9月9日は菊より笑顔を咲かせよう~高齢者施設で楽しむ重陽の節句レクリエーション~

[ 季節と行事 ]

はじめに…9月9日いつもの食堂に小さな秋がやって来る

9月9日の朝、食堂の片隅に黄色い菊が一輪飾られていたら、それだけで少し空気が変わります。

「今日は何の日でしょう?」

そう尋ねると、「救急の日!」と元気な声が返ってくるかもしれません。もちろん正解です。けれど、もう1つ忘れたくないのが、五節句の締め括りとなる「重陽の節句」です。菊の花を愛でながら、無病息災や長寿を願う秋の行事として親しまれてきました。

七夕ほど飾りがにぎやかでもなく、ひな祭りほどご馳走の姿がすぐ浮かぶわけでもないため、「重陽って……どなたでしたっけ?」となりがちです。人ではありません、と自分でツッコミを入れたくなりますが、その控えめさこそ高齢者施設にはよく似合います。

菊を眺める。香りを楽しむ。昔の秋の思い出を語る。手を動かして飾りを作る。大きな催しを準備しなくても、日常の中へ小さな楽しみを足すだけで、和気藹々とした時間は育っていきます。

重陽の節句は、長寿を祝われる人が見るだけでなく、自分らしく秋を楽しむ日です。

職員が頑張って盛り上げるよりも、利用者さんの言葉や笑顔が自然に花開くことを大切にする。そんな重陽の1日なら、菊より先に笑顔が満開になるかもしれません。

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第1章…重陽の節句はなぜ「菊の節句」と呼ばれるのか

9月9日の「重陽」という名前には、陽の数とされた「9」が2つ重なるという意味があります。縁起の良い数字が仲良く並ぶ日として、五節句の締め括りに置かれ、無病息災や長寿を願う行事になりました。

そして、この祝いに欠かせなかった花が菊です。

菊は長く美しい姿を保ち、寒さが近づく頃にも凜として花を咲かせます。その姿から、邪気を遠ざけて命を健やかに保つ花と考えられ、「延年益寿」を願う重陽の節句にふさわしい存在として大切にされました。花を眺めるだけでなく、香りを楽しみ、菊を浮かべた酒や食用菊を味わう文化も育っていったのです。

菊は飾り物ではなく、元気に秋を迎えられた喜びを目で味わう花でした。

ところが、現在の9月9日に菊を探すと、「まだ主役は少し早いのでは?」という顔をした蕾も少なくありません。菊が寝坊しているわけではなく、暦の歩幅が変わったためです。

昔の9月9日は、現在の暦では概ね10月中旬から下旬に当たります。空気が涼しくなり、菊が自然に見頃を迎える季節でした。日付だけが現在の暦へ移ったことで、行事と花の盛りにズレが生まれたのです。「菊の節句なのに菊が少ない」と菊を責めたくなりますが、菊側に落ち度はありません。

この季節のズレが、重陽の節句を身近に感じにくくした理由の1つとも考えられます。それでも、花屋の菊や食用菊、写真、折り紙などを通して季節を楽しむことは出来ます。9月9日だけにきっちり合わせず、菊が咲く頃までゆるやかに味わうのも、今の暮らしに合った祝い方でしょう。


第2章…高齢者施設と相性が良いのは思い出が主役になるから

菊の花をテーブルへ置くと、すぐに手を伸ばす人もいれば、少し離れた場所から静かに眺める人もいます。

「昔、庭にたくさん咲いていたよ」

「お供えの花という印象があるなあ」

「私は菊より団子が良い」

最後のひと言で話題が食欲へ曲がることもありますが、それも立派な秋の思い出です。予定通りに話が進まなくても、笑顔が生まれたなら大成功でしょう。

重陽の節句が高齢者施設とよく馴染む理由は、難しい作業や激しい運動をしなくても、見る、香る、触れる、味わうという身近な体験から会話を始められることです。菊の種類を当ててもらう必要はありません。行事の由来を最後まで覚えてもらう必要もないのです。

レクリエーションの主役は正しい答えではなく、その人の中から出てきた言葉です。

思い出を語ってもらう時には、回想法(昔の出来事を語り、安心感や交流に繋げる関わり)の考え方が役立ちます。ただし、「昔は何をしていましたか?」と急に尋ねても、記憶の引き出しは銀行の金庫のように固く閉まっていることがあります。こちらが暗証番号を忘れたわけではありません。花や写真、香り、季節の歌など、思い出の取っ手になるものをそっと添えることが大切です。

菊を見ながら「家にも咲いていましたか?」と尋ねる。秋祭りの写真を見ながら「この頃は何を着ていましたか?」と話を広げる。食用菊を少し味わい、「どんな料理に入っていましたか?」と聞いてみる。五感を入口にすると、会話は一問一答ではなく、十人十色の物語へ変わっていきます。

もちろん、思い出したくないことや、上手く言葉にできないこともあります。そんな時は無理に聞き出さず、「綺麗ですね」「秋らしいですね」と同じ景色を一緒に眺めるだけでも十分です。沈黙を失敗と決めつけないことが、安心して参加できる空気に繋がります。

やがて1人の話に別の人が「うちもそうだった」と加わり、職員が知らない時代の暮らしが次々と顔を出します。菊の花を囲んだ小さな時間が、世代を越えた和気藹々の座談会になる。重陽の節句は、利用者さんが教えてくれる側へ回れる、嬉しい秋の行事なのです。

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第3章…飾る・味わう・語り合う~無理なく楽しむ菊のレクリエーション~

重陽の節句を楽しむために、大きな舞台や豪華な出し物を用意する必要はありません。菊を1つの合図にして、「見る」「手を動かす」「味わう」「話す」を少しずつ重ねれば、秋らしい時間が生まれます。

まず取り入れやすいのが、菊の飾り作りです。黄色や白、橙色の紙を細く切り、中心へ向かって重ねると、ふんわりとした菊の花になります。手先を細かく動かすことが難しい方には、花弁を選ぶ役、台紙へ置く役、完成した花の飾り場所を決める役をお願いしても良いでしょう。

職員が見事な見本を作り過ぎると、利用者さんから「もう完成してるやないか」と言われることがあります。はい、おっしゃる通りです。少しくらい曲がっていても、みんなで作った花には唯一無二の味があります。

完成した菊は壁へ一列に並べるより、食堂の柱や廊下、談話スペースへ少しずつ飾ると、施設の中を歩くたびに秋を見つけられます。日常の景色へ花が増えていく様子には、花鳥風月を身近に味わう楽しさがあります。

次は、食卓です。食用菊を使える場合は、おひたしや酢の物、ご飯の彩りとして少量添えると、いつもの献立がグッと華やぎます。飲み込みやすさや食物アレルギー、服薬との兼ね合いなどを確認し、無理なく味わえる形に整えることが大切です。

菊酒の雰囲気を楽しみたい時は、アルコールにこだわらず、菊の飾りを添えたお茶やノンアルコール飲料でも十分です。雅楽調の穏やかな音楽を流せば、食堂が少しだけ宮中行事のようになります。ただし、職員が急に雅な歩き方を始める必要はありません。配膳が遅くなるだけです。

豪華な行事よりも、いつもの暮らしへ季節を1つ足すことが、心に残る祝いになります。

食後には、菊や秋にまつわる座談会を開いてみましょう。「庭で育てた花」「秋祭りの屋台」「敬老会の思い出」「昔の衣替え」など、話題は自由に広げられます。落語や懐かしい歌を少し加えれば、笑い声も生まれやすくなるでしょう。

参加を躊躇う方には、作品を眺めてもらうだけでも構いません。途中で席を離れても、話を聞くだけでも、その人なりの参加です。「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、好きなことを見つけた人の表情は、説明書よりずっと雄弁です。

飾り、食事、音楽、会話を全部盛りにしなくても大丈夫です。今日は花を作る日、明日は音楽を聴く日というように、一日一善ならぬ「一日一楽しみ」で進めると、準備する職員にも参加する利用者さんにも無理がありません。小さな菊が少しずつ咲くように、楽しみもゆっくり育てていけば良いのです。


第4章…1日で終わらせない「秋のプラスワン」という育て方

重陽の節句は、9月9日に全てを詰め込まなくても楽しめます。

現在の暦では9月、菊が自然に見頃を迎える昔の季節感では10月頃。この時間差を困り事にせず、秋を長く楽しめる余白として使ってみましょう。9月9日に始め、菊の花が似合う頃まで、日常へ小さな楽しみを1つずつ加えていくのです。

ただし、毎日が大行事では職員も利用者さんも息切れします。「40日間のお祭りです」と宣言した瞬間、担当者の頭には飾りより先に勤務表が浮かぶでしょう。華やかな予定表を作った本人が、3日目に遠い目をしていては笑えません。

目指したいのは、行事の連続ではなく「秋のプラスワン」です。

朝の会で菊の写真を見る。昼食に秋らしい器を使う。廊下へ利用者さんの作品を1枚飾る。午後のお茶に季節の話を添える。そんな数分の変化なら、特別な予算をかけずに続けられます。

季節行事は、1日だけ盛り上げるより、暮らしの中へ少しずつ染み込ませると長く心に残ります。

9月には救急の日、お月見、お彼岸、敬老の日があります。10月へ進めば衣替えや秋祭り、運動を楽しみやすい季節もやって来ます。それぞれを別々の催しとして抱え込まず、「元気に秋を過ごし、長寿を祝う時間」という大きな流れで繋げると、準備にも一貫性が生まれます。

菊の飾りを敬老会の会場にも使い、お月見の作品と並べる。秋祭りでは完成した花を写真撮影の背景にする。飾りを作って終わりではなく、次の楽しみに少しずつ受け渡していけば、一石二鳥どころか三鳥くらい飛んでくるかもしれません。鳥の数はともかく、片付けの回数が減るのは確かです。

長い期間を楽しむ時ほど、全員が同じ活動へ参加する必要もありません。体調や好みに合わせ、花を見る日、歌を聴く日、作品を作る日、のんびり過ごす日を選べるようにします。臨機応変に参加方法を変えられることが、安心して楽しめる行事に繋がります。

職員同士で「今日は何を1つ足すか」を共有しておくと、無理なく続けやすくなります。大がかりな企画書より、申し送りへ短く書ける程度の予定でも十分です。小さな変化を積み重ねるうちに、施設全体が少しずつ秋色へ変わっていくでしょう。

重陽の節句は、9月9日の予定表へ丸を付けて終わる行事ではありません。菊を入口にして、敬老の日やお月見、秋祭りへ楽しみを繋いでいく。そんな緩やかな祝い方なら、利用者さんにも職員にも負担をかけず、秋の毎日を豊かに育てられます。

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まとめ…菊が一輪あれば長寿を祝う時間は始められる

重陽の節句は、豪華な飾りや大きな催しがなければ成立しない行事ではありません。

9月9日に菊を一輪飾り、「今日は長寿を願う日ですよ」と声をかける。花を眺めながら昔の庭や秋祭りを思い出してもらい、お茶や食事へ季節の彩りを少し添える。それだけでも、いつもの1日は穏やかな祝いの日へ変わります。

大切なのは、行事の知識を覚えてもらうことでも、全員に同じ作品を完成してもらうことでもありません。話したい人は話し、作りたい人は手を動かし、静かに見ていたい人は花を眺める。その人らしい参加を大切にすれば、自然と和気藹々とした空気が育ちます。

長寿を祝うとは、年齢の数字を見ることではなく、今日の楽しみを一緒に見つけることです。

職員も、あれもこれもと抱え込まなくて大丈夫です。菊の飾りを1つ増やしたら、その日はもう立派な季節行事。「もう少し何か必要では」と考え始めると、気づけば模造紙と折り紙に囲まれます。準備する人まで菊のように固まってしまっては本末転倒です。

9月9日から敬老の日、お月見、秋祭りへと楽しみを緩やかに繋げれば、重陽の節句は一日限りではなく、秋を味わう入口になります。利用者さんと職員が一期一会の笑顔を重ねながら、施設の中に小さな季節を咲かせていく。

菊が一輪あれば、祝いの時間は始められます。その隣に笑顔が1つ咲いたなら、今年の重陽の節句はもう大成功です。

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今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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  • コメント ( 2 )

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  1. ふうちゃん

    こんばんは! ブログランキングから来ました

    重陽の節句、懐かしい響きでした。亡くなった母を思い出しました。
    そういえば、昔は、母がお祝いをしてくれていたと思います。
    無くしてしまうのは、もったいないので、何とか残していきたいと思います。

    また、のぞきに来ます。

    • niiro makoto

      おはようございます。
      菊の仄かな香り、大輪の美しい花、素晴らしさを感じますよね。

      新暦と旧暦では40日ほどの差があるのですが、前と後で2回お祝いしてみても良い頃合いだと思います。

      9月9日と10月20日頃、ゆっくりと体を労わる日にされると効果的かもしませんね。

      お体をご自愛くださいね(*^▽^*)