お歳暮のお返しはいる?いらない?~職場と親しい相手で変わる冬の作法と言葉選び~

[ 12月の記事 ]

はじめに…12月はありがとうが行き交うからこそ迷うお歳暮マナーの入口

12月になると、急に人とのやりとりが増えますよね。仕事でお世話になった上司や取引先、ずっと親しくしてくれている親類、離れて暮らす家族からも、ポンッと季節の贈りものが届く。受け取った瞬間は「わあ、嬉しい」なのに、その次の瞬間に「……あれ、私、出してなかったかも」「お返しってどうするんだっけ」と胸の中がソワソワし始める。年末はただでさえやることが多いので、こうした細かな気遣いが一番負担に感じられる時期でもあります。

本来、お歳暮はその1年の「ありがとう」を形にしただけの、温かい習慣です。ところが現代は、贈る相手が職場だったり、会社同士の関係だったり、義理の親戚だったりと、お付き合いの種類がとても多いので、「これは返すべき?」「言葉だけでいい?」「贈る時期を逃したらどうする?」と場面ごとの正解が分かりづらくなっています。しかもお歳暮は年賀状やお年玉の準備とも重なるので、迷っているうちに月末になってしまうんですよね。

ここで押さえておきたいのは、形だけをなぞるよりも「どう受け取られたいか」を先に決めることです。丁寧な人だと思われたいのか、仕事上の関係をきちんと続けたいのか、逆に少し距離を置きたいのか――この方向さえ決まれば、贈るか贈らないか、電話を添えるか手紙にするかといった細部は自然と決まっていきます。お歳暮のマナーは、一見、難しそうに見えて、実は人との距離の作り方を言葉にしただけのものなのです。

この記事では、元々の文章で書かれていた「お返しはいらないと言われた時はどうするのか」「時期を逃したら何に名目を変えるのか」「ご縁を細くする時に失礼にならない言い方はあるのか」といった迷いやすい場面を、もう少し現在の生活に合わせた形で整理していきます。会社相手でも、ご近所でも、親しい人でも使えるようにしておきますので、あとは自分の人間関係に当てはめて選んでくださいね。

年末の忙しい空気の中でも、1つ1つの贈りものに「ありがとう」がきちんと乗って届くように。そんな気持ちで読み進めてもらえたらうれしいです。

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第1章…「お返しはいりません」をどう受け取る?言葉の真意と基本の考え方

お歳暮をいただいた後で、添え状や電話で「お気遣いなく」「お返しは結構です」とやさしく言われることがありますよね。ここで迷うのが、言葉通りに受け止めて良いのか、それとも礼を尽くすべきなのか、というところです。日本語は遠回しな表現が多いので、文字だけをそのまま受け取ると、却ってぎこちない関係になってしまうことがあります。ですからまずは「その相手がどんな立場からそう言っているのか」を読み取るところから始めると安心です。

例えば、会社の上司や取引先のように、こちらが日頃お世話になっている立場の場合は、「お返しは不要です」という言い方はたいてい「負担に思わない程度で大丈夫ですよ」「形式を重ね過ぎるとお互い大変ですからね」という気遣いの表現です。つまり、本当に何もしなくていい、というよりは「簡単でいいので気持ちだけ見せてくださいね」という柔らかなサインだと考えた方が無難です。ここでまったく何も返さないと、「忙しかったのかな」「少し距離を取りたいのかな」と受け取られる可能性もあるので、一言でも良いから反応を返すのが大人のやりとりになります。

反対に、長年の友人や親戚のように、元々、気心が知れていて、毎年のように行き来がある相手からの「気を遣わないでね」であれば、こちらの家計や状況を思いやってくれているケースも多いです。この場合は、すぐに同額の品物を送り返すよりも、その年の春やお盆に会う時に手土産を持っていくとか、年明けに丁寧な年賀状を出すとか、季節を変えて礼を伝える方法を選ぶと、相手の優しさを無駄にせずに済みます。つまり「今すぐ同じように返すかどうか」だけがマナーではなく、「どうすればこの関係が気持ちよく続くか」を考えるのが基本になるわけです。

ここで1つ覚えておきたいのは、贈った側は思っているよりもよく見ています、ということです。品物の値段だけではなく、届いた後、どのくらい早く連絡があったか、言葉遣いが丁寧だったか、こちらの名前をきちんと書いてくれたか――そうした細部で「このご家庭は丁寧だな」と感じ取ります。ですから、仮に物を返さない選択をする場合でも、電話や手紙を1本入れておくだけで印象は随分と違います。逆に、品物は立派なのに連絡が一切ないと、「あれ、届かなかったのかな」と心配させてしまいますよね。

もう1つ、少し踏み込んだ話をすると、「お返しはいりません」は関係の濃さを測る物差しにもなります。相手がこちらとのご縁をこれからも続けたいと思っているなら、必ずこちらが動きやすいような余地を残した言い方をしてくれます。ところが、忙しさや世代交代などで「今年で一段落させたい」と思っている場合は、ややあっさりした連絡になることもあります。そういう時に、こちらが大袈裟に高価なものを贈り直してしまうと、却って相手に負担を与えてしまうので、言葉の温度をよく見て、同じくらいの温度で返すとバランスが取れます。

まとめると、基本の流れはとてもシンプルです。まずは必ず受け取りの連絡をする。その上で、相手との距離感を見て、簡素な品を送るのか、言葉だけで済ませるのか、時期をずらして手土産にするのかを選ぶ。これが一番ブレ難いやり方です。お歳暮は「物を渡すこと」よりも「今年もしっかり繋がっていますよ」という合図ですから、その合図が伝わるように動いておけば、多少、形が変わっても失礼にはなりません。


第2章…届いたのにまだ贈ってない…そんな時でも間に合う時期と段取りの整え方

お歳暮が先に届くと、心がふっと沈みますよね。「あ、あのご家庭には今年は落ち着いてからにしようと思ってたのに」「会社宛てはまとめて手配するつもりだったのに」と、こちらの段取りよりも早く相手が動いたことで、気持ちが追い抜かれてしまう。けれども、12月ならまだ十分に挽回できます。大事なのは、時期の目安を知っておくことと、「遅れた理由を自然に見せる一言」を添えておくことです。

一般的には、関東では12月1日~12月31日、関西では12月13日~12月31日が目安とされています。つまり12月中であれば「お歳暮」として出して問題ありません。ですから、届いたのが月の前半であれば、その週のうちに手配してしまえば、相手はほとんど遅れを気にしません。むしろ「忙しい中でちゃんと用意してくれたんだな」と好意的に受け取ってくれます。

少し難しくなるのは、年末の仕事や家の用事が重なって、どうしても12月中の発送ができない時です。この場合は、年が明けてから「お年賀」としてお届けする方法があります。松の内と呼ばれる期間――多くの地域で1月7日まで――であれば、年初のご挨拶としてとても自然です。のしの表書きも「御年賀」や「寒中御見舞」に切り替えれば、12月に間に合わなかったことがむしろ丁寧さに変わります。1月8日以降になってしまう場合は「寒中御見舞」として落ち着いた品を選ぶと良いでしょう。時期に合わせて名目を変えるだけで、慌てている印象を和らげることが出来るのです。

ここでもう1つ、忙しい年末に是非、取り入れて欲しいのが「先に気づいたことを伝える」というやり方です。つまり、すぐに品物を送れないとしても、その日のうちに「お心遣いをありがとうございます。こちらからも後日改めてご挨拶させていただきます」と電話やメッセージで伝えておく。これだけで、相手は「届いたかな」「迷惑じゃなかったかな」という不安から解放されますし、こちらも1月に入ってから堂々と送ることができます。贈り物は沈黙が一番気まずくなるので、先に言葉を出しておくと関係がとても楽になります。

また、会社や事業所の場合は、個人よりも早めにやり取りが始まることがあります。取引先が多かったり、年末に請求や支払いが集中したりするからです。そうした場面でこちらが遅れた場合は、「年末業務と重なりご手配が遅れました」「新年のご挨拶と合わせたく存じます」と一文添えておけば失礼にはなりません。相手も同じように走り回っている時期なので、事情を添えておけばきちんと伝わります。

さらに言えば、ほんとうにご縁を続けたい相手には、たとえ時期がズレても送った方が良いです。日付が少し過ぎたからといって急に印象が悪くなるわけではありません。むしろ「遅くなっても外さなかった」という記憶が残ります。年始の慌ただしさが落ち着く1月半ばに、冬らしいお茶や甘味をそっと届けるのも素敵です。名目が「お歳暮」から外れても、心が籠ってさえいれば、それはちゃんと年末年始の挨拶として受け取られます。

まとめると、遅れそうな時は、すぐに届いたお礼を伝える、時期に合わせて「お歳暮」「御年賀」「寒中御見舞」と名目を切り替える、相手との距離感に合った落ち着いた品を選ぶ――この3つを意識しておけば大丈夫です。12月は皆が忙しいという前提を共有できている季節ですから、「ちゃんと気にかけていた」というサインさえ出せれば、ご縁が緩むことはありません。


第3章…会社・ご近所・親族で変わる!関係性に合わせた上手なお返しパターン

お歳暮のややこしさは、「誰から届いたか」でやり方がコロコロ変わるところにあります。同じ品物でも、会社から届いたのか、町内で日頃顔を合わせる人から届いたのか、義理の兄弟から届いたのかで、相応しい返し方が違ってくるんですね。ここでは代表的な3つの場面に分けて、どこまで丁寧にすれば安心なのかを整理していきます。

会社・仕事関係から届いた場合

会社や取引先からのお歳暮は、基本的に「これからも良い関係でいましょう」という挨拶です。個人の好みというよりは、組織同士の礼儀に近いので、こちらもなるべく分かりやすい形でお礼を返しておいたほうが無難です。一番外さないのは、届いたその日に連絡を入れること。電話でもメールでも構いませんが、年末は電話が混み合うので、ひと言お礼を伝えた上で「後日改めてお届けいたします」と添えておけば、相手は「きちんと届いた」と分かります。

その上で、同じ12月中に社名入りの品や日持ちのする食べ物を贈れば、相手先の事務所でも分配しやすく、こちらの気遣いも伝わります。どうしても同額の品が難しい時でも、お礼状だけで終わらせない方が良いのはこのためです。仕事のご縁は1度感じが悪くなると戻すのが大変なので、「形を残す」「日付をあまりズラさない」を意識しておくと安心です。

ご近所・地域の顔見知りから届いた場合

町内会や子どもの行事などで日頃から顔を合わせるご家庭から届いた場合は、あまり大袈裟にし過ぎない方が上手くいきます。お歳暮を切っ掛けに関係が重くなると、お互いに会うたびに「次はどうしよう」と考えなければならなくなるからです。届いたらまずはすぐにお礼を伝えて、同じくらいの気さくな品物をお返しする。これが一番平和です。

例えば、年末にいただいたら、こちらはお正月の前後に地元の銘菓や手土産に近いものを持参する。のし紙をきっちり付けてもいいですが、距離が近い相手なら「年末はありがとうございました、これ良かったらどうぞ」と口頭で渡すだけでも気持ちは届きます。ご近所の場合は、値段よりも「すぐに反応した」「顔を見て渡した」ということの方が印象に残ります。お互いに無理のない範囲で続けられるように、少し軽めのやりとりにしておくのがコツです。

親族・義理の実家など身内に近い人から届いた場合

親や義理の親、兄弟夫婦など、これからも長く行き来がある相手からのお歳暮は、気持ちが籠っている分だけ「返し方で本心が伝わってしまう」場面でもあります。ここで何も返さないと「忙しいのかな」だけで済まないこともあるので、なるべく早く一報を。電話で感想まで伝えておくと、相手も「あれを選んで良かった」と安心します。

この時、すぐに同じランクの品を返してもいいのですが、親族の場合は年末年始に会う予定があることも多いですよね。そういう時は、年明けに会うタイミングで少し良いお菓子やお茶を持って行き、「先日はありがとうございました」と手渡しする形にすると、柔らかく纏まります。宅配で終わらせるよりも、顔を合わせて渡した方が、親族らしい温かさが出るからです。もし距離が遠くて会えないなら、1月上旬までに「御年賀」として落ち着いた品を送れば綺麗です。

関係を続けたいかどうかを基準にする

3つの場面に共通しているのは、「この人とのやりとりを来年以降も続けたいか」で決める、という考え方です。会社・ご近所・親族、どれも今後も顔を合わせる可能性が高い相手なので、ここであっさりし過ぎると、後々「去年はあったのに今年はないのね」と感じさせてしまいます。逆に、今年は余裕がなかったとしても、気持ちの籠った連絡を入れておけば「来年落ち着いたらまた送ろう」と受け取ってもらえます。

お歳暮は「1回送ったらそれで終わり」というものではなく、緩やかに続けていくほど意味が出る習慣です。だからこそ、相手ごとに重さを変えることが大切になります。仕事関係には分かりやすい形を、ご近所には気軽な形を、親族にはあたたかい形を――と使い分けておくと、年ごとに迷うことが減っていきますよ。


第4章…敢えて控えたい時の上品な断り方とこれからのご縁を細く長く保つ工夫

毎年のように季節の贈りものを頂いていると、ある年から「そろそろ終わりにしたいな」と感じることがありますよね。家計の見直しをしたい時、世代が変わって暮らし振りが変わった時、仕事を退いた時、ご家族の介護が始まった時――そんな節目には、贈りものの往復も少し軽くしておきたいものです。ただ、ここでブツリと切ってしまうと、これまで積み上げてきた関係まで途切れてしまいます。そこで大事になるのが「品物は控えるけれど気持ちは残す」という伝え方です。

一番穏やかな方法は、まずお礼をしっかり伝えることです。届いたらすぐに「毎年お気遣いをいただきありがとうございます。いつも楽しみにしております」と、これまでの厚意を認める言葉を入れます。その上で、「こちらは今後はお気持ちだけで十分です」「高価なお品はどうぞご無理なさらないでくださいね」と先に相手を労っておくと、角が立ちません。こちらから控えたい事情がある場合でも、先に相手の負担を気遣う形にしておくと、相手も「ではこちらも少し簡素にしようかな」と歩調を合わせやすくなります。

もう少し踏み込んでお伝えしたい時は、暮らしの変化を理由にすると自然です。例えば「家族が減って食べ切れないことが多くなりましたので、今後はお気持ちだけいただければ十分です」「年末年始の挨拶は今後はお手紙で失礼いたします」など、生活サイクルが変わったことを柔らかく添えておくと、相手も納得しやすくなります。相手に非があるわけではない、という線を明確にしておくことが、長くお付き合いする上でとても大切です。

会社や仕事関係でやりとりを軽くしたい時は、個人の判断だけで止めるのは避けて、文面を整えた方が安全です。例えば「今後は年始のご挨拶に一本化させていただきます」「こちらからの品はお中元のみにさせていただきます」など、回数や時期をはっきりさせておくと、相手も社内で説明しやすくなります。突然何も届かなくなるよりも、形を変えると伝えてから切り替えた方が、こちらの印象も綺麗に残ります。

ご近所や親族のように、今後も顔を合わせる相手の場合は、品物ではなく「会う機会」を残しておくとご縁が細くなり過ぎません。お歳暮は控えるけれど、お盆やお彼岸には手土産を持っていく。年末年始の挨拶は続ける。季節の折り目でお便りだけは出す。こうして接点を別の場所に移しておくと、「あの家とはもう終わった」という空気にならずに済みます。贈り物は辞めても、心の方はまだ開いていますよ、というサインをどこかに残しておくことが、長い目で見るととても効きます。

そして何より、断るタイミングをあまり遅らせないことです。何年も受け取り続けてから「やっぱり終わりにします」と言うと、どうしても重く聞こえてしまいます。家族構成や仕事が変わった年、生活をコンパクトにした年など、理由が見えやすい時期にサラリと伝えておくと、相手も「ああそういう時期だよね」と受け止めてくれます。年末は誰でも忙しいので、丁寧な言葉が一行添えてあるだけで、こちらの真心はきちんと伝わります。

品物を控えるのは、決して相手を下に見ているからではなく、これからも無理なく付き合っていくための調整です。そう説明できるようにしておけば、年齢を重ねても、暮らしが変わっても、程良い距離で繋がり続けることが出来ますよ。

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まとめ…品物より伝わるのは気遣いとタイミング~今年は「丁寧だったね」で終わらせよう~

お歳暮のやりとりは、どうしても「贈るか贈らないか」「同じくらいの値段かどうか」といった形の部分に意識が向きがちです。けれども実際のところ、人の心に残るのは金額よりもタイミングと言葉遣いです。届いたらすぐにお礼を伝えたか、時期を外してしまった時に一言添えられたか、今年で少し控えたい時にも相手を立てる言い方が出来たか――そこがきちんとしている人は、多少形式が崩れていても「感じのいい人」として記憶されます。

今回整理したように、やることの順番はとてもシンプルでしたよね。届いたらまず連絡、12月中なら「お歳暮」で返す、年明けにずれたら名目を変える、続けたいご縁には形を残す、軽くしたいご縁には事情を添える。たったこれだけで、会社にも親族にもご近所にも通用する年末の挨拶が整います。先の文章にあった「縁をどう扱うかで自分の徳が決まる」という考え方も、この流れなら自然に生かせます。

年末は、忘年会や帰省、家族の行事などでどうしても急ぎ足になります。そんな中で、1つの贈り物に対して落ち着いた返信が出来る人は、それだけで信頼の度合いが上がります。たとえ「今年でひと区切りにさせてください」と伝える場合でも、丁寧な敬語と季節の挨拶を添えておけば、相手には「大事に扱ってくれた」という印象だけが残ります。贈りものはその場で消えてしまいますが、言葉の方は長く残ります。

この冬は、届いた品を前に「どうしよう」と慌てる前に、「この人と来年も笑って話したいか」を一度だけ考えてから動いてみてください。続けたい相手には少しだけ手間を、軽くしたい相手にはやわらかな一文を。その小さな差が、来年の年末の気楽さを作ってくれます。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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