年末年始をゆったり彩る高齢者向けやすらぎレクリエーション案
目次
はじめに…年の瀬からお正月までをむだにしないための考え方
年末年始って、介護の現場ではどうしても「やることが多いのに人手はいつも通り」という状態になりやすいですよね。クリスマスの飾りを片付けて、正月飾りを出して、家族の面会の予定を確認して、食事もいつもよりちょっと特別にして……と動いていると、つい「今日はもうレクはいいか」となりがちです。ところが利用者さんの側から見ると、この時期こそ1日の中で緩やかに楽しめる時間があると安心できますし、「ここにいて良かった」と感じてもらいやすい季節でもあります。
また、この時期はテレビでも家族でもお祝いムードが続くので、施設や事業所でも少しだけ「普段とは違うことをしてもらえた」という体験があると、心の張りが保ちやすくなります。とはいえ、職員さんが長時間付きっ切りで準備するレクリエーションを毎日入れるのは現実的ではありません。そこで今回は、介護職の持っている技術や、施設にあるベッドや休憩スペースをそのまま活かして、短時間で実施できる内容にまとめてみました。
このご提案の狙いは、忙しい日でも実施できること、利用者さんに「自分に合わせてくれた」と感じてもらえること、年明けにもう一度話題にできること、の3つです。大掛かりな材料を買ったり、会場を飾り替えたりしなくても、「気持ちよく休む」「姿勢を整える」「初夢の話をする」といったテーマなら、この季節ととても相性が良く、しかも高齢者の方にとって意味のある活動になります。
この記事では、忙しい時期でも職員さんが笑顔のまま無理なくできるアイデアを順番にご紹介していきます。年末年始を「ただ過ぎた日」にせず、後から思い出せる小さな行事として残せるよう、一緒に組み立てていきましょう。
[広告]第1章…忙しい時期でも出来るちょい足し行事レクのすすめ
年末からお正月にかけての介護現場は、とにかく目の前の用事が次々とやって来ます。飾りの入れ替え、来客対応、いつもより少し良いお食事、書類の整理……これらに追われていると、どうしても「今日のレクは短めでいいかな」となりやすいですよね。ところが利用者さん側から見ると、この時期は家族が来るかどうか、年明けに誰と会えるか、テレビは何をやっているか、といった外の情報が多くて、気持ちが高ぶりやすい季節でもあります。だからこそ、ほんの少しでいいので「今日はこれをやりました」と言える内容を用意しておくと、とても安心してもらえます。
年末年始のレクリエーションで大事なのは、派手さよりも「今あるものをどう楽しく見せるか」という点です。既にフロアにはクリスマスやお正月の飾りが並び、季節の雰囲気は整っています。そこへさらに大掛かりな道具を足すよりも、今ある飾りを話題にしたり、ベッドやソファを使って体験に変えたりするだけで、十分に過ごしやすい時間が作れます。職員さんの手間が増えないことも、年末年始にはとても大切な条件です。
もう1つ押さえておきたいのは、「その日1回で終わらない話題」を入れておくことです。例えば「今年はどんな夢を見たいか」「昔のお正月はどう過ごしていたか」「子どもの頃に家で出たご馳走は何だったか」など、続きが話せるテーマを混ぜておくと、翌日出勤した職員さんもその話題を引き継ぐことができます。人が入れ替わりやすい時期でも、利用者さんから見ると会話がつながっているように感じられるので、場の雰囲気が落ちにくくなります。
年末年始の空気を壊さないこと
この季節の空気は、普段よりも少しだけ「改まった感じ」「お祝いの感じ」が強くなっています。ですので、大声で競うゲームや、座席を何度も移動させるような内容よりも、座ったまま・横になったままでできる体験型の内容が相性◎です。利用者さんがご家族の面会を待っている時でも、すぐに中断できる内容なら無理なく参加していただけますし、面会に来られたご家族の方に「今日はこういうことをしていました」と自然に説明も出来ます。こうした小さな積み重ねが、「ここは落ち着いていても楽しめる場所」という印象に繋がります。
準備いらずで盛り込むコツ
忙しい時期に向いているのは、施設にすでにある場所を使うもの、職員さんが普段やっている介護の動作を見せるだけで成立するもの、季節の話題を1つ足すだけで形になるもの、の3つです。今回ご提案する「快眠をテーマにしたお試し体験」は、この3つを全部満たしているので、年末でも年明けでも同じ内容で実施できます。しかもお正月明けに「初夢どうでした?」と聞けば、同じレクを2回楽しんだような流れにできます。
このように、年末年始のレクリエーションは「長時間やる」よりも「短いけれど意味がある」「後日また話せる」ことを意識すると、利用者さんにも職員さんにもやさしい形になります。次の章では、その中身として使える「休憩室を活かした快眠・安楽体験」を具体的にお話ししていきます。
第2章…休憩室を活かした快眠・安楽体験レクリエーション
ここからは、先の章にあった「楽々快眠講座」をベースにして、年末年始らしくちょっと上品にアレンジした形でご紹介していきます。大掛かりな飾りや道具を使わなくても、施設にあるベッドや静養室を上手に使えば、それだけで立派なレクリエーションになります。しかも、ご高齢の方にとって「気持ちよく横になれる」「いつもと違う寝心地を試せる」という体験は、それ自体が生活の質に繋がります。せっかく設備があるのですから、年に1回とは言わず、年末と年明けの2回、季節の行事として組み込んでしまうと楽です。
このレクリエーションの中心にあるのは、職員さんが持っている介護技術をそのまま見せるという考え方です。ベッドへの移乗、枕の高さの調整、布団やタオルケットのかけ方、サイドレールをどう使うと安心か――普段は「業務」としてサラッと終わらせていることを、敢えてゆっくりと「今日はこれを体験してもらう時間です」として提示します。そうすると利用者さんは「自分がされている介助にはこういう意味があったのか」と納得できますし、職員さんの側も自分の技術を振り返る良い機会になります。
やることはシンプルでOK
流れとしては、まずフロアで軽く体操をして体を温め、その後は静かな部屋へご案内します。いきなり横になるよりも、少し動いてからの方が心身が休みやすくなるからです。ベッドやリクライニングチェアにお通ししたら、「今日は〇分だけ気持ち良く休む時間です」と初めに伝えておきます。時間の目安は15分~20分が無難です。これくらいなら日中の眠り過ぎにも繋がりにくく、昼食や面会の予定ともぶつかりません。
横になっていただいたら、職員さんが枕やマットの硬さを変えて差し上げます。「この高さはどうですか」「もう少しフワッとした方が好きですか」と問い掛けることで、その方の好みを引き出せます。ここがこのレクリエーションの見せ場です。普段は「施設の備品でこうなっています」で済ませてしまうところを、「今日は選んでいい日」にしてあげると、参加の満足度がグッと上がります。福祉用具事業所と繋がりがあるところなら、最新のマットレスやエアタイプを1台借りてきて、体験ベッドとして置いておくのも面白いです。
なぜ年末年始に向いているのか
この時期は、ご家族が「このベッドでちゃんと眠れているのかな」と心配してくださることも多いですし、本人も「年を越すからには体を楽にしておきたい」という気持ちが強くなります。そこで「今日は安楽な姿勢の体験をしました」「ご本人はこの高さの枕が合っていました」と説明できると、とても丁寧な対応に見えます。派手なゲームよりも、このように生活そのものを整える内容の方が、年末年始の落ち着いた雰囲気に合います。
さらに、この「気持ちよく眠る」体験は、お正月の楽しみである初夢の話題にも繋げやすいのがポイントです。横になってもらう前に、「明るいうちに気持ちよく休むと、夜の眠りも整いやすいですよ」「いい夢を見る準備だと思ってくださいね」と一言だけ添えておくと、後で話のタネになります。次の出勤日に「昨日の昼、気持ちよく横になれましたか」と聞けば、それだけで会話が繋がります。
安全面のひと工夫で実習っぽさを出す
もちろん、日中に横になっていただく以上は、安全確認は欠かせません。離床センサーや見守り体制が整っている時間帯を選び、転落の心配がある方にはサイドレールを併用します。この時に「こういう姿勢だと呼吸が楽ですよ」「足を少し上げるとむくみが引きやすいですよ」と説明を添えると、レクリエーションでありながら実習のような雰囲気が出ます。看護師さんやリハ職がいる事業所なら、その日の担当にひとこと話してもらうのも効果的です。専門職の言葉が入ると、参加した利用者さんも「今日はいいことを聞いた」と感じてくださいます。
このように、休憩室や静養室を舞台にすれば、準備はほぼ不要で、しかも年末と年明けの2回は回せる内容になります。次の章では、ここに看護・リハビリ・福祉用具といった専門的な視点を重ねて、もう一段階学びのある形にする方法をお伝えします。
第3章…看護・リハビリ・福祉用具を絡めた実習風アレンジ
第2章でお話しした「気持ちよく横になる体験」は、それだけでも立派なレクリエーションになりますが、ここへ専門職の視点を少し足してあげると、グッと価値の高い時間になります。年末年始はご家族の方が様子を見に来られることも多く、職員さんの介助が綺麗に見えると安心感が伝わります。どうせならこの時期を利用して、職員さん自身の技術確認や新人さんの練習にもしてしまおう、というのがこの章の狙いです。言い方を変えると「利用者さんと一緒に寝心地の勉強をしてしまう会」です。
看護師さんがいる事業所であれば、「この病気の方にはこういう姿勢が楽です」「呼吸が浅くなりやすいので上体を少し起こします」など、普段のケアで意識していることを短くお話ししてもらうだけで、場が一気に学びの時間に変わります。理学療法士さんや作業療法士さんがいれば、関節を守るためのクッションの入れ方、体が捻じれない向きの作り方などを実演してもらうのも良いですね。利用者さんに実際に横になってもらいながら説明すると、「自分の体のことを考えてくれている」と感じていただけますし、同席している他の利用者さんにも聞こえるので、その場にいる全員にとって意味のある時間になります。
福祉用具の活用も、このタイミングだと紹介しやすくなります。普段は「備品です」として設置しているベッドやマットレスでも、「今日はこの機能を動かしてみますね」と言って実際に高さを変えて見せると、利用者さんはもちろん職員さんの側も理解が深まります。地域の用具業者さんに協力していただけるなら、いつもと違うタイプのマットや、体圧を分散してくれるものを1台だけ持って来てもらって、希望される方に試してもらうのもお勧めです。必要になってから初めて触るのではなく、元気なうちに「こういうものなんだ」と経験しておくことは、とても安心に繋がります。
体験を実技にしてしまうコツ
ここで大切なのは、ただ寝てもらうだけで終わらせないことです。横になった利用者さんに「枕はもう少し高い方が楽ですか」「膝の下にタオルを入れるとどうですか」と、その都度、聴いてみます。答えをもらったら、職員さんがすぐに調整してあげます。たったこれだけで、その場は立派な実習になります。事前にご家族の方のタオルや肌触りの良いカバーを預かっている場合は、「ご自分の物だともっと眠りやすくなりますよ」と添えてあげると衛生面でも納得していただけます。
また、介助の手順をあえてゆっくり見せるのも1つの方法です。ベッドから車いす、車いすからベッドへの移乗は、どのご家庭でも不安が多い部分ですので、年末年始で時間に余裕がある時に「こういうふうに支えるとご本人が怖くないですよ」と見せておくと、面会に来られたご家族への説明にもなります。職員さん同士でペアを組んで実演して見せると、「この施設は丁寧にやってくれる」という印象を伝えやすくなります。
出来る人と見る人を分けると安全
高齢の方を実際にベッドへ移す場面を含める時は、無理に全員が体験する形にしなくても大丈夫です。体調が安定している方だけをモデル役にして、他の方には見学してもらう形でも、十分に楽しんでいただけます。見学をしている方には、「この姿勢、楽そうですか」「ご自分ならどっちが好きですか」と声をかけると参加した気持ちになれます。身体を動かす人と、見て学ぶ人を分けることで、安全面の管理もしやすくなりますし、職員さんの負担も軽くなります。
このように、第2章で行った「快適に休む時間」を土台に、専門職の視点や福祉用具を少しずつ足していくと、年末年始らしい落ち着きはそのままに、内容だけが一段リッチになります。次の章では、この体験をお正月の楽しみと繋げるための「初夢の話題作り」や「振り返り会」の持って行き方をご紹介していきます。
第4章…初夢の話題や振り返り会で繋がりを深める仕掛け
ここまでで「気持ちよく休む」「安楽な姿勢を体験する」というところまで来ましたので、最後はそれをお正月らしい楽しみに繋げていきます。年末年始のレクリエーションで惜しいのは、せっかく良い体験をしても、その日だけで終わってしまうことが多いところです。もう一歩踏み込んで「次に会った時に話せること」を残しておくと、利用者さん同士の会話も生まれますし、日を跨いで出勤した職員さんも話題を引き継ぎやすくなります。
この季節ならではのテーマが、やはり初夢です。古くから「一富士二鷹三茄子」と言われるように、新年の夢は縁起物として語られてきました。高齢の方はこうした昔ながらの話題がとてもお好きなので、昼間に行った快眠レクを「良い初夢を見るための準備でした」と位置づけると、年明けにもう一度思い出してもらえます。つまり、予め話題のタネをまいておいて、後日回収するイメージです。
初夢トークの進め方
年が明けて落ち着いた日に、「お正月の間にどんな夢を見ましたか」と一人ずつ聞いて回るだけでも立派なレクリエーションになります。夢が思い出せない方には「では、見られたらいいなと思う夢は何ですか」と聞き方を変えてみましょう。これなら答えやすく、場が静まることもありません。さらに「前にお昼寝で横になった時、あの姿勢は楽でしたか」と一言添えると、第2章~第3章でやった体験をもう一度呼び起こすことが出来ます。
職員さんの側もここで少しだけ参加するのがお勧めです。「私はお雑煮を食べている夢を見ました」「私は旅行していました」などと話すと、利用者さんが乗りやすくなります。年末年始はご家族が近くに来られることもあるので、その場にいる方にも「お母様、こういう夢を見られたそうですよ」とお伝えできれば、ご家族との会話の切っ掛けにもなります。
記録しておくと次の年が楽になる
もう1つ、可能であればこの一連の取り組みを簡単に記録しておきましょう。「〇月〇日 安楽な姿勢体験」「〇月〇日 初夢トーク」というように、日付と内容だけでも残っていると、翌年の同じ時期に組み立てる時にとても楽です。介護記録の中に一言添える形でもいいですし、レクリエーション専用のメモにしても大丈夫です。利用者さんの中には「枕は高めが好き」「足元だけタオルを掛けて欲しい」など、個人の拘りがはっきり出る方もおられますので、そうした情報を残せば次回の安楽体験をよりその方らしく出来ます。
こうして「体験したことを話す」「話したことを残す」という2段階にすると、年末年始のレクリエーションが単発のイベントではなく、生活リズムの一部として根付きます。職員さんの負担を増やさずに質だけを上げるためには、この「後日もう一度使える話題を入れておく」ことがとても効きます。
次のまとめでは、ここまでの流れを一度整理して、どの事業所でも応用しやすいようにしておきますね。
[広告]まとめ…利用者さんと職員さんが一緒に心地良さを作る年末年始へ
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
今回のご提案は、いわゆる「大イベントのレク」ではなく、忙しい時期でも職員さんが無理なく続けられて、しかも利用者さんが「今日は自分のために何かしてもらえた」と思える形を意識して組み立てました。年末年始はどうしても飾りや食事に注目が集まりがちですが、体を休めることや姿勢を整えることも、高齢の方にとっては同じくらい大切な季節の楽しみになります。
今回の流れを振り返ると、まず第1章で「忙しい時こそ短くて意味のある内容を」と考え方を揃えました。次に第2章で、施設に既にある休憩室やベッドを使って、気持ち良く休むこと自体をレクリエーションにする方法をご紹介しました。さらに第3章では、看護やリハビリの視点、福祉用具の体験を少し混ぜることで「今日は勉強になった」と感じてもらえるようにしました。そして第4章で、お正月らしい初夢の話題や振り返りを入れて、日を跨いでも楽しめる形にしました。
このように段階を踏んでいくと、特別な飾りや高価な道具がなくても、年末にも年明けにも使い回せるレクリエーションになります。しかも内容は「安楽な姿勢」「休息のとり方」「自分に合った枕や掛け物」という、どなたにも共通するテーマなので、身体機能に差がある利用者さんが一緒の場にいても参加しやすいのが強みです。職員さんの技術をそのまま見せる場にもなりますから、「介護をして差し上げる時間」が「一緒に体験する時間」に変わっていきます。
さらに、記録を少し残しておけば、翌年の同じ時期にもほぼ同じ段取りで実施できます。参加された方の好みや反応を書き留めておくと、次はもっとその人らしい休息が用意出来ますし、ご家族への説明にも使えます。毎年の恒例にしてしまえば、「ここでは年末に気持ちよく休む日がある」と利用者さんも覚えてくださいますので、参加の声かけもしやすくなります。
行事が続くこの季節こそ、ほんの短い時間でも「ゆっくりしていいですよ」と伝えられる場を作ってあげてくださいね。落ち着きと優しさのある年末年始になるはずです。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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