手羽先は捨てない!~施設ご半を楽しく変える「二度美味しい」発想~
はじめに…骨があるから終わり?~手羽先が教える食卓の「もったいない」~
6月14日は手羽先記念日。香ばしく焼いても、じっくり煮ても美味しく、鍋に入れば良い出汁まで出してくれる手羽先は、なかなかの働き者です。ところが高齢者施設の食卓となると、その姿を見かける機会はグッと減ります。「骨があるから危ない」「食べにくそうだから」と候補から外れ、出汁を取った後は役目終了……となれば、手羽先本人がしゃべれたら「まだ肉ついてますけど?」くらいは言いたくなるでしょう。
もちろん、高齢者の食事では安全への配慮が欠かせません。けれど、安全を守ることと、最初から食材の可能性を閉じることは同じではありません。骨を取り除き、やわらかさや大きさを食べる人に合わせ、出汁を取った肉にも別の味をまとわせる。そんな臨機応変なひと手間があれば、「食べにくい食材」が「楽しめる一皿」に変わる余地があります。
手羽先の面白さは、一度の調理で仕事を終えないところです。旨みはスープへ、やわらかくなった肉は次の料理へ。食材を隅々まで生かせれば一石二鳥どころか、厨房には新しい献立のキッカケが生まれ、食べる人には「今日は何だろう」という小さな楽しみまで増えていきます。食材を大切にする工夫は、そのまま食べる人を大切にする食卓へ繋がります。
施設のご飯は、栄養を満たすだけの時間ではありません。湯気の匂いに昔の台所を思い出したり、「これ、昔よく食べたなあ」と会話が始まったりする生活そのものです。手羽先という少し手間のかかる食材だからこそ、効率だけでは測れない食事の楽しさが見えてきます。捨てる前に、もう一仕事お願いできないか。そんな台所の小さな発想から、施設の食卓はもっと美味しく、もっと明るくなれるのかもしれません。
[広告]第1章…出汁を取ってからが本番!~手羽先に「二度目の一皿」を~
大きな鍋のフタを開けると、フワッと立ち上がる鶏の香り。手羽先は、煮込んでいる最中から良い仕事をしています。皮や骨の周りから旨みが出て、スープに深みを加えてくれる。ここまでは誰もが納得しやすいところですが、面白いのはその先です。出汁を取った手羽先は「役目を終えた食材」ではなく、次の料理へ進める食材です。
じっくり煮た手羽先は、肉が骨から外れやすくなっています。安全を確認しながら骨や硬い部分を丁寧に取り除けば、残った肉をほぐして別の料理へ生かす道が開きます。甘辛く味を含ませたり、ご飯に混ぜたり、トロミのある料理の具にしたり。最初のスープと次の一皿で、一石二鳥です。「さっきまで鍋にいた人ですよね?」と言いたくなりますが、衣替えならぬ味替えをすれば、ちゃんと別の顔を見せてくれます。手羽先は意外なほど変幻自在な食材なのです。
施設の厨房では、食材を大量に扱うからこそ、こうした発想が生きてきます。もちろん、全てを再利用すれば良いという話ではありません。衛生管理(食中毒などを防ぐため、温度や保存状態を適切に管理すること)を守り、安全に扱える範囲で使うことが大前提です。その上で、「出汁を取ったから捨てる」と機械的に決める前に、まだ食べられる部分があるか、別の献立へ繋げられるかを考えてみる。そこに厨房の腕と工夫が光ります。
しかも、この考え方は手羽先だけの話ではありません。野菜の端、魚の骨周り、煮物の煮汁など、台所には「もう終わりかな?」と思ったところから別の役目を持てるものがあります。ただ捨てる量を減らすというだけではなく、1つの食材から何通りもの楽しみ方を引き出す。そんな料理には、食べる人にも伝わるちょっとしたワクワクがあります。
高齢者施設の食卓だからこそ、毎日似た料理が続くより、「今日はこの味なんだ?」と感じられる変化が嬉しいものです。手羽先の二度目の出番は、豪華な特別食でなくても構いません。小さなひと手間で昨日とは違う一皿になる。その積み重ねが、食事を「決まった時間に食べるもの」から「今日もちょっと楽しみな時間」へ近づけてくれるのです。
第2章…安全第一を「出さない理由」にしない~食べる力に合わせる工夫~
「手羽先ですか?骨がありますからねえ」。高齢者施設の献立を考える場では、そのひと言で話が終わってしまいそうです。確かに、骨のある料理をそのまま提供するのは慎重であるべきでしょう。誤嚥(食べ物や唾液などが誤って気管に入ること)や口の中を傷つける危険を考えれば、安全への配慮は欠かせません。けれど、安全第一とは、食材そのものを遠ざけることではなく、その人が安心して食べられる形へ近づけることでもあります。
手羽先なら、十分に加熱して肉をやわらかくし、骨や軟骨を丁寧に取り除いた上で、ほぐした肉を料理に使う方法があります。さらに、食べる人の嚥下機能(食べ物や飲み物を口から胃へ送り込む力)や噛む力に合わせて、大きさややわらかさ、トロミなどを調整していく。全員に同じ形で出すのではなく、1人1人の状態を見ることが大切です。ここは千差万別。「90歳だからこの形」と年齢だけで決められるほど、人の口は単純ではありません。歯も舌も飲み込む力も、それぞれ長い人生を歩んできています。
施設の食事で悩ましいのは、「危ないかもしれない」がいつの間にか「出さない方が楽」に変わってしまうことです。厨房の作業量、調理時間、確認の手間、提供する職員との情報共有まで考えれば、簡単ではないのも事実です。現場では記録も衛生管理もありますから、「手羽先1本のために会議が1本増えそうだな……」という気持ちも分からなくはありません。けれど、そこで完全に扉を閉じてしまえば、食べられる可能性まで一緒に閉じてしまいます。
大切なのは、無理をして提供することではありません。その日の体調や食べる力を確認し、必要なら管理栄養士や介護職、看護職、厨房が情報を持ち寄る。適切な形に出来ない人には別の料理を用意する。提供できる人には、きちんと楽しんでもらう。そんな臨機応変な考え方なら、安全と食べる楽しみを無理に天秤へ乗せなくても済みます。
安全な食事とは「危ないものを全部なくすこと」ではなく、その人に合った食べ方を丁寧に見つけることです。食べられるものまで減らしてしまえば、食卓は少しずつ寂しくなります。反対に、「どうしたら食べられるだろう?」と考える人がいれば、献立の幅は広がります。正に創意工夫。手羽先の骨を1本抜くことから、施設の食事に対する考え方まで少しやわらかくなるなら、そのひと手間には十分な意味があるでしょう。
[広告]第3章…同じ味を知ると会話が変わる~職員も食卓の仲間になろう~
昼食の時間、「今日のおかず、美味しいですよね」と職員が声をかける。利用者さんが「そうやな、ちょっと甘めやけどな」と返してくれる。たったそれだけでも、食卓には小さな会話が生まれます。ところが、その職員が料理を一度も味わったことがなければ、「美味しいですよね」の後が意外と続きません。味を知らないままでは、「そうですか」で会話が着地してしまいます。折角、離陸したのに、早い早い。
高齢者施設の食事は、栄養を補うだけの時間ではありません。香りを感じ、色を見て、噛んで味わい、「昔はこんなの作ったよ」と記憶まで動き出す時間です。長年家族の食卓を支えてきた人なら、煮物の色を見ただけで「これはしっかり味が染みてそうやな」と分かることもあります。料理に対する経験値では、職員より利用者さんの方が百戦錬磨という場面も珍しくないでしょう。
そんな食卓で職員も同じ味を知っていると、会話はグッと具体的になります。「今日は生姜が効いていますね」「このお肉、思ったよりやわらかいですね」と話せれば、「うちはもっと濃かった」「昔は大鍋で作った」と、その人の暮らしの記憶が返ってくるかもしれません。同じものを味わった経験があるだけで、食事の会話は『提供する側とされる側』から『一緒に食卓を囲む人同士』へ近づきます。
もちろん、勤務中の職員全員が利用者さんと同じ量を食べる必要はありません。試食できる仕組みを作ったり、厨房から味や調理の特徴を共有したりするだけでも十分でしょう。「今日の手羽先は、出汁を取った後に肉をほぐして味噌味にしたそうですよ」。そんなひと言を職員が知っていれば、それだけで食卓には話の種ができます。情報共有(必要な内容を職種間で伝え合うこと)は、事故を防ぐためだけではなく、楽しい会話を増やすためにも使えるのです。
そして、食べた感想は厨房にも返せます。「よく召し上がっていました」「少し味が濃いという声がありました」「昔の料理を思い出して話が弾みました」。こうした言葉が届けば、厨房にとっても料理を作った先の景色が見えてきます。もちろん、厨房スタッフが食事介助を学び同席することで生の声を拾う道もあります。介護職、厨房、管理栄養士が同じ食卓を別々の場所から支えるのではなく、味を通じて繋がっていく。そこには一心同体とまではいかなくても、かなり良いチームワークが育ちます。
施設では、介助する人とされる人という役割がどうしても前に出ます。けれど、ご飯を前にした瞬間くらいは、「今日これ、美味しいですよね」と笑い合う人同士で良いのではないでしょうか。食卓には、肩書きを少しだけ薄める力があります。手羽先の香りをキッカケに同じ話題で笑えたなら、それも立派な暮らしの時間です。
第4章…施設の名物は地域への招待状~一皿から育つ人との繋がり~
「うちの施設、月に一度だけ手羽先の日があるんですよ」。そんな話を聞いたら、少し気になりませんか?立派な建物や大きな看板より、「あそこのご飯、ちょっと面白いらしいよ」という話の方が、人の記憶に残ることがあります。地域との繋がりは特別な催しだけで作るものではなく、毎日の暮らしの中から育つもの。食事は、その入口になれる存在です。
手羽先には、家庭ごとの思い出が付きやすい食材でもあります。甘辛く焼いた家もあれば、醤油でコトコト煮た家もあり、鍋やスープに入れていた家もあるでしょう。利用者さんが「うちはこんな味やった」と話せば、そのひと言が施設の厨房へ届く。厨房が少し工夫してみる。職員がその話を家族へ伝える。そうして1つの料理を囲むうちに、昔の家庭の味と今の施設の食卓が自然に繋がっていきます。
そこから地域へ広がれば、さらに面白くなります。地域交流の機会に施設の名物料理について話したり、家族から家庭の味付けを教えてもらったり、「昔、この辺ではこうして食べた」という話を聞いたりする。十人十色の家庭料理が集まれば、それ自体が地域の食文化です。豪華な催しを用意しなくても、食べ物1つなら世代を越えて話が始めやすい。隣に座った人へ突然「人生観を聞かせてください」と言えば身構えますが、「手羽先は焼く派ですか?煮る派ですか?」なら、随分と入りやすいものです。
そして名物料理ができると、作る側にも小さな誇りが生まれます。管理栄養士が塩分や食べやすさを考え、厨房が調理法を磨き、介護職が利用者さんの反応を伝える。それぞれの仕事が一皿へ集まれば、試行錯誤そのものが施設の味になっていきます。利用者さんから「今日はあれの日やろ?」なんて声が出始めたら、もう十分に名物候補でしょう。職員まで楽しみにしていたら、ほぼ当確です。
地域に愛される施設は、地域へ何かを見せる場所ではなく、同じ楽しみを一緒に育てられる場所なのだと思います。手羽先という身近な料理をキッカケに家族の記憶が動き、職員が味を共有し、地域の人との会話まで繋がる。それは和気藹々とした交流を無理に演出するのではなく、美味しい匂いの向こうから自然に人が集まってくる関係です。
「遠くの親戚より近くの他人」ということわざがあります。施設も地域の中で暮らしを支える場所なら、近所の人に顔を覚えてもらい、「あそこなら何となく親しみがある」と思ってもらえる関係は大切です。そのキッカケが立派な講演会でなく、香ばしい手羽先一皿だったとしても良い。むしろ、そのくらい身近な方が、人と人との距離はほどよく縮まるのかもしれません。
[広告]まとめ…捨てない工夫は暮らしを豊かにする~手羽先から始まる優しい食文化~
手羽先は、少し不思議な食材です。焼けば主役になり、煮ればやわらかくなり、骨や皮からは旨みが出る。それなのに、施設の食事では「骨があるから難しい」と遠ざけられたり、出汁を取ったところで役目を終えたりすることがあります。けれど、その先にもう一度目を向ければ、ほぐした肉を別の料理へ生かし、食べる人に合わせた形へ整え、新しい一皿へ繋ぐ余地があります。
大切なのは、「全部使わなければもったいない」と頑張り過ぎることではありません。安全や衛生を守りながら、まだ生かせるものに気づくことです。そこに創意工夫が加われば、食材を捨てる量だけでなく、献立の可能性まで変わってきます。手羽先1つでも、スープだけで退場させるのか、もう一度、美味しく食卓へ戻すのかで、台所の景色は随分と違います。
さらに、その料理を職員も知り、「今日のこれ、美味しいですね」と利用者さんと同じ話題を持てたら、食事はもっと暮らしらしくなります。厨房にも感想が届き、家族の昔の味が話題になり、時には地域の人まで「その料理、どんな味?」と興味を持つかもしれません。一皿の料理から人間関係まで広げるなんて、手羽先もなかなか働かされます。でも本人も、捨てられるよりは本望でしょう。施設の料理が人と人を結ぶ味になり得るという発想は、食事を単なる栄養補給で終わらせない大切な視点です。
「もったいない」は、物を残すためだけの言葉ではなく、まだある可能性を見つけるための言葉でもあります。食材を丁寧に扱い、食べる人の力に合わせ、作る人も介助する人も同じ味を知る。そんな一期一会の積み重ねが、その施設にしかない食卓を育てていきます。
今日の昼ご飯が少し楽しみになる。職員が料理について一言多く話せる。厨房が「今度はこうしてみよう」と考える。地域の人が施設を少し身近に感じる。その始まりが手羽先1本でも良いのです。食卓は毎日やってくるからこそ、小さな工夫を積み重ねる場所としては申し分ありません。
手羽先に二度目の出番を。そして施設の食卓にも、もっと自由な発想を。捨てずに生かすという小さな選択が、美味しい記憶と笑顔を明日へ繋いでくれるなら、こんなに香ばしい未来も悪くありません。
あらゆる角度の苦情に対して、誰からも見えない場所で小さくなってしまってませんか?レトルト、湯煎、盛り付けだけの調理では厨房スタッフの腕が泣きますよね。そして、今回のような感動はけっして生まれてきません。これを機会に1つの感動を目指してみませんか?
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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