お年寄りとお餅の幸せな付き合い方~喉詰めを防いで美味しく味わう工夫~

[ 1月の記事 ]

はじめに…お餅を諦める前に知っておきたい大切なこと

お餅は、和のおやつの中でも特別な存在ですよね。お正月のご馳走としてはもちろん、最近では通年で手軽に買えるようになり、いつでも楽しめる身近な食品になりました。特にお年寄りの中には、「お餅だけは別腹」と言いたくなるくらい、大好きな方も少なくありません。

一方で、毎年のように「お餅を喉に詰まらせた」というニュースを耳にすると、家族としては心配になります。「危ないから、もう食べないで」「軟らかい物だけにしてほしい」と声をかけたくなる気持ちも、とてもよく分かります。でも、そう言われたお年寄りの胸の内を想像してみると、楽しみを1つ取り上げられてしまったような少し寂しい気持ちになるかもしれません。

お餅には、季節の行事やご先祖様への祈りなど、日本人が大切にしてきた文化がギュッと詰まっています。昔から「ハレの日」に欠かせない食べ物として、お祝いの席や特別な日の食卓を彩ってきました。そんなお餅を、「危ないからダメ」と一言で終わらせてしまうのではなく、「どうしたら安心して楽しめるか」を一緒に考えていくことは、お年寄りの尊厳を守ることにも繋がります。

もちろん、「気をつければ絶対に大丈夫」と言い切れる食べ物ではありません。噛む力や飲み込む力がゆっくり弱っていく高齢期では、少しの油断が大きな事故に繋がることもあります。だからこそ、怖がって遠ざけるのではなく、「なぜ危ないのか」という仕組みを知り、「どんな工夫なら自分たちにも出来そうか」を落ち着いて整理しておくことが大切になります。

この記事では、お年寄りがお餅を好きな理由や、その背景にある思いを辿りながら、「なぜ喉に詰まりやすいのか」という体の仕組みを紐解いていきます。その上で、調理の仕方や食べ方の工夫、日ごろの体操や受診など、今日から少しずつ取り入れられるヒントをまとめていきます。

ご家族と暮らすお年寄りを支える方はもちろん、介護の現場で働く職員さんにも、「お餅=危険」だけではない向き合い方を見つけていただけたら嬉しいです。お餅を完全に諦める前に、出来ることを1つずつ試しながら、安心と楽しみの両方を大切にしていきましょう。

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第1章…お年寄りがお餅を愛してきた理由と心に残る「ハレの日」

今のように、コンビニやスーパーでいつでもお餅が買えるようになったのは、実はごく最近のことです。今の高齢世代が子ども時代を過ごした昭和の前半から中頃までは、お米そのものがとても貴重で、お腹いっぱい食べられるだけでもありがたい時代でした。そんな中で、つきたてのお餅が食卓に上がる日は、それだけで胸が高鳴る特別な日だったのです。

お餅は、単なる「主食の仲間」ではなく、「ハレの日のご馳走」として大切にされてきました。お正月の鏡餅、お供え餅、祝い事で振舞われる紅白のお餅……。神社仏閣へのお供えとしても欠かせず、「神様の力が宿るもの」「一年の始まりを清らかに迎えるためのもの」として、家族の皆で手を合わせる中心にいつもお餅がありました。物が少なく、楽しみも今ほど多くなかった時代だからこそ、お餅は「特別な日が来たことを知らせてくれる合図」のような存在でもあったのです。

お年寄りの中には、「子どもの頃、家族総出で餅つきをした」「竈の傍で、湯気の立つお餅を祖母が丸めてくれた」といった記憶を大事にしている方が少なくありません。臼と杵の音、湯気の匂い、きな粉やあんこの甘い香り――そうした五感の記憶が、お餅を口にした瞬間に一気に甦ります。「ああ、今年も無事に新しい年を迎えられた」「また家族と一緒に笑い合える」という安心感も、お餅の味わいに重なっているのでしょう。

また、お餅はご先祖様や目に見えない存在への「ご挨拶」の意味も担ってきました。お盆やお彼岸にお供えするお団子やお餅は、「いつも見守ってくれてありがとう」という気持ちを形にしたものです。今のお年寄りは、祀る側として長年お供えを続けてきましたが、やがて自分も祀られる側へ移っていくという感覚を、どこかで静かに意識している方もいます。だからこそ、お餅を前にして手を合わせたり、ひと口ひと口を味わったりする時間は、自分の人生と向き合う大切な儀式にもなっているのです。

食べ物としてのお餅にも、独特の魅力があります。ひと噛みごとに伸びて、歯応えがあり、ゆっくりと口の中で広がるお米の甘み。噛むたびに「生きている実感」が増すような、どっしりとした存在感があります。戦後の厳しい時代をくぐり抜けてきた世代にとって、「しっかり噛んで味わう食べ物」は、生きる力そのものと結びついた感覚があるのかもしれません。柔らかくて飲み込みやすいものばかりでは物足りず、「少し大変でも、これを食べられる自分でいたい」という思いが、お餅への愛着を支えていることもあります。

家族の場面を思い浮かべてみると、その意味はさらに大きく感じられます。お正月に子どもや孫が帰省し、台所では誰かが野菜を切り、誰かが汁物を用意し、その傍らでお餅が焼かれている。焼き色がついて膨らんでいく様子を一緒に眺めながら、「きな粉にする? お雑煮がいい?」と会話が弾む。こうした時間は、お餅そのものよりも、「皆で同じものを分け合う」という温かさを強く残してくれます。お年寄りにとって、お餅は「家族が一つの食卓を囲む象徴」と言っても良い存在なのです。

介護の現場でも、お餅やお餅風のメニューは、季節感を演出する大事なアイテムとして登場します。例えば、飲み込みに配慮したお雑煮風の汁物や、お餅の代わりにやわらかい団子を使ったおやつなどです。「昔は家でね……」と語り始める切っ掛けになったり、「今年もこうして味わえるんだ」という喜びの表情を引き出したりする力があります。そこには、「危ないから全てやめてしまう」のではなく、「どう形を変えれば、その人らしい楽しみを守れるか」という大切な視点が含まれています。

お年寄りがお餅を好きなのは、「味が好みだから」という一言ではとても片付けられません。子ども時代の思い出、家族と過ごしてきた時間、ご先祖様への祈り、自分の人生を支えてきた価値観――たくさんの要素が折り重なって、「お餅が好き」という一つの言葉になっています。だからこそ、「危ないからやめましょう」とだけ伝えると、その人の歩んできた歴史までも否定されたように感じてしまうことがあります。

第2章では、そんな大切なお餅が、なぜ高齢期になると喉に詰まりやすくなるのか、その理由を体の仕組みから見ていきます。「何が危ないのか」が分かれば、次の「どう工夫すれば安全に近づけるか」も、きっと具体的に考えやすくなっていきます。


第2章…なぜ喉に詰まるのか~お餅と体の仕組みを理解する~

お餅は、ゆっくり味わえばとても美味しい食べ物ですが、食べ方を誤ると命に関わる危険をはらんでいます。特に高齢期になると、若い頃には当たり前のように出来ていた「噛む」「飲み込む」という動きに、少しずつ変化が出てきます。その変化と、お餅の性質が重なった時に、喉詰まりという事故が起こりやすくなるのです。

まず、「飲み込む」という動きを、少しだけ分解して眺めてみましょう。私たちは、口の中で食べ物を噛み砕き、唾液と混ぜながら、舌でひと塊にまとめます。そのあと、舌が食べ物を喉の奥へ運び、反射的に気管の入り口が閉じ、食道の方へと送り込まれていきます。普段は意識しませんが、この一連の流れには、舌・頬・唇・喉の筋肉が見事な連携プレーで働いています

高齢になると、この連携に少しずつ「よどみ」が生まれてきます。代表的なのが、唾液の分泌が減ることです。薬の影響や水分不足、加齢そのものの影響で口の中が乾きやすくなり、食べ物がなめらかに滑らなくなります。さらに、噛む力が弱くなったり、入れ歯が合わなかったりすると、食べ物を細かく砕くことが難しくなり、口の中で大きめの塊のまま残りやすくなります。

ここに、お餅特有の性質が重なります。お餅は、しっかり噛み続けないと、いつまでも弾力のある塊として残りやすく、唾液を十分に含んでいないと、表面がベタッと粘りついたままになってしまいます。本来なら、よく噛んで細かくしてから飲み込むべきところを、「昔から食べ慣れているから大丈夫」と油断して、ついつい大きめのまま飲み込もうとしてしまう――この瞬間が、とても危険です。

また、疲れている時や、会話をしながらの食事、お酒を飲んだ後などは、注意力や反射がいつもより鈍くなります。そこに熱々のお餅が加わると、「早く飲み込んでしまいたい」という気持ちが働きやすくなり、「まだ十分に噛み砕けていないのに、飲み込もうとしてしまう」という状況が起こりやすくなります。結果として、まとまりきれていないお餅の塊が、喉の奥や気管の入り口に貼りついてしまうのです。

お餅の怖いところは、一度貼りつくと短い間に深刻な状態へ進みやすい点です。喉の奥が塞がれてしまうと、空気の通り道が狭くなり、息苦しさからパニック状態になります。周りから見ていても、顔色が赤くなり、やがて青白く変わっていくことがあります。この間に十分な空気が取り込めないと、脳に酸素が届かなくなり、ほんの数分で意識を失ってしまうこともあるため、「様子を見よう」と構えてしまうのはとても危険です。

さらに、高齢の方の中には、脳卒中の後遺症や認知症などで、飲み込む力そのものが低下している方も少なくありません。自分では「大丈夫」と思っていても、実際には舌の動きが十分でなかったり、気管の入り口を閉じる反射が弱くなっていたりします。周囲の人から見ると、「普段から咽ることが多い」「水を飲むだけで咳き込む」といったサインが出ている場合もあり、そのような方は、お餅をはじめとする粘り気の強い食べ物で特に注意が必要です。

ここまで見ると、「やっぱり危ないから、もう食べさせたくない」と感じるかもしれません。しかし、危険の仕組みを知ることは、「どうすれば少しでも安全に近づけるか」を考える出発点にもなります。噛む力や唾液の状態、普段の咽やすさなど、その人の体の特徴に合わせて、お餅の形や大きさ、食べるタイミングや付き添いの仕方を工夫していけば、リスクを下げながら楽しむ道を探ることも出来ます。

とはいえ、もし実際に喉に詰まってしまった場合には、何よりも早い判断が大切になります。「少し様子を見よう」と迷うより、まずは大きな声で周囲の人に助けを求め、躊躇わずに119番へ通報することが重要です。その上で、その場にいる人が出来る範囲で、前傾姿勢をとって背中を強く叩くなどの応急手当を試みます。昔は、掃除機で吸い出そうとする方法が語られたこともありますが、実際には怪我の危険もあり、専門家からは勧められていません。あくまで一般的な応急手当を優先し、医療の専門職に繋ぐことが安心に繋がります。

次の第3章では、こうした体の特徴や危険の流れを踏まえた上で、「どのような形や味付け、場面なら、お年寄りも安心してお餅を楽しみやすくなるのか」という具体的な工夫について、家庭や施設で取り入れやすいアイデアを、ゆっくり紹介していきます。


第3章…形と味と食べ方の工夫で変わる~安全に楽しむお餅アレンジ~

お餅を巡る一番のジレンマは、「危ないと分かっているのに、やめさせたくない」というところにありますよね。そこで大切になるのが、「どんな形なら、その人の力で噛みやすいか」「どんな食べ方なら、飲み込みやすくなるか」という視点です。同じお餅でも、切り方や調理の仕方、傍にいる人の声掛け次第で、危険の大きさはかなり変えることが出来ます。

昔ながらのつきたてのお餅を思い出してみると、柔らかくて、伸びはするけれど、意外とベタつきは少ないものです。十分な水分と熱がある状態で、口の中でも滑らかにほどけていきます。一方で、真空パックの切り餅は、とても便利で保存もしやすい反面、焼き過ぎたり乾燥したりすると、表面がカチカチで中だけが強く伸びる状態になりがちです。この「表面は硬くて、中はネットリ」の状態が、喉に貼りつく危険を高めることがあります。

そのため、危険を少しでも減らしたい場合には、まず「焼き方・煮方」を見直すことがポイントになります。こんがり焼き色のついた香ばしいお餅は魅力的ですが、高齢期には、カリカリに焼いたお餅をそのまま食べるスタイルは、出来れば控えた方が安心です。焼くとしても、軽く膨らむ程度に留め、最後は汁物の中でしっかり柔らかくしてから食べるなど、「歯で切りやすく、舌でも押し切りやすい柔らかさ」に近づけてあげられると良いですね。

量の工夫も、とても大事なポイントです。若い頃の感覚のまま「一切れを丸ごと口に入れる」食べ方が習慣になっている方は少なくありませんが、高齢期には「一口を小さく」が基本になります。最初から小さめに切り分けておき、「ひと口ごとにしっかり噛む」を合言葉に、ゆっくりペースで楽しんでもらいましょう。見た目は同じ一枚でも、最初から4~6個に切り分けることで、1回あたりの負担はグッと軽くなります。

味付けや一緒に食べるものにも、工夫の余地があります。お雑煮やお汁粉のように、「汁気の多い料理の一部としてお餅を味わう」形にすると、口の中で乾きにくく、唾液とも混ざりやすくなります。例えば、出汁をよく効かせたお雑煮にして、お餅を小さく切って沈めておくと、時間と共にトロリと柔らかくなり、歯茎でも潰しやすい状態に近づきます。きな粉やあんこ、砂糖醬油など、味付けにメリハリを付けることも、唾液を促して飲み込みやすくする助けになります。

「どうしてもお餅そのものが不安」という場合には、「お餅の代わりに、似た雰囲気の軟らかメニューを用意する」という考え方も大切です。白玉団子や、軟らかい団子状のデザートを工夫して、「今日は安全バージョンのお餅の日だよ」と声を掛けると、お年寄りの側も「自分のために考えてくれたんだな」と受け止めやすくなります。行事食としての雰囲気を大切にしつつ、その人の嚥下状態に合わせた形を選ぶことが、結果として尊厳を守ることにもつながります。

食べる場面の作り方も、忘れずに意識したいところです。テレビを見ながら、世間話に夢中になりながら、「何となくお餅を口に運ぶ」状況は、どうしても集中力が散ってしまいます。高齢期のお餅タイムは、なるべく「お餅を味わうことに集中する時間」として区切り、傍にいる家族がペースを見守りながら、「ゆっくりでいいよ」「よく噛めてるね」と声を掛けてあげると安心です。一人きりでお餅を食べる習慣がある方の場合は、「お餅の時だけは、一緒にお茶を飲もう」と約束しておくのも、ささやかな安全策になります。

介護の現場では、飲み込みの状態に応じた食形態が細かく分けられています。ご家庭でも、お年寄りの「咽る頻度」「食事に掛かる時間」「よく噛んでいるかどうか」をよく観察しながら、無理のない範囲でお餅メニューを選ぶことが大切です。例えば、「普段から水で咽やすい」「薬を飲む時に何度も咳き込む」といった様子が目立つ場合には、お餅そのものは控えめにして、お餅風のやわらかメニューに切り替えるなど、段階的な対応を考えたほうが良いこともあります。

そして何より大切なのは、「楽しみを守るための工夫」であることを、お年寄り本人と共有することです。ただ「危ないから小さく切るよ」「一人では食べないでね」と伝えるのではなく、「これなら、来年も一緒にお餅を囲めそうだから、こうしようか」と、未来の楽しみの話も一緒に添えてあげると、納得感がまったく違ってきます。「自分のことを心配してくれている」「どうにか食べ続けられる方法を探してくれている」という実感があれば、食べ方を見直すことも前向きな選択になります。

次の第4章では、食卓だけに留まらず、日頃の体操や受診、おしゃべりや水分の取り方といった「暮らし全体の工夫」が、飲み込む力を支える上でどれほど大切かを見ていきます。お餅の季節だけではなく、一年を通して出来る備えを一緒に考えていきましょう。


第4章…日頃の体操と暮らし方で守る~嚥下力を育てる生活ヒント~

お餅を安全に楽しむためには、食卓での工夫だけでなく、日頃の体作りもとても大切です。「飲み込む力」は、ある日突然ゼロになるわけではなく、少しずつ少しずつ変化していきます。その変化のスピードを緩めたり、今ある力を引き出したりするためには、口や喉だけでなく、全身の状態を整えていくことが欠かせません。

まず意識したいのが、「飲み込みは、全身運動の一部でもある」という視点です。私たちがご飯を食べる時、椅子に座って上半身を支える筋力、背筋を保つバランス感覚、首や肩の柔らかさ、呼吸のしやすさなど、さまざまな要素が関わっています。長時間ベッドで横になってばかりいる生活が続くと、背中が丸くなり、顎が上がりやすくなり、自然と飲み込み難い姿勢になってしまいます。逆に、日中なるべく起きて椅子に座る時間をとり、背もたれに軽くもたれながら、足の裏を床につけて座る習慣をつけるだけでも、食事の時の安定感が変わってきます。

その上で、口周りや首を意識した体操を、毎日の生活にそっと紛れ込ませていきましょう。大きく口を開けて「あ・い・う・え・お」とゆっくり発音する動きは、顔の筋肉と舌をしっかり動かすシンプルな体操です。鏡の前で笑顔を作ったり、頬を膨らませてからすぼめたりする動きも、噛む力や表情筋を保つ助けになります。首をゆっくり左右に回したり、肩をすくめて下ろしたりするストレッチは、血行を良くし、食事中の強張りも和らげてくれます。「食事の前に、軽く体操をするのが我が家の決まり」という風に、小さな儀式として取り入れてみるのも素敵ですね。

医療機関の力を借りることも、決して特別なことではありません。例えば、「最近よく咽る」「飲み込みに時間がかかる」と感じるようになってきたら、耳鼻咽喉科で飲み込みの状態を診てもらうことが出来ます。専門の検査で、どのタイミングで食べ物が引っかかりやすいのかを調べ、その人に合った飲み込み方や体操を教えてもらえる場合もあります。「年だから仕方ない」と我慢し続けるより、早めに相談しておくことで、お餅に限らず、普段の食事全体を安全に楽しむ土台作りがしやすくなります。さらに必要であれば医師の指示のもと言語聴覚士がリハビリテーションを組み立ててくれることもあります。

歯や入れ歯の状態も、飲み込む力と切り離せない大事なポイントです。歯がグラグラしている、入れ歯が合わなくてすぐ外してしまう、といった状況では、どうしても噛む回数が減り、食べ物が大きいまま喉の方へ送られがちです。定期的に歯科を受診し、虫歯や歯周病のチェック、入れ歯の調整をしてもらうことは、「おいしく、安心して食べる力」を守るための投資とも言えます。お餅を楽しむ季節だけでなく、1年を通じて口の中の状態を整えておく意識がとても大切です。

心の面から支えてくれるのが、「おしゃべり」と「笑い」の時間です。人と話すとき、私たちは自然に口や舌、喉をたくさん動かしています。声の大きさや高さを変えながら話したり、笑ったりすることは、実は立派なトレーニングです。ご近所さんとの立ち話、家族との夕食前のおしゃべり、デイサービスでの会話や歌の時間など、「声を出す機会」を意識して増やしていくと、飲み込む筋肉にも良い刺激が届きます。「最近あまり声を出していないな」と感じる方には、ラジオ体操の掛け声や、好きな歌を口ずさむ時間をつくってあげるのも良いですね。

そして、見落とされがちですが、日常の水分補給も非常に重要です。からだの水分が不足すると、唾液も減り、口の中がカラカラになりがちです。乾いた状態で硬い物や粘り気の強い物を食べると、どうしても飲み込みにくさが増してしまいます。こまめにお茶やお水を勧めたり、汁物を1品添えたりして、「食事中も、口の中が潤いやすい環境」を作ってあげたいところです。お餅を食べる時には、ひと口ごとにお吸い物やお茶を少し含んでから噛み直すなど、意識的に水分と組み合わせることで、喉への負担を軽く出来ます。

生活全体のリズムも、飲み込む力を左右します。極端な寝不足やストレス、食事時間が日によってバラバラになる暮らしは、体の調子を崩しやすく、食事への集中力も下がってしまいます。できる範囲で、「同じ時間に起きる」「3度の食事のうち少なくとも2回は、椅子に座ってゆっくり食べる」といった小さな約束を積み重ねていくと、お餅を含めた食事の時間が、体にとっても心にとっても、安定した楽しみになっていきます。

こうした取り組みは、どれも一気に完璧を目指す必要はありません。簡単な体操を数分だけ続けてみる、次の受診の時に飲み込みについてひと言相談する、家族がお茶の時間に意識して話題を振る――そんな小さな一歩の積み重ねが、結果として「お餅を安全に楽しめる力」を支えてくれます。お餅そのものをどうするかだけでなく、「お餅を食べる自分の体」を整えていく視点を持つことが、これからの高齢期を豊かに過ごす上で、大きな味方になるはずです。

まとめでは、お年寄りにとってのお餅の意味、危険の仕組み、食べ方と暮らし方の工夫を振り返りながら、「お餅を諦める」のではなく、「家族の皆で守りながら楽しんでいく」ための心構えを、もう一度整理していきます。

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まとめ…お餅時間を「危ない」から「家族の楽しみ」に育て直す

お年寄りがお餅を前にした時の、あの嬉しそうな表情を思い浮かべると、「危ないから禁止」と一言で片付けてしまうことに、どこか躊躇いを覚える方も多いのではないでしょうか。お餅は、単なる食材ではなく、子ども時代の思い出、家族で囲んだ食卓、ご先祖様への祈り、節目ごとの行事など、長い人生の中で積み重ねてきた時間そのものと結び付いています。だからこそ、歳を重ねた今でも「これだけは楽しみにしている」と感じる方が多いのだと思います。

一方で、高齢期になると、噛む力や飲み込む力、唾液の量、姿勢の安定といった、食事を支えている様々な機能に少しずつ変化が訪れます。その変化に気づかないまま、若い頃と同じような食べ方でお餅を口にすると、喉の奥に貼りついてしまい、短い間に命の危険に繋がることもあります。「危ないから心配になる」という家族の気持ちも、決して間違いではありません。大事なのは、「危ないか、楽しいか」の二択ではなく、「危険をきちんと理解した上で、どう守りながら楽しむか」を一緒に考えていく姿勢だと言えるでしょう。

そのための具体的なヒントとして、この記事では、形や量、調理法、味付け、食べる場面の工夫をお伝えしてきました。一口を小さくする、焼き過ぎずに汁物の中で柔らかくする、汁気のある料理と組み合わせる、行事食としての雰囲気を保ちつつお餅風のメニューに置き替える――こうした小さな工夫の積み重ねが、「絶対禁止」にしなくても良い道を広げてくれます。そして、「こうすれば、来年も一緒にお餅を囲めそうだね」と、未来の楽しみを見据えながら話し合うことが、お年寄りの心を守ることにも繋がります。

さらに、飲み込む力は、その日その場だけで決まるものではなく、普段の暮らし方とも深く関わっています。椅子に座って食事をする時間を増やす、口や首の体操を続ける、歯科や耳鼻咽喉科に早めに相談する、よくしゃべり、よく笑う時間を意識して作る、こまめに水分を摂る――どれも特別なことではありませんが、こうした生活の積み重ねが、「お餅を含めた食事を楽しめる体」を支えてくれます。お餅だけに焦点を当てるのではなく、「食べる力」全体を育てていく視点を持つことで、日々の暮らしそのものも、より豊かに整っていくはずです。

お餅は、危険をはらんだ食べ物であると同時に、「一年の始まり」や「家族が集まる時間」を象徴する、かけがえのない存在でもあります。大切なのは、「危ないからもう終わり」にしてしまうのではなく、「どうしたら、この人らしく楽しみ続けられるか」を家族全員で考え続けることです。お年寄りの思い出や価値観に耳を傾けつつ、体の状態を見守り、必要な時には専門家の力も借りながら、無理のない形で工夫を重ねていく。そんな丁寧な向き合い方が、「お餅時間」を再び安心で温かな一時へと育て直してくれるのではないでしょうか。

今年のお正月、あるいは季節の行事のとき、ぜひ一度、「どうしたら安全にお餅を楽しめるかな?」と家族で話し合ってみてください。小さな工夫と寄り添う気持ちがあれば、「危ないからやめる」だけではない、新しいお餅との付き合い方がきっと見えてくるはずです。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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