秋の山里にご馳走がある~小さな実と芋と果実と木の実~
はじめに…栗も秋刀魚もお休みです~秋のご馳走はまだ山の奥に隠れている~
秋の味覚と聞けば、栗、さつま芋、秋刀魚、きのこ、柿。名前を聞いただけで食卓の景色まで浮かんできます。ところが秋の山や畑をもう少し覗いてみると、「これ、食べられるの?」と思わず聞き返したくなるような食材が、ちゃんと旬を迎えています。
小さな実なのに甘酸っぱく栄養を抱えたサルナシ。山芋のつるにコロコロできる、むかご。香りは甘いのに、そのまま齧るには向かないマルメロ。そして、拾ってすぐには食べられず、手間をかけて栃餅などへ姿を変える栃の実。どれもスーパーの目立つ棚では主役になりにくいものの、昔から人の暮らしに寄り添ってきた秋の味です。
面白いのは、珍しいだけではありません。ビタミンやミネラルを含むもの、旬になると甘味や香りが増すもの、炊く、煮る、漬ける、灰汁を抜くなど、食べられる姿になるまでに知恵が必要なものまで千差万別です。地域ごとの郷土料理を辿れば、「どうしてそこまでして食べようと思ったのだろう?」と感心した直後に、「でも食べてみたいな」とお腹が反応してしまいます。食欲の秋、こちらの都合には実に素直です。
さらに海を越えれば、似た仲間をジャムやお菓子にしたり、日本とは違った料理へ仕立てたりする文化も見えてきます。古い食べ方だけを眺めるのではなく、今の台所ならどう楽しめるかを考えると、少し遠かった山里の味が急に身近になります。
有名ではないからこそ、初めて知る味には「秋ってまだ広かったんだ…」と思わせてくれる楽しさがあります。
いつもの秋のご馳走に、知らなかった一皿をそっと加えてみる。そんな小さな一期一会が、季節を味わう楽しみをもう少し豊かにしてくれそうです。
[広告]第1章…サルナシは小粒でも侮れない~甘酸っぱさに詰まった栄養と世界の食べ方~
秋の山で緑色の小さな実を見つけても、知らなければそのまま通り過ぎてしまいそうです。ところが、その実がサルナシだと分かれば景色が少し変わります。切ってみると中には細かな種が並び、姿は小さなキウイフルーツのよう。実際にサルナシはキウイフルーツの近縁種で、日本の山にも自生してきました。「山にキウイが落ちている?」と驚きますが、こちらが後から似たものを知っただけで、サルナシは昔から山の秋を実らせていたわけです。農林水産省も、日本にサルナシやマタタビが自生し、果実酒などに利用されてきたことを紹介しています。
食べ頃を迎えた実は柔らかく、甘味の中に爽やかな酸味があります。表面にキウイのような毛がほとんどないため、小さな実を皮ごと食べられるのも魅力です。収穫したばかりで硬いものは少し待ち、追熟(収穫後に果実を熟させること)させると香りと甘味がまとまりやすくなります。山紫水明の景色を眺めながら昔の人がひと粒、摘んだかどうかは分かりませんが、食べ頃を知っていた人なら秋のおやつをちゃっかり確保していたでしょう。「山へ行けば無料のフルーツ売り場」というほど簡単ではありませんが、そう考えると少し楽しそうです。
小さな姿からは想像しにくいものの、栄養面にも目を引くところがあります。岡山県新庄村で栽培されたサルナシを調べた研究では、品種や熟し方によって差があるものの、ビタミンCが豊富な果実が確認され、ポリフェノール(植物に含まれる抗酸化成分の総称)やカルシウム、マグネシウム、マンガンなども含まれていました。海外の研究でも、サルナシと同じ種は「キウイベリー」や「ハーディーキウイ」と呼ばれ、ビタミンCやポリフェノール、食物繊維などを含む果実として調べられています。
サルナシの面白さは、小さな実の中に甘味と酸味と栄養、そして山の秋そのものがギュっと収まっているところです。
日本では生食の他、ジャム、果実酒、果実酢などにも向きます。熟した実をヨーグルトに添えれば朝の果物になり、潰してソースにすれば肉料理やチーズにも合わせやすい。砂糖で煮詰めるだけが加工ではなく、甘酸っぱさを料理側へ連れていく発想にすると出番がグッと増えます。岡山県新庄村でも青果だけではなく、ジャムや果実酢、リキュールなどへ加工されています。
そして海の向こうへ目を向けると、サルナシの仲間は意外に国際派です。キウイベリーとしてヨーロッパ、北米、ニュージーランドなどでも栽培され、小さく皮ごと食べやすい果物として扱われています。大きなキウイを半分に切ってスプーンを探す必要もなく、洗ってそのまま口へ運べる。果物を食べたいのに包丁を出すのが面倒な日には、これはなかなか一挙両得です。
昔から日本の山にある実が、世界ではちょっと洒落た「キウイベリー」として見られている。この距離感もサルナシの楽しいところでしょう。珍しい外国の果物を探していたら、足元の山に昔から親戚がいた。秋の味覚は、遠くへ出かけなくても意外なところで世界と繋がっています。
第2章…むかごは空に出来る小さな芋~ホクホクご飯から今時料理まで秋を転がす~
「芋を収穫する」と聞けば、長靴を履いて畑へ入り、土を掘って「出た!」となる場面を想像します。ところが秋の山芋は、こちらの常識を軽く裏切ります。ツルを見上げると、葉の付け根辺りに茶色っぽい小さな玉がコロコロ。これが、むかごです。
むかごは種ではなく、珠芽(しゅが:茎などの一部が養分を貯め、丸く膨らんだもの)の仲間です。自然薯などのヤマノイモ類が子孫を残す仕組みの1つで、地面に落ちればそこから新しい株へ育つこともあります。地下には立派な芋を作りながら、頭上にも食べられる小さな芋を用意するのですから、なかなか用意周到です。「どちらか1つで良いでしょう」と言いたくなりますが、食べる側としては両方ありがたく頂戴したいところです。
旬は秋から初冬。愛知県の西三河・奥三河では、むかごを米やもち米と炊く「むかごご飯」が郷土料理として受け継がれています。昔は秋になると垣根などでも採れ、塩茹でして食べることも珍しくありませんでした。加熱したむかごは、皮の内側がホクホクとして、じゃが芋より小さいのに山芋らしい風味があります。炊飯器のフタを開けた時、小さなむかごがご飯の上に点々と見える姿も、いかにも秋らしいものです。
栄養を数字で見ると、この小ささが少し頼もしく見えてきます。生のむかご100gには、カリウムが570mg、食物繊維が4.2g、たんぱく質が2.9g含まれ、脂質は0.2gほどです。カリウム(体内の水分やナトリウムのバランスに関わるミネラル)の他、マグネシウムや鉄、銅、ビタミンB1なども含まれています。もちろん、むかごを一度に100gも山盛り食べる場面はそう多くありません。それでも、ご飯や副菜へ少し加えるだけで、いつもの食卓に違う栄養と食感を足せるのが面白いところです。
むかごは「珍しい食材を食べる」というより、いつもの料理に秋を数粒転がして楽しめる食材です。
昔ながらのむかごご飯はもちろん美味しいのですが、今の台所なら遊び方はもっと広がります。塩茹でしたものをバター醤油で軽く焼けば香ばしいおつまみに、素揚げして塩を振れば小粒のフライドポテトのような一皿になります。オリーブオイルと香草で焼いたり、鶏肉やきのこと一緒にアヒージョ風にしたり、クリーム系のグラタンへ散らしたりしても面白いでしょう。和洋折衷とはこういう時のための言葉かもしれません。むかご側も、まさか山のツルから降りてきた先でチーズを浴びるとは思っていなかったでしょう。
さらに視野を広げると、ツルに食べられる球状の部分を作るヤムの仲間は日本だけのものではありません。アジアやアフリカにも、地下の芋だけでなく空中に出来るむかご状の部分を食用にするヤムがあります。煮たり、蒸したり、焼いたりと利用されてきました。ただし、世界のヤムには種類によって苦味成分や食用に向かないものもあり、日本の食用むかごと見た目だけで同じ扱いには出来ません。知らない野生種を拾って料理するより、食用として販売されているものを楽しむのが安心です。
こうして眺めると、むかごは単なる「小さい山芋」ではありません。植物にとっては次の世代へ命を繋ぐもの、人にとっては秋を知らせるご馳走になり、土地によっては郷土料理として記憶まで受け継いできました。小さな一粒を茶碗の中で転がしてみれば、季節を味わうという言葉が急に具体的になります。
秋の食卓には、大きくて立派なものだけを並べなくても良いのです。むかごご飯の小さな一粒を箸で摘む。それだけでも、山の季節はちゃんと口の中までやって来ます。
[広告]第3章…マルメロは生で食べないから面白い~香り高い果実を甘いご馳走へ変える知恵~
秋の果物売り場で黄色い実を見つければ、梨かリンゴの仲間だろうと思って手が伸びそうになります。ところがマルメロは、見た目から想像する食べ方を少し裏切る果物です。熟すと甘く華やかな香りを放つのに、果肉は硬く、渋味や酸味もあって、そのまま丸齧りするのには向きません。「こんなに良い匂いなのに食べさせてくれないの?」と少し焦らされますが、このひと手間こそマルメロの持ち味です。
日本ではカリンと混同されることがありますが、マルメロとカリンは別の植物です。マルメロは熟すと黄色くなり、品種によって洋梨のような形になり、果実の表面には綿毛があります。ところが長野県の諏訪地方では、江戸時代から栽培されてきたマルメロを長い間「かりん」と呼んできました。鑑定でマルメロだと分かった後も地域の呼び名は残り、今も土地の文化として親しまれています。10月中旬頃には収穫の季節を迎え、諏訪の秋を知らせる果実の1つになっています。
生では手強い果肉も、砂糖と火が入ると様子が変わります。砂糖漬け、シロップ漬け、ジャム、果実酒などへ加工すると、硬かった果肉が食べやすくなり、あの芳香が甘味の中に残ります。諏訪では昔ながらの砂糖漬けも作られていて、紅茶やホットミルクに入れて酸味と甘味を楽しむ食べ方もあります。湯気の立つカップにひとかけ入れるだけなら、栗を裏ごしして菓子を作るよりずっと気軽です。秋の夜にそこまで頑張れない日もありますから、果物側が飲み物へ来てくれるのは助かります。
栄養面では、マルメロ100gあたりのエネルギーは48kcalで、食物繊維は5.1g、カリウムは160mg、ビタミンCは18mg含まれています。食物繊維(消化されにくく、お腹の働きに関わる成分)が比較的多い点は、小さな秋の果実として覚えておきたいところでしょう。ジャムや砂糖漬けにすれば糖分は増えるため、「栄養があるから瓶ごとどうぞ」とはいきません。美味しいものほど匙加減が必要なのは、秋の食卓でも変わらないようです。
マルメロは、生で食べにくいという弱点を、人の知恵によって香り高い長所へ変えてきた果物です。
世界へ目を向けると、この「加熱して美味しくする」という発想はさらに広がります。スペインではマルメロを砂糖と煮詰めた「メンブリージョ」と呼ばれる濃厚なペーストが知られ、チーズと合わせて食べられています。アンダルシアの食文化にもマルメロの甘い加工品が登場し、硬くて渋い果実が立派な菓子文化へ育ってきました。イギリスなどでもジャムやゼリー、タルトに使われ、加熱すると果肉の風味が深まり、色合いも変化していきます。
さらに今の料理なら、甘い保存食だけに閉じ込める必要もありません。メンブリージョをチーズとパンに挟んで焼けば、甘味、塩味、香ばしさが重なるトーストになりますし、酢や調味料と合わせて肉料理のソースや照り焼き風のグレーズ(表面に塗って艶や味を付ける調味液)へ使う方法もあります。実際に海外では牛肉料理の艶出しにもマルメロのペーストが使われています。甘味をデザートだけに任せず料理へ動かせば、一石二鳥どころか出番はかなり増えていきます。
果物は新鮮なうちに齧るほど偉い、とは限りません。硬くて食べにくいものを煮て、漬けて、香りを閉じ込める。その工夫があったからこそ、秋の実りは冬まで楽しめるご馳走になりました。マルメロを見ていると、「扱いにくい食材」も調理法を変えれば「料理してみたくなる食材」へ変わることが分かります。
黄色い実を前にして「これ、どうやって食べるんだ?」と首を傾げるところから、もう料理は始まっています。すぐ食べられない果物が1つくらいあっても良い。待ったり煮たりする時間まで含めて味わえるのが、実りの秋らしい贅沢なのかもしれません。
第4章…栃の実を食べようと思った昔の人は凄い!~栃餅・灰汁抜き・山里の食文化を巡る~
秋の山道に、栗によく似た艶のある茶色い実が転がっています。「おっ、栗だ」と拾って焼けば秋のおやつの出来上がり……とはいきません。それが栃の実なら、話は急に長くなります。栃の実はアクが非常に強く、そのまま食べれば激しい苦味や舌を刺すような刺激があります。見た目だけなら「どうぞ食べてください」と言わんばかりなのに、中身はなかなか手強い。最初に食べようとした人へ「なぜ2回目に挑戦したのですか?」と聞いてみたくなる木の実です。
それでも日本の山間部では、栃の実は古くから大切な食料になってきました。米を十分に作りにくかった土地では、山から得られる木の実も暮らしを支える貴重な恵みです。鳥取県では栃の実ともち米を合わせた栃餅が受け継がれ、正月の雑煮に入れる地域もあります。京都府北部でも栃餅や栃の実を使った菓子作りが伝わり、日本各地の山村に似た食文化が残っています。地域によって工程や味は少しずつ違っても、「山にあるものを何とか美味しくいただく」という試行錯誤が、1つの郷土料理を育ててきました。
ところが、その「何とかする」が尋常ではありません。鳥取に伝わる方法では、熱湯に浸して実を膨らませ、硬い皮を剥き、谷川の流水に5~6日さらし、さらに木灰と熱湯を使ってアクを抜きます。状態が良くなければ工程をやり直すこともあり、食べられるようになるまで半月以上かかる場合があります。木灰を入れるという部分だけ聞けば、「料理ですよね?」と確認したくなりますが、これが長い経験から生まれた技術です。一朝一夕では身に付かないとは、正にこのことなのでしょう。
アクが抜けた栃の実をもち米と一緒に蒸して搗くと、薄茶色をした栃餅になります。普通の餅より少し粘りが控えめで、栃特有の香りとほろ苦さが残る素朴な味わいです。あんこを包んだ栃餅もあれば、焼いて醤油を付けたり、海苔を巻いたり、きな粉をまぶしたりする土地もあります。長い下拵えの末に出来上がるのが、派手な宮廷料理ではなく「お餅」というところが良い。山のご馳走は、最後にはちゃんと茶の間へ帰ってきます。
栃餅の美味しさには、栃の実そのものだけでなく、食べられないものを食べられるようにした人の知恵まで搗き込まれています。
栄養を見ても、ただの珍味ではありません。食品成分表の「とち・蒸し」100gでは、炭水化物34.2g、食物繊維6.6g、カリウム1900mg、カルシウム180mg、銅0.44mg、マンガン1.46mgなどが含まれています。カリウム(体内の水分やナトリウムのバランスに関わるミネラル)や食物繊維を含む一方、実際の栃餅ではもち米などと混ぜるため、食べる1個分の栄養値はこの数字とは異なります。それでも、昔の山村で栃の実がエネルギー源の1つとして役立ったことは、その炭水化物の多さからも窺えます。
今なら、この大仕事を家庭で最初から再現する必要はありません。むしろ知識のない状態で拾った栃の実を自己流で処理して食べるのは避けたいところです。伝統的なアク抜きには、苦味だけでなく食用に適さない成分を取り除く意味があります。きちんと処理された栃餅や加工済みの栃の実を選べば、昔の味をずっと気軽に楽しめます。
そこから先は、令和の台所が少し遊んでも良いでしょう。栃餅を香ばしく焼いて醤油を塗る王道もあれば、小さく切ってお汁粉へ入れたり、きな粉や黒蜜と合わせたりするのも似合います。薄く切った栃餅を焼いてチーズを少し載せれば、山里の味と洋風のおやつが同じ皿で握手します。京都では栃の実を使ったおかき、あられ、クッキーなどへの商品化も進んでおり、「栃の実=餅だけ」という枠も少しずつ広がっています。
そして世界を見ると、さらに興味深い景色があります。日本の栃とは別種ですが、北米にも同じトチノキ属の「バックアイ」と呼ばれる木があります。その種にも食用に適さない成分があり、先住民の一部は、焼く、煮る、砕く、水に長くさらすといった処理を重ね、食料が乏しい時期の糧として利用していました。日本の栃餅と同じ料理ではありませんし、植物の種類も違います。それでも、苦く扱いにくい木の実を水と時間で食べ物へ変えようとした発想が、遠く離れた土地にもあったのです。
そこに栃の実の面白さが見えてきます。現代の感覚なら「食べにくいなら別のものを食べよう」で終わります。しかし食べ物を簡単に選べなかった時代、人は食材の側へ歩み寄りました。水にさらし、灰を使い、待ち、味を確かめ、次の世代へ方法を渡していく。栃餅は珍しい郷土菓子であると同時に、自然と暮らすための知恵を食べられる形で残したものでもあります。
秋の山に転がる茶色い一粒を、私たちは今ならそのまま通り過ぎるかもしれません。それでも、その一粒を食卓まで運んだ人たちの工夫を知ると、栃餅をひと口かじる景色は少し変わります。手間を減らせる時代だからこそ、手間をかけて残された味が、妙に贅沢に感じられるのです。
[広告]まとめ…知らない味を1つ知るだけで秋の食卓はもう少し広くなる
秋の味覚には、栗やさつま芋のように季節が来れば自然と思い浮かぶものがある一方で、名前を聞いても味の想像がつかない食材もあります。サルナシ、むかご、マルメロ、栃の実。4つを並べてみると、同じ秋の恵みなのに性格は驚くほど違っていました。
サルナシは小さな果実に甘酸っぱさとビタミンCなどの栄養を抱え、むかごは山芋のつるに実る不思議な姿から、ホクホクした秋ご飯へ変わります。マルメロは芳しい香りを放ちながら生食には向かず、煮たり漬けたりすることで甘い楽しみに変身する果物でした。そして栃の実は、長い灰汁抜きを経て栃餅になるまでの道のりそのものが、山里で積み重ねられた暮らしの知恵を伝えています。
栄養価だけを比べれば、もっと手軽な食材はいくらでもあります。調理の簡単さだけなら、包丁を入れてすぐ食べられる果物の方が便利でしょう。それでも、旬の食べ物には数字だけでは測れない面白さがあります。どこで採れ、どう食べられ、何故その土地に残ったのか?を知ると、一皿の向こう側に人の暮らしまで見えてきます。知れば知るほど興味津々、そして気づけば「一度くらい食べてみたい」と思っている。食いしん坊の好奇心は、なかなか働き者です。
世界へ目を向けても、似た植物を育てたり、硬い果実を甘く煮たり、扱いにくい木の実へ手間をかけたりと、人は土地ごとに食べ方を考えてきました。便利な時代になっても、その知恵を全部、昔のものにする必要はありません。栃の実なら安全に加工された栃餅を選び、マルメロならジャムをチーズに合わせ、むかごなら洋風料理へ転がしてみる。昔ながらの味を守ることと、新しい食べ方を楽しむことは、意外と仲良く同じ食卓へ座れます。
「初物七十五日」という言葉があります。旬の初物を食べれば寿命が七十五日延びるという昔からの言い伝えで、本当に日数が増えるという話ではありません。それほど季節の恵みを喜び、元気をもらう気持ちが大切にされてきたのでしょう。
知らない食べ物との出会いは、食卓に一皿増やすだけではなく、いつもの秋を少し広く見せてくれます。
今年の秋、全部を探し回らなくても大丈夫です。サルナシをひと粒、むかごご飯を一膳、マルメロのジャムをひと匙、栃餅を1つ。そのどれかに出会えたら、「秋にはこんな味もあったのか」と楽しんでみる。それだけで十分です。
季節のご馳走は、有名なものだけで出来ているわけではありません。知らない味がまだ残っていると思えば、来年の秋にも楽しみが1つ増えます。実りの季節は、思っているよりずっと広く、そして美味しいものです。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
[ 応援リンク ]
ブログランキング2つに参加しています。応援クリックをお待ちしております。
[ ゲーム ] 作者のitch.io(作品一覧)
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。