世界をかけるサンタクロースの秘密~聖ニコラウスから日本のクリスマスまで~

[ 12月の記事 ]

はじめに…12月を彩る「赤い来訪者」のお話

12月になると、街がキラキラしてきますね。お店の前にはツリー、窓にはリース、夜になると家々の電気までちょっとだけクリスマス色になります。そんな中で、子どもたちが一番ワクワクするのが「サンタさん、いつ来るの?」というあの瞬間です。

でも、考えてみると不思議ですよね。どうして赤い服を着たお髭のお爺さんが、大人しく寝ている子のところにだけやって来て、プレゼントを置いて行くのでしょうか。元々のキリスト教のお祝いとは少し違うような気もするし、日本のクリスマスともどこかズレているような……。それでも毎年12月24日から25日にかけて、この物語は世界中で語られ続けています。

このお話の根っこには「聖ニコラウス」という、昔々本当にいたとされる人物の行いがあり、そこにヨーロッパ各地の風習や後から広がったアメリカのクリスマス文化が重なって、今のサンタクロースの姿が出来上がりました。つまりサンタさんは、誰か1人のモデルというより、長い時間をかけて少しずつ形になってきた“優しさの塊”のような存在なのです。

この記事では、12月の大事な楽しみとしてすっかり定着したサンタクロースについて、どこから来たお話なのか、どうやって今の姿になったのか、何故、プレゼントを配ることになったのかを、順番に辿ってみます。お子さんに話して聞かせる時にも使えるように、難しい言葉は出来るだけ柔らかくしてありますので、肩の力を抜いて読んでくださいね。

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第1章…キリストの祝いと聖ニコラウスの日が混ざったら

12月24日と25日は、もともとキリストの誕生をお祝いするための日として大切にされてきました。教会では礼拝をし、家族で集まり、静かに祈りを捧げる――そんな厳かな行事です。ところが今、私たちが知っている「サンタさんがやって来る賑やかな夜」は、そこにもう1つ別の流れが重なって出来上がったものだと言われています。

そのもう1つの流れが「聖ニコラウス(聖ニコラオ/セント・ニコラス)」を称える日です。これは地域によって日付に違いがありますが、ヨーロッパでは12月6日頃にこの人を記念する日がありました。やさしくて、困っている人にこっそり施しをしたという話がたくさん残っている人物で、後の人々からとても慕われました。

本来のクリスマスだけでは、赤い服のおじいさんは登場しません。聖書の中にそういう人が出てくるわけでもありません。ところが「困っている人のところへそっと贈り物を届けた司教さま」の話が12月初めに行われていて、さらに12月24日・25日の喜びの行事と時期が近かったため、少しずつ「冬の贈り物を持ってくる人」というイメージが重なっていったと考えられています。

聖ニコラウスってどんな人?

聖ニコラウスは、3世紀頃から4世紀頃に実在したとされる教会の偉い人です。お金に困っている家の前にそっと金貨を投げ入れて助けた話や、子どもを守った話が伝わっています。特に「相手に気づかれないように助ける」というところが印象的で、ここが後に「寝ている間に贈り物を置いていく人」という形に受け継がれていきました。

この「見返りを求めずに恵みを届ける」という姿があまりにも人々の心に残ったので、やがて聖ニコラウスは冬になると子どもたちに贈り物を持ってくる守り手のような存在として語られるようになります。宗教的なお祝いと、子どもが楽しみにする行事が1つの季節に寄り添うようになったわけです。

どうして日本のクリスマスにも残ったのか

日本にクリスマス文化が入ってきた時、既にヨーロッパやアメリカでは「聖ニコラウスの優しさ」+「キリストの誕生を祝う日」+「家族で楽しく過ごす冬の行事」という形がまとまっていました。日本では宗教色よりも「家族で楽しむ」「子どもに贈り物をする」という温かい部分が受け入れられたため、サンタさんの方が前に出てきた、というわけです。

つまり、サンタクロースの出発点には、元々、別々だった2つの12月の行事がありました。厳かな祝いと、優しさの思い出。これが長い時間をかけてくっついて、今の「赤い服の贈り主」という姿になったと考えると、とても綺麗に筋が通りますよね。


第2章…「サンタクロース」という姿が出来上がるまで

第1章でお話ししたように、元々の出発点は「困っている人にそっと贈り物をした聖ニコラウス」でした。ところが今わたしたちがイメージするサンタさんは、ふっくらしていて、赤い服を着て、白い髭をたくわえて、トナカイのソリに乗って空を飛びますよね。これは昔の司教さまの姿とはちょっと違います。

この「皆が同じように思い浮かべるサンタさんの姿」がまとまったのは、主にヨーロッパからアメリカへと物語が渡ってからと言われています。いろいろな国で語られていた冬の贈り物の話が、アメリカで絵本や詩、新聞を通して1つの形に整理されていったのです。

赤い服と白い髭のわけ

聖ニコラウスは教会の人でしたから、元々、赤い衣を身につけていたという説明もありますし、キリスト教で赤は「愛」や「命」を表す特別な色とされているので、冬のお祝いの色として選ばれやすかったとも言われます。ここに雪のような白い髭が加わると、寒い国の冬にもピッタリのやさしいお爺さんの姿になります。

しかも、赤・白・金の組み合わせは、12月の飾りにもよく使われる色合いです。人々が家の中を飾る色と、サンタさんの服の色が似てくると、「この人が来る時がクリスマスだ」と子どもたちは覚えやすくなります。こうして「赤い服の人=冬に贈り物を持ってくる人」というイメージが広がっていきました。

アメリカでの童話が決定打に

1823年、アメリカで「クリスマスの前の晩」という詩が発表されます。ここでは、夜おそくに小さなソリでやってくる陽気なお爺さんが描かれていて、トナカイたちの名前まで出てきます。この詩の人気がとても高くて、「クリスマスの夜に、あの赤い人が来る」という考え方がグッと広がりました。

そのあと19世紀から20世紀にかけて、雑誌や広告の挿絵でサンタさんが描かれるたびに、ふっくらした体つきや丸いほっぺ、やわらかな笑顔が強調されていきます。何度も何度も描かれているうちに、「サンタクロースってこういう見た目だよね」と世界中で共有されるようになりました。

名前が変わって世界に広がる

元々の名前はオランダ語で「シンタクラース」と発音されます。オランダからアメリカに人々が移り住んだときに、この名前も一緒に渡りました。英語に混ざると、少しずつ音がやわらかくなって「サンタクロース」と呼ばれるようになり、これが日本にも入ってきた、というわけです。

つまり、サンタさんの姿は最初から決まっていたのではなくて、

「人を助けた聖ニコラウスの心」
+「冬を祝う色づかい」
+「物語の中で描かれた陽気なおじいさん」

が長い時間をかけて1つにまとまったものなのです。だからこそ、どの国でも少しずつ見た目や呼び名が違っても、「贈り物を持ってくるやさしい人」という芯の部分だけは同じまま残っているのですね。


第3章…靴下にそっと入る贈り物の物語

サンタクロースがどうして「贈り物を置いていく人」になったのかを辿ると、やはり聖ニコラウスに行き着きます。彼について語られるお話の中に「貧しい家にこっそり金貨を投げ入れた」という有名な場面があり、これが後の「靴下にプレゼントを入れる」という風習の元になった、と伝えられています。

昔の家には暖炉がありました。寒い季節にはそこで火をたきます。火のそばにはぬれた靴下や手袋を干すことがあり、そのぶら下がった靴下に、たまたまニコラウスの投げた金貨が入った――というやさしい伝承が残っています。お金に困っていた家はこれで助けられ、その行いは「だれにも気づかれずに人を助ける立派なこと」として語り継がれました。

やがてこの話が子どもたちに向けて語られるようになると、「よい子でいれば、夜のあいだに贈り物が入るよ」と少しずつ形を変えます。人を助けるお金だったものが、子どもを喜ばせる品物に変わっていくのは、人びとの暮らしが豊かになっていくにつれて、贈り物の意味も「命をつなぐもの」から「心があたたかくなるもの」へと移っていったからでしょう。

金貨からお菓子とおもちゃへ

ヨーロッパでは、クリスマスの贈り物といえば長い間「お菓子」でした。手づくりのクッキーや果物など、家で用意できるものを靴下に入れておくのが当たり前だったのです。これは、もともとが金貨1枚という“ささやかな助け”から始まっている名残りと言えます。

ところが時代が新しくなると、物語の中のサンタさんは世界じゅうを飛び回る大きな存在になっていきます。子どもたちも本やテレビでその姿をよく知るようになり、「あの人なら何でも持ってきてくれそうだ」と考えるようになります。ここでお菓子だけだった贈り物が、文房具や人形、さらにおもちゃへと広がっていきました。

つまり、贈り物の入れ物は昔のまま「靴下」なのに、中に入るものだけが時代に合わせてふくらんでいった、というわけです。今でもヨーロッパの一部では、靴下に入るような小さなプレゼントを「これは聖ニコラウスからね」と区別して渡す家庭もあるそうです。元の話を大切にしている感じがして、ちょっと素敵ですよね。

日本で起きたすれ違い

一方で日本に伝わったときには、この「ささやかな贈り物」という部分が少し弱まりました。日本ではクリスマスがもともと宗教行事ではなく、冬の楽しいイベントとして受け入れられたので、家族や恋人へのプレゼントの日としてぐっと華やかになっていったのです。お店もこの時期にあわせていろいろな品物を並べるようになり、「クリスマス=特別なものをもらう日」という雰囲気が強まりました。

でも、本来のサンタさんの心は「目立たないところで人を助ける」「子どもを喜ばせる」「冬を無事に越せるようにする」という、とてもあたたかくて静かなものです。靴下にそっと贈り物を残していく姿は、その心を形にしたものなのです。

だから、もし今年の12月にだれかに贈り物をするときは、少しだけこのお話を思い出してみてください。高価な品物でなくても、相手が「どうしてわたしのことがわかったのかな」と思うような気持ちのこもった品なら、それはもう立派に“サンタクロースの贈り物”になっていますよ。


第4章…国ごとに違うサンタさんと日本流クリスマス

ここまで読んでいただくと「サンタさんって、もとは聖ニコラウスなんだなあ」と見えてきますが、実は世界を見渡すと、同じ時期に似たような“冬の贈り物を届ける人”がたくさんいます。住む場所や歴史によって姿がちょっとずつ違っていて、それぞれの国の冬の暮しが映っているのがとても面白いところです。

ヨーロッパでは、今でも12月6日に聖ニコラウスがやって来ると考える地域があります。この日には、子どもたちは靴を玄関に並べておき、そこにお菓子や小さな贈り物を入れてもらうのです。12月24日や25日はあくまでキリストの誕生をお祝いする日で、贈り物の日はまた別、という考え方ですね。

ロシアや東欧の「おじいさん」

ロシア方面に行くと「ジェド・マロース(霜のおじいさん)」という冬の使者が登場します。青や白の衣装をまとって雪のように現れ、孫娘と一緒に贈り物を配って回るというお話がよく知られています。ここでは宗教というより、長い冬を楽しく乗り切るための民話のような色合いが強く、雪国らしい静かな華やかさがあります。

また、国によってはやさしいお爺さんだけでなく、悪いことをした子には叱る役の相棒がついてくることもあります。これは「良い子でいると贈り物がもらえるよ」という教えを分かりやすく伝えるためのもの。姿かたちは違っても、子どもに善い行いを促すところはどこも共通しているのがよく分かります。

ドイツやオーストリアの「幼子が贈る」という形

ドイツやオーストリアでは、サンタさんの他に「クリストキント(幼子キリスト)」が贈り物を持ってくるとされる地域もあります。これはキリストの誕生をとても大切にしている地域の表れで、「神様からの贈り物として受け取る」という意味付けが強くなっています。赤い服のお爺さんだけが世界標準、というわけではないのですね。

日本ではどうなったのか

では日本ではどうして「12月24日~25日にサンタさんが来る」という形で落ち着いたのでしょうか。これは、日本に入ってきたタイミングで、アメリカで広がっていた“家族でツリーを囲み、夜に赤い服のおじいさんがやって来るクリスマス”のスタイルがそのまま紹介されたからです。宗教として細かく分かれていた行事よりも、「家族で楽しむ冬のイベント」としてまとまった形が受け入れられた、というわけです。

日本ではさらに、イルミネーションやケーキ、プレゼント交換などが一緒になって独自の華やかさが生まれました。これはこれで1つの文化として完成しています。元のヨーロッパの姿と比べると、「贈り物をくれる人」のところだけをとても大切にして前面に出しているのが日本らしいところです。

こうして見てくると、サンタクロースというのは1人だけのことを指しているのではなく、冬に子どもや家族を喜ばせようとした人々の願いが、国ごとに表情を変えたものだと分かります。物語が伝わる道筋が違えば服の色も変わるし、登場する日付も変わる。けれど「寒い季節に、誰かを思って贈り物をする」という中心は、どこでも同じなのです。

この後のまとめでは、こうしたお話を12月の家庭でどう活かすか、もう一度やさしく振り返っておきましょう。

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まとめ…今夜誰かに話したくなるサンタの由来

ここまで辿ってみると、私達が当たり前のように「サンタさん」と呼んでいる存在は、1人の英雄ではなくて、長い時間の中で育ってきた冬の物語だということがわかります。

まず、もとはキリストの誕生をお祝いする12月の行事があって、そこに「困っている人にそっと贈り物をした聖ニコラウス」のお話が重なりました。これが第1の土台です。誰にも気づかれずに助ける、子どもを守る、ささやかでも心のこもった贈り物をする――このやさしい精神が、のちの「夜の間にプレゼントを置いていく人」の姿に繋がっていきました。

次に、アメリカで語られた童話や挿絵が、赤い服・白いひげ・トナカイという、今わたしたちが思い浮かべる姿をはっきりさせました。何度も絵に描かれ、本に載り、人から人へ語られることで、「サンタクロースといえばこの人」というイメージが世界で共有されていったのです。

さらに、国や地域ごとに「うちの冬にはこう来てくれるよ」という形で受け取られ、日本では家族イベントとしての色が強く出ました。宗教的な部分は少し和らげられ、子どもが楽しみに出来る日、家族がちょっとだけ奮発して温かく過ごす日として、12月24日~25日が定着していきました。

大事なのは、どの国でも中心にあるのが「寒い季節に、誰かを思って贈る」という気持ちだということです。高価な物でなくても、「あなたのことを考えて選びました」という小さな贈り物なら、それはもう立派にサンタクロースの物語の仲間入りです。

今年の12月、もし枕元に何かを置くなら、今回の由来をちょっとだけ思い出してみてください。手紙を添えるのもいいですね。「昔、聖ニコラウスという人がいてね……」と一言だけ書くだけで、子どもたちに伝わる物語の温度がグッと上がります。

そして来年また同きた時、同じ話をもう一度してあげてください。サンタクロースとは何百年もそうやって語り継がれてきた人のやさしさそのものなのです。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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