年末年始を繋ぐお便り作り企画~施設で楽しくご挨拶準備~

[ 12月の記事 ]

はじめに…年末年始は“繋がり”を形にする良いタイミング

年末からお正月にかけての時期は、普段はなかなか会えない人の顔をふと思い出す季節です。ご本人もご家族も「元気でいるよ」と伝えたい気持ちはあるのに、道具を揃えたり文字を書いたりするとなると、年を重ねるほど少しハードルが上がってしまいます。そこで施設やデイサービスの場で、皆で一緒に作ってしまおう、というのが今回のお話です。

昔は手紙や葉書でのやりとりが当たり前でした。けれど高齢になると、手が震える、細かい字が見えづらい、必要な用紙を買いに行けない、送り先の住所が見つからない……と、ちょっとしたことで手が止まってしまいます。これは「やる気がない」わけではなく、環境さえ整えばきちんと取り組める方がとても多いのです。だからこそ、職員さんが段取りを作ってあげると、一気に参加しやすくなります。

年末年始に作るお便りは、誰かとのご縁を「まだ続いていますよ」と伝える合図になります。中には、しばらく会えていない友人や親戚に送りたい、入院している兄弟に季節の挨拶を届けたい、という方もおられるでしょう。施設で皆と一緒に作ることで「自分だけじゃないんだ」という安心感も生まれますし、作品として仕上がるので達成感も残ります。

この記事では、葉書やちょっとしたポチ袋など、年末年始らしい小さな制作物をテーマにします。難しい作業はできるだけ職員さん側で下拵えしておき、利用者さんには「押す」「貼る」「書き添える」といった楽しい部分を担ってもらう形を目指します。そうすれば、手先の運動にもなり、季節の行事にもなり、そして何より「思いを届ける」場面を作ることが出来ます。

この後の章では、どうしてこの時期にお便り作りが向いているのか、どうすれば無理なく準備できるのか、書類や報告として残す時の考え方などを順番にまとめていきます。施設ならではのアイデアとして、是非、取り入れてみてくださいね。

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第1章…何故お便り作りが高齢者の年末年始レクに向いているのか?

年の暮れからお正月にかけては、普段より少しだけ「ご挨拶の力」が強くなる季節です。今年も無事に一年を終えられたこと、まだお付き合いを続けたいと思っていること、遠くにいる家族に元気でいると伝えたいこと――こうした気持ちは、言葉にして形にして届けてみないと相手に伝わりません。ところが高齢になると、その「形にする」部分だけが難しくなってしまいます。ここを施設のレクリエーションで支えてあげると、とても喜ばれる企画になります。

元々、手紙や葉書は、会えない人との間を繋ぐための道具でした。今ほど交通が発達していなかった時代は、文に思いを込めて届けるしかありませんでしたし、それを受け取った側もまた、同じように書き返すことでご縁を続けてきました。高齢者の方の人生を辿ると、この「やりとりの楽しさ」を知っている世代が多く、若い頃に職場の同僚と年賀状をやりとりしていたり、親戚一同に季節の便りを出していたりと、実は経験が豊富です。つまり「やり方を忘れているだけ」なので、場を用意してあげればすぐに思い出せるのです。

施設やデイサービスに通っていると、どうしても生活の範囲が決まってしまいます。外に出る機会が減ると、顔を思い浮かべる相手はいても、直接会いに行くことが難しくなります。そこへ「皆で年賀状を作りましょう」と声をかけると、しばらく会っていない人の顔がふと浮かびます。「この人には出しておこうかな」「今年はもう一回繋ぎ留めておこうかな」という気持ちが生まれるので、気持ちの張りが出ます。年末年始に合わせると、季節感もあって取り組みやすく、家族にも説明しやすいのも利点です。

もう1つ大きな意味があります。字を書く、構図を考える、スタンプを押すといった作業は、手指や腕を細かく動かす練習になります。葉書は小さな紙ですから、ゆっくり丁寧に作ろうとすると自然に集中しますし、「失敗したくない」という気持ちが程良い緊張になって、注意力も高まります。普段の体操や塗り絵とは違って、「送りたい相手がいるから作る」という目的がはっきりしているので、取り組みやすさがグンと上がります。

そしてこの企画には、職員さんにとっての良さもあります。1つ1つの作業はこまごましていますが、内容そのものは季節の挨拶なので説明しやすく、行事予定にも組み込みやすいのです。お便りの題材も、年賀、寒中見舞い、ちょっとしたお礼の一筆と、年末年始は使える場面がたくさんあります。同じ材料を使い回しても「季節の物を作っている」という体裁が保てるので、何回かに分けて行っても飽きにくいのです。

このように、年末年始のお便り作りは、会えない相手とのご縁をもう一度結び直せる、手先と頭の体操になる、行事として無理なく説明できる、という三つの理由で高齢者向けの場にとても良く馴染みます。次の章では、この良さを損なわないようにしながら、作業を出来るだけ簡単にする工夫をお話ししていきます。


第2章…スタンプと下拵えで誰でも作れる制作会にする方法

年末年始のお便り作りを成功させるコツは、いきなり利用者さんに「はい、書いてください」と渡さないことです。字を書くのが得意な方はほんの一部で、殆どの方は「失敗したらどうしよう」「集中が続くかな」と心配を抱えています。ここを職員さん側で予め整えておくと、当日は「押すだけ」「貼るだけ」「一言添えるだけ」の楽しい時間になります。

まず表側、つまり宛名部分は職員さんが事前に整えておくと安心です。施設のパソコンやタブレットで住所を入力しておき、当日の前に印字しておけば、利用者さんは名前を確認するだけで済みます。高齢の方は小さな文字を長く書き続けると手が震えやすいので、ここは無理をさせないのがポイントです。個人の住所情報を扱うので、印字後はすぐに回収して保管する、共有の機器に残さない、といったひと手間を加えておくとより安全です。

次に裏側です。ここは一番楽しい部分なので、時間をかけて準備しておくと場が盛り上がります。市販のスタンプや、職員さんが手作りした消しゴム判子をいくつか用意し、色インクも2~3色並べておきます。「賀正」「今年もよろしくお願いします」といった文字スタンプをひとつ、「梅」「松」「だるま」「鏡もち」など季節の絵柄をひとつ、「ワンポイントの模様」を1つ、というように、組み合わせれば一枚の面が完成するようにしておくと失敗しづらくなります。押す位置の目安を薄く鉛筆で書いておくと、腕の力が弱い方でも綺麗に仕上がります。

こうした準備をしておけば、利用者さんは好きな柄を選んで押すだけで済みます。絵柄を押した後に、1行だけ自分の言葉を足してもらうと、世界に1枚だけの挨拶になります。例えば「寒いけど元気にしています」「いつもありがとう」「また会えるといいですね」など、短くても気持ちは伝わります。文字が苦手な方には、職員さんが下書きをしてあげる、見本カードを並べる、といったサポートを付けてあげると、恥ずかしさが和らぎます。

準備段階でもう1つ大切なのは、材料の扱いを最初に説明しておくことです。葉書代をどうするか、インクやスタンプを施設で用意するか、ご家族から集めるか、というお金周りのところは、案内文を作っておくと後がスムーズです。案内文の下半分を同意欄にしておき、利用者さんやご家族に署名をいただいて回収し、上半分はお渡ししておけば「この日にこういう制作をします」ということが伝わります。事前に了承を得ておけば、当日は作ることだけに集中できます。

実際の制作日には「今日はお正月に送る葉書を作ります」「家族やお友達を思い出しながら押してみましょう」と、雰囲気のある声掛けをすると気持ちが乗ります。完成した物はすぐに見えないところに置かず、机の端に並べておくと「わぁ、綺麗」「私ももう1枚やってみようかな」と参加の輪が広がります。失敗したと感じた物も、シールやマスキングテープを少し足すだけでぐっと華やかになるので、「大丈夫ですよ、一緒に飾りましょう」と声を掛けてあげると手が止まりません。

このように、職員さんが重たいところを前もって持っておき、利用者さんには楽しいところだけを担当してもらう形にすると、制作会はとても穏やかで賑やかな時間になります。次の章では、このやり方を施設全体の流れにきちんと残すための工夫をお話しします。


第3章…職員さんの手間を軽くする進め方と同意の取り方

年末年始の制作レクは、とても微笑ましくて利用者さんにも喜ばれますが、裏側では細かい準備や確認がついて回ります。特に、挨拶用の葉書に住所や名前といった個人の情報がのる場合、後から「聞いていませんでした」とならないように、企画の段階で筋道をつけておくことが大切です。ここでは、現場で働く方が無理なく進められるように、企画書の考え方と同意のもらい方をまとめておきます。

まず企画書です。難しいものにしなくても大丈夫ですが、年末年始という季節の行事であること、手先を使った作業であること、交流の切っ掛け作りであることの3点は入れておくと目的が伝わりやすくなります。高齢の方の場合、作業そのものがリハビリに近い意味を持ちます。スタンプを押す、絵柄を選ぶ、一言を書き添える――こうした一連の流れは細かな動きと集中力を必要とするので、「手指の活性」「集中の維持」「回想の機会の提供」といった言い回しで記しておくと、ご家族にも施設内にも説明しやすくなります。

次に、住所や宛名を職員さんが代行して整える場合の同意です。案内文をA4で1枚作り、上半分には「〇月〇日に年始の挨拶用葉書を制作します」「裏面は利用者様と一緒に作成し、表面の宛名は職員が印字します」といった説明を書きます。下半分にはご本人またはご家族が署名できる欄を作っておき、切り取りやすいようにしておきます。これなら、説明文はご家庭に残り、同意欄だけ施設に戻ってくる形になります。事前にこうしておけば、当日に職員さんが迷うことはありません。

さらに、どの住所を使うのかという点も軽く触れておきましょう。普段、連絡のある親族に送るのか、しばらく会っていない旧友に送るのかで、用意する宛名が変わります。利用者さんが思い出せるように、制作の日より前に「送りたい人の名前を書いておいてください」とメモ用紙を配っておくと、当日は作品作りだけに集中できます。思い出した順に書いてもらえばいいので、たくさん書けた方には複数枚作っていただくこともできますし、「今年はこの1枚だけでも出したい」という方にも対応できます。

報告書も忘れずに残しておくと、次の年が楽になります。制作の様子を1カットだけ写真に撮っておき、参加人数、完成した葉書の枚数、大まかな感想を1行ずつ記録しておけば十分です。もし返信が届いた場合は、時期と枚数を控えておき、翌年の冬に「昨年はこのくらいお返事がありました」と添えると、活動の効果が分かりやすくなります。返信が多かったご利用者さんは「また出したい」と意欲が高まりますし、少なかった方でも「今年も出しておこう」と前向きになりやすいものです。

このように、説明文と同意欄を一つにまとめておくこと、企画書に目的を先に書いておくこと、そして写真と数字を少しだけ残しておくこと。この3つを押さえておけば、職員さんの手間は最小限で済みますし、「今年もやりましょうか」と言いやすくなります。次の章では、せっかく作ったお便りをその場限りにせず、人と人のやりとりに広げていく工夫を見ていきます。


第4章…完成したお便りを交流や回想に繋げるひと押しをするアイデア

せっかく年末年始らしいお便りが出来上がっても、「作って終わり」になってしまっては少しもったいないですよね。ここからもう一歩進めて、人とのやりとりや昔話の切っ掛けに広げていくと、制作レクが生活の中に根付きます。年の変わり目は話題が豊富なので、ほんの少し仕掛けを足すだけで会話が増えますし、ご家族にも活動の雰囲気が伝わります。

まずお勧めなのは、完成品を一度、皆で眺める場を作ることです。同じスタンプを使っても押す場所が違えば雰囲気が変わりますし、書き添えるひと言にも個性が出ます。机の端に並べて「今日はこんなに出来ましたよ」と見せると、「この色綺麗ね」「この言い回し、私も借ります」といったやりとりが自然に生まれます。作品を褒められると、次も作ろうという気持ちになりますから、ここは丁寧に時間をとってあげると良いところです。

もう1つ効果的なのは、送り先について話す時間を入れることです。「この方とはどんなお付き合いでしたか」「どのくらい会っていないですか」と静かに聞くと、若い頃の職場の話、子育てや親の介護で会えなくなった話、地元を離れてしまった話など、たくさんの思い出が出てきます。これは回想の機会にもなりますし、職員さんがその方の背景を知る切っ掛けにもなります。内容によっては、次の活動で写真を見ながら語る会や、同世代の思い出話の会に発展させることもできます。

ご家族との連携を取りたい場合は、出来上がったお便りを写真に撮って、面会時や連絡帳でそっとお伝えすると喜ばれます。「今年はご本人がこんな挨拶を作られました」と一言添えるだけで、ご家族は年末年始の投函を手伝いやすくなりますし、遠方の親戚にも「元気で作っていましたよ」と知らせることができます。施設内に掲示できる場合は、個人名や住所が分からないように一部を隠して飾っておけば、行事の成果としても見せられます。

また、冬の挨拶は返事がゆっくり届くことが多いので、2月頃に「お返事が届いた方は持ってきてください」と声をかけておくと、活動が長続きします。届いたお便りを皆で見せ合いながら「昔の同僚から来た」「今年もよろしくと言ってもらえた」と話す時間を作ると、年末の制作とちゃんと繋がります。1枚でも返ってくると達成感がグッと増しますし、来年もやってみようという前向きな気持ちが育ちます。

こうした小さなひと押しを積み重ねていくと、単なる工作ではなく「人と人の挨拶を取り次ぐ活動」になります。季節の行事としても説明しやすく、利用者さん本人にとっても意味のある時間になりますから、どうぞ一連の流れとして取り入れてみてくださいね。次は全体を通してのまとめに入ります。

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まとめ…言葉を届けることは気持ちを届けること

年末年始は、1年を振り返って「この人には挨拶をしておきたいな」と思い出す時です。けれど高齢になると、道具を揃えることや、文字を綺麗に書くこと、投函の段取りを考えることが少しずつ難しくなっていきます。そこで施設やデイサービスの中で皆と一緒に作る形にしてあげると、手が止まっていた方も「これならできる」と前向きに取り組めます。今回ご紹介した流れは、そのためのちょっとした背中押しです。

第1章でお話しした通り、葉書やお便りは、会えない相手とのご縁を細く長く繋ぐ道具です。季節がはっきりしている冬の挨拶と組み合わせると、「まだ覚えていますよ」「またお付き合いしましょう」という気持ちを優しく伝えられます。第2章では、その気持ちを形にしやすくするために、職員さんが前もって表面を整えておくこと、裏面はスタンプや一言で完成するようにしておくことをお伝えしました。難しいところを先に済ませておけば、当日の制作は楽しいところだけになります。

第3章では、利用者さんやご家族に安心して参加してもらうための段取りを書きました。事前の案内と同意欄を1枚の紙にまとめておくだけで、個人のあて名を扱う場面も落ち着いて進められますし、写真や枚数を記録しておけば次の年の準備がとても楽になります。第4章では、出来上がったお便りを皆で眺めたり、送り先の思い出を聞いたり、届いた返事を持ち寄ったりと、活動を交流に広げる工夫をご紹介しました。こうして少しずつ広げていくと、「作るだけ」で終わらず、人と人の関係に温かさが戻ってきます。

紙とは不思議なもので、手に取った時の重みや色合いで、その場にいない相手の顔を思い浮かべることができます。高齢の方にとっては、それが生きてきた年数を確かめる時間にもなりますし、「まだ誰かと繋がっている」という自信にもなります。ぜひ年末年始の行事の1つとして、お便り作りを組み込んでみてください。季節の彩りと、人を思う気持ちが、きっとその場を柔らかくしてくれます。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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