煤払いの日から始める高齢者の大掃除術~順番と断捨離のやさしいコツ~
目次
はじめに…12月13日の煤払いと高齢者の大掃除を考える
毎年、師走が近づくと、なんとなく家の中の埃や散らかった物が気になってきますよね。とくに12月13日は、昔から「煤払い」と呼ばれ、新しい年を迎える準備を始める節目の日とされてきました。神社やお寺では本堂の高い梁や天井の埃を落とし、清らかな気持ちで歳神様をお迎えするための大切な行事が行われます。
今の住宅では、囲炉裏の煙で真っ黒になった天井こそありませんが、換気扇やエアコン、窓やサッシの溝など、気づけば汚れが溜まっている場所がたくさんあります。年末ギリギリになってから一気に片付けようとすると、若い世代でもグッタリしてしまうのに、高齢の方や介護が必要な方にとっては大きな負担になりがちです。
一方で、高齢の方ほど「お正月くらいはきちんとした家で迎えたい」「昔からの決まりごとは大事にしたい」という思いを強く持っておられることも少なくありません。きちんと片付いた部屋や整った玄関は、体だけでなく、心にも大きな安心感をもたらしてくれます。
そこで大切になるのが、「いつから始めるのか」「どこから手をつけるのか」「どこまでやれば十分なのか」という、段取りと優先順位の付け方です。特に高齢者世帯では、家具や小物の位置が変わり過ぎると戸惑いや躓きの原因にもなりますし、思い出の品を勢いで処分してしまうと、後から深く後悔してしまうこともあります。
この記事では、昔ながらの煤払いの意味を踏まえつつ、高齢者の暮らしに寄り添った大掃除の考え方をお伝えしていきます。物の少なかった時代の知恵から今に生かせるポイント、安心して取り組める掃除の順番、断捨離との付き合い方、そして一人で抱え込まない工夫まで、順を追ってご紹介していきます。
「全部、綺麗にしなければ」と気負うのではなく、「今年も元気にここで暮らせたね」と振り返りながら、必要な場所だけを丁寧に整えていく。そんな優しい大掃除の形を、一緒にイメージしていきましょう。
[広告]第1章…物の少ない時代から学ぶ高齢者の大掃除の価値観
今の私たちの暮らしは、家の中をグルリと見渡すと、棚や引き出し、押し入れの奥まで物でいっぱい、というお宅も少なくありませんよね。けれど、今の高齢者の方が子どもの頃を思い浮かべると、当時の家の中は、今よりずっと物が少なく、暮らしの道具も必要最低限しかないのが当たり前でした。
囲炉裏や竈を囲む板間、煤で黒くなった柱や天井、紙の障子や襖、藁やいぐさの香りがする畳や布団……。年の瀬の大仕事といえば、まずは家の四隅に溜まった埃と煤を落とし、障子や襖を張り替え、畳や布団を外に干すこと。玄関を掃き清め、履物を揃え、最後に新しい年を迎える飾りを整えていく、そんな流れがごく自然な「大掃除」の姿でした。
物が少なかったからこそ、「掃除=家そのものを整えること」という感覚が強く、片付けといっても収納の工夫より、「汚れを落とす」「場を清める」という意識が中心です。この感覚は、今の高齢者の方の心のどこかに、しっかり根付いています。
一方で、現代の家は家電も家具も小物も多く、掃除を始めるとどうしても「物を動かす」「仕舞い直す」場面が増えてしまいます。ここで、若い世代の感覚だけで一気に模様替えをしてしまうと、高齢者の方にとっては、却って暮らし難くなることがあります。
例えば、耳かきや爪切り、常備薬、メモ帳やボールペンなど、日常的によく使う小さな物たち。本人にとっては、何十年もかけて「ここにある」と体で覚えてきた場所があります。それを大掃除の勢いであちこち入れ替えてしまうと、「あれ? どこにいったんだろう?」という小さな戸惑いが、何度も何度も積み重なってしまいます。
高齢になると、ちょっとした物忘れでも「もしかして、自分はおかしくなってきたのでは?」と、不安を抱きやすくなります。そこへ身近な家族から「ちゃんとしまっておいてよ」「また忘れてる」といった言葉が重なると、自信をなくし、「自分はもうダメだ」と気持ちが沈んでしまうこともあります。
だからこそ、高齢者の大掃除では、次のような考え方がとても大切になります。
・細かい物ほど、置き場所を大きく変えない
・いつもの定位置を、より分かりやすく、取り出しやすく整える
・見た目より「安全さ」と「使いやすさ」を優先する
パッと見ただけでは「何も変わっていない」ように見えるかもしれませんが、実はここが大事なポイントです。見た目を劇的に変えるのではなく、「いつもの暮らし」を守りながら、その中の清潔さや安全性を底上げしていく。これが、高齢者の暮らしに寄り添った大掃除の土台になります。
外観については、昔ながらの価値観も上手に取り入れると良いでしょう。庭の落ち葉を集める、玄関周りの埃を払う、表札やポスト、門扉を綺麗に拭く。こうした「家の顔」の部分は、年始の挨拶に来る親族や来客だけでなく、「新しい年の神様を迎える準備」という意味合いも重なって、年長の世代にとってはとても大切な場所です。
家の外は、ほど良く見違えるくらいに明るく整え、中は大きく変え過ぎずに清潔を高める。このバランス感覚が、「昔ながらの煤払い」と「今の暮らし」を繋ぐ鍵になります。
そして何より、「片付けられていないからダメ」なのではなく、「ここまで整えられた自分はエライ」と感じてもらえるような大掃除であることが大切です。高齢者の方の人生の歩みに敬意を払いながら、「今年もよく頑張ったね」と声をかけ合えるような大掃除の形を、まずこの第1章でイメージしておきましょう。
第2章…どこから掃除する?高齢者宅ならではの安全な順番と段取り
大掃除というと、「家中の全部を一気に綺麗にする」というイメージが強いかもしれません。けれど、高齢者のいるお宅では、その考え方を少し柔らかくして、「負担をかけずに、でも気持ち良く新年を迎えられる順番」を意識することが大切です。
まず最初にやっておきたいのは、「いきなり汚れ落としに入らない」ということです。雑巾や洗剤を持つ前に、机の上や床周りに出しっ放しになっている物を、いつもの定位置に戻していきます。毎日使うリモコン、眼鏡、薬、文房具、小さな書類など、「良く使う物」から先に整えていくと、高齢の方も安心して様子を眺めていられます。
この時の合言葉は、「捨てる前に、まず元の場所へ」です。まだ壊れていない物や、普段良く使っている物を、この段階で無理に減らそうとしないことがポイントになります。あくまで、「片付け」と「掃除」を分けて考えるイメージです。
次に考えたいのは、「どの順番で進めると、体の負担が少ないか」という視点です。昔から、掃除は上から下へ、家の奥から手前へ、といわれます。これは、上の埃が下に落ちてくること、家の奥を先に済ませておくと、後で通り道が確保しやすくなることなど、合理的な理由があります。
高齢者のいるお宅では、そこに「安全」と「休憩しやすさ」の視点を足していきましょう。例えば、次のような流れです。
まずは、普段あまり動かさない場所から、ゆっくり始めます。高い所の作業は、脚立や台に乗る必要があり、とても危険ですから、高齢者本人にさせないことが大原則です。家族や手伝いの人がいる場合でも、無理に手を伸ばす作業は控え、届く範囲での埃取りに留める方が安心です。
部屋ごとに区切る場合は、「歩く通路」と「休む場所」を先に確保しておくと、転倒予防に繋がります。細々した物を床に広げて片付け始めると、つい足の踏み場が無くなりがちですが、高齢の方にとっては、それだけで大きな危険になります。通路には物を置かない、ソファや椅子は最後まで座れるようにしておく、というだけでも、だいぶ動きやすさが変わります。
一日の中での時間帯も大切です。午前中の、体力が残っている時間に掃除をして、午後はゆっくり休む。あるいは「午前は台所周り、午後は玄関周り」というように、短めの単位で区切っておくと、高齢者自身も、「ここまでできた」と達成感を味わいやすくなります。
水周りの掃除は、滑りやすさに注意が必要です。台所、浴室、洗面所、トイレなどは、床が濡れると転倒の危険が高まりますから、高齢者の方には無理をさせず、家族や手伝いの人が中心となって作業を進めます。掃除の最中も、必ずスリッパを脱いでいる場所と履いている場所をはっきり分けたり、「今ここは濡れているよ」と声をかけ合ったりすることが大切です。
掃除の順番としては、ざっくりと次のような考え方が目安になります。
家の中では、よく使う場所から取りかかると、終わった後の気持ち良さが違います。例えば、居間と寝室、トイレと洗面所。この4つがある程度整っているだけでも、「今年も何とか形になったね」と思えるご家庭は多いのではないでしょうか。逆に、あまり使わない納戸や物置は、年によっては「今年は手をつけない」と割り切ってしまっても構いません。
室内がひと区切りついたら、最後に玄関と勝手口へ進みます。高齢者の方にとって、玄関は「外の世界と繋がる場所」です。靴を揃え、箒で掃き、水拭きで綺麗に整えると、「また来年も、ここから出かけよう」という前向きな気持ちが生まれやすくなります。玄関が明るくなると、来客を迎える側の表情も、自然と柔らかくなります。
そして、庭やベランダ、家の外回りは、体力や天候と相談しながら、「出来る年だけ、出来る分だけ」で十分です。無理に完璧を目指さず、「今日はここまで」「来週はあそこ」と日にちを分けて取り組むことで、高齢者の方にも、手伝う家族にも、心と体に余裕が生まれます。
大掃除の順番に、絶対の正解はありません。ただ1つ言えるのは、「住んでいる人が、安心して暮らせる形になっているかどうか」が一番大切だということです。キラキラ輝くモデルルームのような家よりも、いつもの暮らしが少しだけ楽になって、躓きにくくなって、ホッとできる場所が増える大掃除。それを意識して、順番と段取りを決めていきましょう。
第3章…高齢者と断捨離~思い出と御縁を守る物との付き合い方~
大掃除の話になると、今の世の中では「断捨離」という言葉がよく聞かれますよね。物を減らして身軽に暮らすことは、とても気持ちの良い面もありますし、若い世代にとっては前向きなライフスタイルの1つと言えるかもしれません。
ところが、高齢者の暮らしにそのまま当てはめてしまうと、心の中に大きな穴をあけてしまうことがあります。長い年月を生きてこられた方にとって、家の中にある物は、単なる所有物ではなく、「その時代を一緒に過ごしてきた仲間」のような存在になっていることが多いからです。
若い家族から見れば、「古い服」「色あせた写真」「いつ使うのかわからない食器」に見える物も、持ち主にとっては、子育てに熱中していた頃の記憶や、もう会えなくなった人との時間を思い出させてくれる大切な手掛かりです。手に取るだけで当時の空気や音まで甦るような物を、「もう使わないから」と一度に手放してしまうと、その人の人生の一部をちぎり取ってしまうような結果になりかねません。
また、高齢になると、「いつか自分がいなくなった後に、家族が困らないように」と、身の回りを整えたいという気持ちが自然と芽生えてきます。いわゆる終活の一環として、物を減らしたくなる心境は、とても真っ当なものです。ただ、その気持ちに勢いがつき過ぎて、後から「どうして捨ててしまったのだろう」と後悔する方も少なくありません。
そこで大切なのは、「何を減らすか」ではなく、「何を残すか」に視点を切り替えることです。
まず、明らかなゴミや壊れてしまった物、危険な物から手を付けます。もう点かない古い照明器具、サビだらけの調理道具、劣化したコード類などは、そのまま置いておくと転倒や火事の危険に繋がることもあります。こうした物を優先して片付けることは、「捨てる」行為というより、「身を守るための準備」ですから、高齢者の方にも理解してもらいやすい領域です。
一方で、アルバムや手紙、記念品、趣味の道具など、思い出と強く結びついている物は、簡単に結論を出さないことが大切です。「捨てるか残すか」の二択ではなく、「見返しやすく整える」という選び方もあります。例えば、引き出しにギュウギュウ詰めになっている写真を、何冊かのアルバムに分けてまとめ直すだけでも、その人にとっては大切な時間を丁寧に扱ったことになります。
家族が手伝う場合は、「これはもういらないでしょ?」と問い詰めるのではなく、「これはどんな時の写真?」「これは誰からもらったの?」と、物を切っ掛けに話を聞いてみるのが良いでしょう。語ってもらうことで、その品物の位置付けがはっきりしてきます。「これは、孫が小さい頃に一緒に行った旅行ね」「これは、もう顔も思い出せない人のだから手放してもいいかも」など、本人自身が気持ちの整理をしていけるからです。
どうしても迷う物は、「保留ボックス」を用意して、一端、そこに集めておくという方法もあります。箱の蓋に「また来年の大掃除で見直す」と書いておけば、その場で無理に結論を出さずに済みますし、高齢者の方も「全部今決めなくていい」と思えるだけで、心がグッと軽くなります。
もう1つ大事な視点は、「人との御縁が詰まっている物を、どこか1つでも残す」という考え方です。例えば、長年勤めた職場の記念品が大量にある場合には、全部を残すのではなく、「一番嬉しかった物を1つだけ選ぶ」。ずっと一緒にいたペットの物なら、首輪や写真、足跡の残った物など、「見るだけで思い出が甦る物」を手元に置く。そんな風に、「象徴になる物」を選ぶことで、持ち物の数を減らしつつ、記憶の「よすが」はしっかり守ることができます。
断捨離という言葉には、「軽やかに生きる」という明るい響きがありますが、高齢者の暮らしにとっては、「今までの人生を、もう一度丁寧に味わい直す時間」として捉え直すことが大切です。物を減らすかどうかよりも、その過程でどれだけ笑いながら話せるか、どれだけありがとうと言い合えるかの方が、心の健康にはずっと大きく影響します。
大掃除の中で、物との付き合い方を見直すことは、自分の歩んできた道程を優しく振り返る作業でもあります。「これは、よくここまで一緒にいてくれたね」「これは、役目を終えたから、そろそろさようならしようか」。そんな会話を重ねながら進めていくと、部屋の中だけでなく、心の中まで少しずつ整理されていきます。
高齢者の大掃除における断捨離は、「スッキリした部屋を目指す」ことが目的ではありません。その人の人生と御縁を尊重しながら、「これからも安心して暮らしていくために、何を側に置いておきたいのか」を一緒に考える時間そのものが、一番の宝物になります。
第4章…一人で頑張らない大掃除~家族・地域サービスとの上手な分担~
高齢者の大掃除で、一番避けたいのは「気持ちは若い頃のまま、体はついてこない」という状態で無理をしてしまうことです。「まだまだ自分でできる」と頑張り過ぎて、腰や膝を痛めたり、転倒して入院になってしまっては、本末転倒ですよね。大掃除は、一人で完走するマラソンではなく、「誰と、どこまで分け合うか」を考えるチーム戦だと思っておくと安心です。
まず考えたいのは、家族との分担です。同居している家族がいれば、役割を大まかに決めてしまいましょう。例えば、「高い所や重い物は若い人」「どこをどの順番で掃除するか決めるのはご本人」というように、それぞれの得意分野を生かすイメージです。高齢者の方には、「指揮官」として全体を見渡してもらい、「ここは残しておきたい」「ここは綺麗にしたい」と優先順位を伝えてもらうと、無理なく参加できます。
離れて暮らすご家族がいる場合は、「年末の帰省のついでに手伝ってもらう」という形もあります。「今度帰ってきた時、窓拭きとカーテンの洗濯をお願いしてもいい?」と、具体的にお願いしておくと、手伝う側も動きやすくなります。幼いお孫さんがいるご家庭なら、「玄関の靴をピカピカにする係」「庭の落ち葉ひろい係」など、ゲームのように担当を決めると、ちょっとしたイベントのような楽しさも生まれます。
一方で、家族だけでは手が回らない場合や、お身内が近くにいない場合もあります。その時に頼りになるのが、地域のサービスです。多くの市町村には、シルバー人材センターなど、高齢者の暮らしを支えるための仕組みがあります。庭木の手入れや窓ガラスの清掃、簡単な片付けなどを、有料ではありますが頼むことが出来るところもあります。
また、民間のハウスクリーニング業者に台所や浴室など「プロでないと大変な場所」だけをお願いする方法もあります。全部を丸投げするのではなく、「ここだけはお願いしたい」という場所を絞ることで、費用も体力も両方ともセーブできます。依頼する時は、「どこまでやってもらえるのか」「所要時間はどのくらいか」「見積もりは事前に出るか」を、電話や窓口でよく確認しておきましょう。
ここで気をつけたいのが、介護保険との違いです。ホームヘルパーさんによる訪問介護は、あくまでも日常生活のお手伝いが中心です。日々の掃除や洗濯、買い物の支援などは利用できますが、「年に1回の大掛かりな大掃除」を丸ごとお願いすることは、原則としてサービスの範囲外と考えた方が良いでしょう。「これはどこまで頼めるのかな?」と迷ったら、担当ケアマネジャーさんや地域包括支援センターに、早めに相談しておくと安心です。
ボランティア団体が、暮れの時期に「一人暮らし高齢者の生活支援」を行っている地域もあります。自治体の広報紙や地域の掲示板、民生委員さんからの情報などをチェックしてみると、「窓拭きのみ」「庭の掃き掃除のみ」など、限定的でも嬉しい助けが見つかることがあります。もちろん、地域によって事情は様々なので、「利用できたらラッキー」くらいの気持ちで情報を集めてみると良いでしょう。
大掃除を人に頼むことに、抵抗を感じる方もおられます。「人に迷惑をかけたくない」「お金を払ってまで頼むほどではない」と、つい全部自分で抱え込んでしまう方も少なくありません。でも、年齢を重ねてからの転倒や怪我は、その後の暮らしに長く影響してしまうことがあります。安全のために人の手を借りることは、甘えではなく、大事なセルフケアです。
「ここは自分で出来るから頑張る」「ここは家族にお願いする」「ここは地域のサービスに頼む」と、線引きを決めておくと、気持ちも整理されます。そして、頼んだ相手には、仕上がりの完璧さよりも、「一緒にやってくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えることが、何よりのご褒美になります。
一人で黙々と行う大掃除も悪くはありませんが、誰かと一緒に笑いながら進める大掃除は、それ自体が思い出になります。「今年もよく頑張ったね」「来年も、またここで一緒に掃除しようね」。そんな会話が交わされるなら、たとえ窓の端っこに少し拭き残しがあっても、それはご愛敬です。
大掃除は、「完璧な家」を目指す行事ではなく、「これからもこの家で暮らしていこう」という気持ちを確かめ合う時間です。一人で背負い込まず、家族や地域の力を上手に借りながら、自分にとって丁度良いバランスを見つけていきましょう。
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年の瀬の大掃除は、「家の汚れを落とす日」というだけでなく、一年間を振り返り、新しい年を迎える心の準備をする時間でもあります。とくに高齢者の暮らしにとっては、住み慣れた家をもう一度見つめ直し、「ここでまた来年も元気に過ごしたい」と願う、静かな節目と言えるかもしれません。
昔ながらの煤払いは、囲炉裏の煙で黒くなった梁や天井を清め、歳神様を気持ちよくお迎えするための行事でした。今は家の造りも道具も変わりましたが、「場を清めて、新しい年を迎える」という根っこの思いは変わっていません。その思いを大事にしながらも、高齢者の体力や生活リズムに合わせて、無理のない形に整えていくことが、現代の大掃除には求められています。
本文で見てきたように、高齢者の大掃除で大切なのは、まず物を大きく動かし過ぎないことでした。耳かきや薬、眼鏡など、暮らしを支える小さな物たちは、「どこにあるか」がそのまま安心に繋がります。見た目を劇的に変えるより、「いつもの場所を、前より少し分かりやすく、取り出しやすくする」ことが、一番の安全対策になります。
掃除の順番も、「正解」を求める必要はありません。天井から床へ、家の奥から手前へ、よく使う部屋から少しずつ。短い時間で区切りながら、「今日はここまで」と決めて進めれば、高齢者も手伝う家族も、気持ちにゆとりを持つことができます。全部が終わらなくても、居間と寝室と玄関が整っていれば、それだけで暮らしの心地良さはグッと上がります。
断捨離についても、高齢者にとっては特別な意味を持つことを忘れたくありません。物を減らすことが目的ではなく、その過程で思い出を語り合い、自分の人生を優しく振り返ることこそが、本当の狙いです。壊れて危険な物や、明らかなゴミはしっかり手放しつつ、御縁の詰まった品は、残すか保留するかを、本人の気持ちに寄り添いながら選んでいきたいところです。
そして何より、「一人で頑張らない」ことが、この先も安心して暮らしていくための大きな鍵になります。同居の家族がいるなら役割分担を工夫し、離れて暮らす子ども世帯には「ここだけ手伝って欲しい」と具体的に頼んでみる。お身内が近くにいない時には、自治体の窓口やシルバー人材センター、民間の掃除サービスなど、使える手立てを少しずつ調べておくと心強い味方になります。
大掃除は、「埃が残っているから失敗」「押し入れまで手が回らなかったから残念」というような合否のある行事ではありません。今年の自分たちなりに、出来る範囲で家と向き合い、ほんの少しでも暮らしやすくなっていれば、それだけで十分に意味があります。「ここまで綺麗になったね」「来年もまた、一緒に煤払いが出来るといいね」と笑い合えたなら、その家はもう、新しい年を迎える準備が整っていると言ってよいでしょう。
煤払いの日から始まる高齢者の大掃除は、暮らしと記憶を大事に抱きしめながら、「これからも、この家で生きていく」という小さな決意をそっと重ねる時間です。今年の年末は、完璧を目指し過ぎず、体と心にやさしい段取りで、自分たちのペースの大掃除を楽しんでみてくださいね。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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