七福神をまるごと味わう！名前・役割・ご縁をやさしく紐解く案内書
目次
はじめに…七人揃えば福が来ると伝えられてきたお話
七福神（しちふくじん）って、名前は知っているのに、いざ「全員言ってみて」と言われると……あれ？あと何人か出てこない、ということがありますよね。
元々、七福神は、日本の人たちが「この神様は縁起がいい」「この神様を身近に置いたら暮らしが明るくなる」と感じた神様を、長い年月の中で少しずつ集めていって、最終的に７人に落ち着いたものだと言われています。室町時代の終わり頃から江戸時代にかけて形が整っていき、今の私たちが知っている「恵比寿様もいるし、大黒様もいるし、紅一点の弁財天様もいる」という姿になりました。
面白いのは、七福神は全員が同じ国の神様ではないところです。日本に古くからいる神様もいれば、中国から伝わったとされる神さま、さらにインドにルーツを持つ神様もいると考えられています。つまり「これは良いものは全部取り入れよう」という、昔の人の柔らかい発想の結晶みたいな存在なんですね。
この記事では、その七福神を一人ずつ丁寧に見ていきます。名前・姿・持ち物には全て意味がありますし、「この神様にはこういうお願いをする」という役割のようなものも整理できます。最後には覚え方も載せますので、読み終わる頃には「七福神なら全部言えるよ」と胸を張っていただけるはずです。
お正月の飾り付けや、寺社巡りで見かけた時に、「あ、この人はこういうご利益の神さまだ」と分かると、行事も旅もグッと楽しくなります。ゆっくり読み進めていきましょう。
[広告]第１章…七福神が７人セットになった歴史と背景を覗いてみよう
七福神は、最初から「７人一緒です」と決まっていたわけではありません。今でこそ恵比寿様・大黒天様・毘沙門天様・弁財天様・福禄寿様・寿老人様・布袋様の７柱で落ち着いていますが、この形にまとまるまでには何百年かけてゆっくりと形が整っていったと言われています。
そもそも日本の人々は、古くから「暮らしを見守ってくれる存在」をとても大事にしてきました。田んぼのことはこの神様、海のことはこの神様、家の中はこの神様、と分けてお祀りしてきたので、時代によって「この神様を前に出そう」「この姿の方が親しみやすい」という変化が起きやすかったのです。
七福神に近い考え方としては、中国に伝わる「八仙」という一団があります。これは不老や長寿、知恵を持つとされた８人の仙人の集まりで、日本でも物語として紹介されていました。日本人はこうしたお目出度いものをとても好んだので、「福をもたらす存在が集まってやって来る」というイメージが広まり、やがて船に乗ってくる宝船の絵なども描かれるようになります。
しかし、私たちが知るような７柱のまとまりが見られるのは、室町時代の末頃からとされています。この頃には、すでに恵比寿様・大黒天様・毘沙門天様の３柱を揃えてお祀りする例が多く見られました。恵比寿様は日本に古くから伝わる神様ですし、大黒天様は台所や豊かさを象徴する存在、毘沙門天様は武の守護とされ、とても実用的で分かりやすい３柱だったからです。
その後、江戸時代に入ると、町人文化がグッと花開きます。人々は新年になると「今年も家が栄えますように」「家族が無事でありますように」「いいご縁がありますように」と願いました。そうした願いをまとめて受け止めてくれる存在として、七福神はとても都合が良かったのです。商いを守る神様、長寿を見守る神様、芸事に強い神様……と少しずつ顔触れを調整しながら、今の７柱で伝わる形に落ち着いていきました。
ここで覚えておきたいのは、七福神は「日本・中国・インド」という三つの場所の信仰が程良く混ざった“よいとこ取りの福のチーム”だということです。１つの宗教だけで説明しようとすると「この人はどこから来たの？」と分かりづらくなりますが、「昔の人が縁起の良い神様を選び抜いた結果がこの７柱」と考えると、とてもすんなり受け入れられます。
そして、宝船に７人が乗って新年にやって来る絵が広まったことで、七福神は「年の初めに幸せを運んでくる存在」としても親しまれるようになりました。お正月に子どもへ渡す絵札や、枕の下に敷いて一晩寝るとよい夢が見られるという風習も、この“幸せを運んでくる７人組”という発想から生まれたものです。
今の私たちが七福神を学ぶ時は、この歴史をほんのり頭に入れておくと、次の章で見る「それぞれの姿や持ち物の意味」がグッとわかりやすくなります。昔の人が「これは縁起が良いから残そう」と思った部分だけが残っているのだ、という視点で読んでみてくださいね。
第２章…七福神～それぞれの名前・姿・持ち物の意味～
七福神が人気なのは、一人一人の姿がとても分かりやすくて、しかも日常の願いごとに寄り添ってくれるところにあります。ここでは、代表的な姿・持ち物・そこに込められた意味を、ゆっくり辿っていきます。名前だけ覚えるのではなく「なぜこの恰好なのか」「どうしてこの道具なのか」を押さえておくと、寺社で見かけたときにもすぐに見分けがつくようになります。
日本で親しまれてきた顔ぶれ
まずは、日本で特に早くから信仰されていたと言われる恵比寿様と大黒天様からお話しします。
恵比寿様は、七福神の中で唯一「日本生まれ」とされることが多い神さまです。狩衣をまとい、右手には釣り竿、左手には大きな鯛を抱えています。釣り竿は「自分の手で糧を得ること」、鯛は「目出度いこと」を表すので、働くことや商いを大切にする人たちからとても好まれました。にこやかな表情をしていることが多いですが、海の神としての一面もあり、本来は力の強い存在であるとも言われます。
大黒天様は、頭に烏帽子、和装の姿で描かれ、米俵の上に乗っている姿が有名ですね。右手には打ち出の小槌、左手には福袋を持っています。米俵は家の豊かさ、小槌は願いを叶える力、福袋は人には見えないご加護を表しているとされ、家の守り神として台所にお祀りする家庭もありました。昔話に出てくるような親しみやすさがあり、鼠を従えている姿が描かれることもあります。
武と芸をつかさどる華やかな神さま
次に、姿が少し勇ましかったり、美しかったりする神様たちを見てみましょう。
毘沙門天様は、鎧兜をつけた武人のような姿で立っておられます。足元には邪鬼を踏みつけ、右手に持つのは宝棒、左手には宝塔。これは「悪いものを退けて正しいものを守る」姿です。元々は仏法を守る存在として伝わりましたが、日本では武家からの信仰も集め、「勝ちたい時に頼る神様」という見方も広まりました。京都の鞍馬寺とのご縁が語られることもあり、歴史好きな人にも人気があります。
弁財天様は、七福神の中で紅一点として描かれることが多い神さまです。白く美しい衣をまとい、琵琶を抱えている姿がよく知られています。琵琶は芸や言葉、音を表すので、音楽・芸事・話す仕事などを支えてくれる存在とされました。元々は水を司る神様でもあり、龍や蛇との関わりの伝承も残されています。時代によっては甲冑姿で描かれることもあり、やさしさと強さの両方を併せ持つところが魅力です。
長寿・円満・ゆとりを象徴する３人
最後に、ちょっと仙人のような雰囲気をまとった３柱をまとめてご紹介します。容姿が似ているため同一視されることもありますが、少しずつ役割が違います。
福禄寿様は、その名のとおり「福・禄・寿」という三つの幸せを一度に授けるとされた神様です。額が長く伸び、白い髭をたくわえ、杖に書物を結び付けている姿が多く描かれます。書物は知恵や教えを表し、そこに鶴や亀といった長寿の象徴が添えられることもあります。中国の吉祥思想が元になっているので、祝いごと全般との相性が良いのが特徴です。
寿老人様は、やはり高い頭と白髭で描かれることが多いですが、手には不老長寿の薬が入っていると言われる瓢箪を持ち、傍には鹿が寄り添っています。鹿は長く生きる動物として知られることから、自然と共に年を重ねることの目出度さを示す存在です。福禄寿様と同じ神様ではないかという説もありますが、日本では別々に描かれることが多く、長生きの願いをやさしく受け止めてくれる姿として親しまれました。
布袋様は、七福神の中でもっとも親しみやすい姿かもしれません。丸々としたお腹を見せ、にこにこと笑い、大きな袋を肩にかけています。この袋には人々の悩みや心配ごとを入れて持ち歩き、代わりに笑いに変えてくれる――そんな解釈が伝わっています。実在した中国の僧がモデルだとも、未来に現れる弥勒の化身だとも言われ、どちらにせよ「にこやかでいることそのものが福になる」ということを教えてくれる神様です。
このように見ていくと、七福神はそれぞれが別々の場所・別々の時代からやってきたにもかかわらず、「暮らしを豊かに」「家を守り」「長生きを願う」という共通の願いを形にした存在だと分かります。次の章では、ここで触れた姿や持ち物が、実際にどんな願いごとと結びついてきたのかを整理していきます。
第３章…どの神様に何をお願いする？ご縁とご加護の整理帳
ここまでで七福神それぞれの姿や持ち物が分かってきましたので、ここからは「じゃあ実際にはどんな願いごとをするのが昔からの形なのか」をまとめていきます。七福神は７柱とも暮らしに近いことを見守ってくれますが、担当分野が少しずつ違います。お参りする時にその違いを意識すると、気持ちの向け方がはっきりして祈りやすくなります。
まず、日々の暮らしを整えたい時に名指しでお願いされることが多いのは恵比寿様と大黒天様です。恵比寿様は自分の力で働いて糧を得る姿の神様ですので、商い、漁業、サービス業の人々に特に親しまれてきました。にこやかな表情は「人とのご縁が上手くいきますように」という願いにも通じています。大黒天様は家の台所を守るような存在として見られてきたので、食べることに困らないように、家の中が温かく保たれるように、といった願いを託すと昔の人の感覚に近づきます。お正月の台所に大黒様のお飾りをそっと置く地域があるのは、そのためです。
次に、前に踏み出す力や勝負どころで助けて欲しい時に向いているのが毘沙門天さまです。武具をまとった姿そのままに、守りを固めたり、ここ一番で負けない力を授けてくれると考えられてきました。勉強や仕事で「結果を出したい」「守りに徹したい」という場面でもお願いしやすい神様です。元々は仏法を守る役目があったので、道を踏み外したくない時にも心強い存在になります。
芸の道や、人に何かを伝える仕事に就いている人なら弁財天様を思い浮かべると分かりやすいでしょう。琵琶を抱いている姿が象徴するように、音、言葉、表現する力をやさしく後押ししてくれる神様です。水辺の神様としての一面もあるので、流れるように物事が運ぶように、と願うのも昔ながらの祈り方です。女性の守り神としての側面もあり、家庭円満の願いを添えることもあります。
さらに年齢を重ねてきた方が大切にしてきたのが、福禄寿様・寿老人様・布袋様の三柱です。福禄寿様は名のとおり「幸福・身分の安定・長い命」をひとまとめにしたような神様ですので、家族揃って穏やかに暮らしたい時にぴったりです。寿老人さまは長生きと自然との調和を表すので、「病気を遠ざけたい」「無事に歳を取りたい」という願いが似合います。布袋様はふくよかな笑顔で人の心を緩めてくれる存在として描かれますから、人付き合いを円満にしたい時や、職場・家庭の空気を明るくしたい時に思い浮かべると良いでしょう。お腹を出して笑っている姿は「細かいことに捉われ過ぎなくていいよ」という励ましにも見えます。
こうして見てみると、七福神はそれぞれが違う願いを受け止めながら、全体としては「暮らしを整える」という一点に向かっています。だからこそ、江戸時代の人々は７柱をまとめてお参りする風習を好んだのだと考えられます。一人に全部をお願いするのではなく、「このことはこの神様、このことはあの神様」と分けて考えると、昔の人の感覚に近づきますし、物語としても頭に残りやすくなります。
次の章では、この７柱をすばやく口に出来るようになるちょっとした覚え方をまとめていきます。お正月や行事の時に家族で披露できるようになれば、それだけで話題になりますよ。
第４章…１分で覚える「は・ひ・ふ・へ・ほ」式の七福神おぼえ歌
ここまでで七福神それぞれの顔ぶれと役割が分かりましたので、いよいよ「すぐ口に出せるようにする」段階に入りましょう。昔からある語呂あわせを少しアレンジすると、本当に１分と掛からずに言えるようになります。ここでは、「海老で鯛を釣るご老人」から始まる覚え方を、より分かりやすく整理してお伝えします。
まず入口として置きたいのが、恵比寿様と大黒天様、そして長寿の神様である寿老人さまの３柱です。日本での知名度が高く、姿が思い浮かびやすいからです。この３柱をまとめて「海老で鯛を釣るご老人」として覚えてしまいます。海で釣りをするのが恵比寿様、鯛を手にしているのとセットで大黒天様、そこに「ご老人」という言葉をくっつけて寿老人さま。ここまでをひと息で言えるようになると、後の４柱がとても覚えやすくなります。
次に使うのが五十音のうちの「は行」です。七福神の残り４柱は、音でならべると「ひ・ふ・へ・ほ」で始まるものが多いのです。つまり「は」を除いた「ひ・ふ・へ・ほ」を順に思い出していけばよい、というわけです。
「ひ」は毘沙門天様。普段は「び」から始まる名前で呼びますが、ここでは音合わせのために「ひ」の位置に置いてしまいます。甲冑姿の勇ましい神様がここです。
「ふ」は福禄寿様。名前の最初が「ふ」なので、そのまま素直に当てはめることができます。長い頭と白い髭を思い浮かべてください。
「へ」は弁財天様。こちらも本来は「べ」ですが、同じく音の並びを優先して「へ」のところに入れます。琵琶を抱いた紅一点の神様ですね。
「ほ」は布袋様。大きな袋と丸いお腹で描かれる、あのにこにこした和尚様がここに入ります。ここまでで４音使いましたから、「海老で鯛を釣るご老人」＋「ひ・ふ・へ・ほ」でちょうど７柱が揃う仕組みになっています。
少しリズムをつけると、こんな感じです。
海老で鯛を釣るご老人
ひ・ふ・へ・ほで七福神
声に出すと拍が揃いやすく、子どもさんや高齢の方にも伝えやすい形になります。家族でお正月の準備をしている時や、寺社巡りの記事を書いている時などに、このリズムを挟むと場面が和みます。
もう一歩だけ詳しく覚えたい人へのヒント
もしここまで覚えられたら、プラスして「どの神様がどの国に由来するか」を重ねて覚えるのもお勧めです。日本らしい恵比寿さま、中国風の福禄寿さまや布袋さま、インドにルーツを持つとされる弁財天様や毘沙門天様。こうした背景を少し添えておくと、文章にした時にも厚みが出て、読み手にとって「なるほど」と感じる説明になります。
大事なのは、７柱を完璧に順番通り暗記することよりも、「この神様はこんな姿で、こんな願いを聞いてくれる」というイメージがすぐに浮かぶようになることです。音の並びと姿の印象をセットにして、生活の中で何度か口にしてみてください。そうすると自然に頭の中で繋がっていきますよ。
[広告]まとめ…お正月だけじゃない七福神との付き合い方
七福神というと、お正月の宝船や縁起物のイラストで見かける存在、というイメージが強いかもしれません。けれども実際に辿ってみると、七福神は日本・中国・インドと多くの土地の信仰が合わさって出来た、とても大らかな「福のグループ」でした。時代ごとに人々が「この神様も入れたい」「こんなご利益も欲しい」と少しずつ形を整えていった結果、家のこと、仕事のこと、長生きのこと、人付き合いのことまで、生活で気になるところを一通りカバーしてくれる７柱に落ち着いたわけです。
しかも、どの神様も姿がはっきりしているので、名前を覚えてしまえば街で見かけた時にすぐ分かります。釣り竿と鯛を抱えていたら恵比寿様、米俵と小槌なら大黒天様、琵琶を持っている美しい姿なら弁財天様、といった具合です。寺社巡りの記事や、年中行事を紹介する文章を書く時にも「この場面にはどの神様が似合うか」を添えてあげると、読み手の頭の中に情景が浮かびやすくなります。
また、４章でご紹介した「海老で鯛を釣るご老人 ひ・ふ・へ・ほで七福神」という覚え方は、ご家庭や施設でのお話ネタとしても使いやすい形です。お正月のレクリエーションや、子どもさんへの説明など、さっと口にできる一言があると話題が繋がります。七福神は堅苦しいものではなく、「目出度いことを皆で分け合おう」という気持ちから広まったものですから、どうぞ気軽に使ってみてください。
これから年末年始の記事を書いたり、地域の行事を紹介したり、寺社の写真を載せたりする時には、今回まとめた由来や役割をそっと忍ばせてみてください。読む人にとって「知っているようで知らなかった」部分が１つあるだけで、その記事はグッと読みごたえのあるものになります。
七福神は、知れば知るほど人に話したくなる題材です。どうぞこのまま活用して、季節の記事作りに生かしてみてくださいね。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
[ 応援リンク ]
[ ゲーム ]
作者のitch.io（作品一覧）
[ 広告 ]
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。