、家庭にあっても違和感のない素材を身に着けていると、「一緒にやってくれる人」という印象を与えやすくなります。

さらに、すぐ動ける服装は、こちらのやる気を相手に伝える役割も果たします。
「今日は外回りなのでこの格好です」
「汚れたら着替えますから大丈夫ですよ」
こうした姿勢が滲み出ていると、ご家族は「この人に現状を全部話してもいい」と感じます。隠していた介護の苦労や、本当は困っていたおむつ交換の頻度など、普段なら言い難いことも話しやすくなります。支援の質を上げるには、この「本音を聞けるかどうか」がとても重要です。服装は、その本音を引き出すための小さなスイッチのようなものなのです。

つまり、ジャージや動きやすい服を勧めるのは、オシャレを制限したいからではなく、訪問を1回ずつしっかり実りあるものにするためです。服装が原因で「今日はここまでにしておきましょう」となってしまうのは、とても惜しいことですからね。次の章では、実際にどんな装いが損をしやすく、どんな装いなら安心を与えやすいのか、少し具体的に触れていきます。


第4章…もったいない服装・好印象な服装を具体例でおさえておく

ここまでで、ケアマネージャーの装いには「自由度が高い」「現場で動けることが大事」というお話をしてきました。ここではもう一歩踏み込んで、「これは少し損をしやすいな」と思われる装いと、「このくらいならどのご家庭でも受け入れられやすい」という装いを、少しだけ具体的にしておきます。どちらも特別なブランドや高価なものではなく、ほんの少しの選び方で印象が変わるものばかりです。

これは損をしやすい装い

一番もったいないのは、清潔さが揺らいで見えるパターンです。
たとえば、色あせたジャージや、膝が出ているパンツ、埃がついたままの黒のカーディガン。忙しい朝にそのまま着てしまいがちですが、利用者さん宅に入ると照明が近く、思った以上に細かいところまで見えます。服の古さそのものが悪いわけではなく、「今日はこれで来たのか」と思わせてしまうところが惜しいのです。

次に、動けるように見えない服も損をします。
タイトスカート、ヒール、袖口が広がったシャツ、長く垂れるアクセサリー、強い香水。どれも日常のオシャレとしては素敵ですが、介助や片付けを伴う場面では「今日は触らないでおこう」という判断に繋がりやすくなります。特にアクセサリー類は、利用者さんの衣服や機器に引っかかることもあるので、訪問の日だけでも控えめにしておくと安心です。

そしてもう1つ、威圧感が出る装いも要注意です。
綺麗なスーツや事務服は、役所や会議室ではとても見映えがしますが、個人のお宅に入ると急に「お話を伺いに来ました」というより「契約と説明に来ました」という空気になります。ご家族の中には、きちっとした服を見た瞬間に緊張してしまう方もおられますので、家庭訪問が中心の日は少しだけ柔らかい素材に寄せた方が無難です。

これは受け入れられやすい装い

反対に、好印象になりやすいのは「清潔に整えた動きやすい服」です。
上下が真新しくなくても、毛玉を取ってある、糸のほつれを切ってある、靴が綺麗に拭かれている――こうした細部が整っていると、それだけで「この人は人の家に上がる意識があるな」と伝わります。無地で落ち着いた色のパンツに、ややスポーティなトップス、上から季節に合った羽織を重ねるくらいが、訪問先でも浮きにくい組み合わせです。

訪問用として用意したジャージも、選び方次第で十分きちんと見えます。
ラインが派手過ぎないもの、ロゴが大き過ぎないもの、色が濃くて洗ってもへたりにくいものを選んでおくと、何度着てもだらしなくなりません。上下を同じシリーズで揃えておけば、それだけで「事業所としての服」に見せることもできます。私服と分けてロッカーに入れておき、出る前に必ずそれに着替えると、公私の切り替えも自然に出来ます。

足もとは、室内に上がることを考えておくとさらに安心です。
革靴よりは、落ち着いた色のスニーカーや、脱ぎ履きしやすいもの。靴下は破れや毛玉がないもの。利用者さんがベッドで横になっている横を通る時、どうしても足元は目に入ります。ここが整っていると、服装全体の印象も底上げされます。

ここまでをまとめると、ケアマネージャーの服装は「高級にする」より「訪問先を尊重する」方向に寄せた方が、結果として仕事がしやすくなります。家庭ごとに生活のリズムも文化も違いますから、こちらの側が1つ基準をもっておくと、どの家に行っても落ち着いて話ができます。次のまとめでは、こうした装いがどうやって1回1回の訪問の質を上げていくのかを振り返っておきますね。

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まとめ…毎回の訪問を一発で決めるためにまず服装を整える

ケアマネージャーの仕事は、書類で完結するように見えて、実はご家庭の玄関に入った瞬間から始まっています。
どんなに内容の良い説明をしても、どんなに制度に詳しくても、最初に「この人はうちに上がって大丈夫な人だ」と思ってもらえなければ、その日の訪問で引き出せる情報は半分になってしまいます。だからこそ、服装を「仕事道具の1つ」として扱うことが大事になります。

この記事でお伝えしてきたように、ケアマネージャーの装いは事業所や地域によって幅があります。ですが、その中でも共通していたのは、清潔であること、動きやすいこと、私生活と切り替えが出来ていること――この3つでした。これさえ守っていれば、ジャージであっても、綺麗めの私服であっても、利用者さんに安心してもらえる訪問になりますし、急な介助にもスッと手を出せます。

また、服装は相手との距離感を作る道具でもあります。スーツや事務服が悪いのではなく、家庭でのやり取りが中心になる日には、少しやわらかい素材や色合いに寄せることで、心のバリアを下げてもらいやすくなります
「今日は外回りだからこの格好です」と自分の中で決めておくと、訪問のたびに迷うこともなくなりますし、毎回の品質も揃ってきます。

大事なのは、「一度の訪問で、出来ることはやって帰る」という姿勢を、見た目からも伝えておくことです。倒れている場面に遭遇しても、汚れた衣類を見つけても、「その服なら動けるね」と相手が感じてくれれば、安心感は一段上がります。服装が整っていると、こちらの熱意や誠実さまで伝わりやすくなるものです。

明日、訪問の予定があるなら、今ある服の中から「清潔・動きやすい・切り替えられる」の3つを満たす一組を、先に用意しておいてください。ほんの少しの準備で、利用者さんとご家族が感じる信頼の入口は、グッと広がりますよ。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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