プリントより縁日!初午の稲荷で笑って思い出す認知症レクリエーション作戦

[ 2月の記事 ]

はじめに…「今日はお稲荷さんへ遠足です」って言ったら顔が変わった話

レクリエーションを考えるたびに、現場の空気って不思議だなと思うんです。こちらが「はい、脳トレですよ〜」と明るく言ったつもりでも、プリントを見た瞬間に表情がスン…と固まる方がいる。逆に、同じように“頭を使う”場面なのに、「縁日に行きませんか?」のひと言で、急に目がキラッとする方もいる。頭の中のスイッチって、ボタンの場所が人それぞれなんですよね。

認知症の方にとって大切なのは、「出来た・出来ない」の点数みたいなものよりも、「楽しかった」「懐かしい」「あれ、これ知ってる!」という気持ちが湧く時間です。気持ちが動くと、自然と会話が増えたり、周りを見る力が戻ったり、足取りが軽くなったりすることがあります。これって、机の上だけではなかなか起こり難い変化です。

そこで今回の主役が『初午(はつうま)』です。2月の最初の午(うま)の日に、お稲荷さんで行われるお祭りで、地域によっては縁日の屋台や太鼓、のぼり旗で賑わいます。昔から親しまれてきた行事だからこそ、高齢者の方の「知ってる」「行ったことある」「あの音だ」という記憶の引き出しに触れやすい。つまり、わざわざ“脳トレっぽく”しなくても、自然に頭も心も動きやすいんです。

もちろん外出には注意点もあります。人混み、音、寒さ、段差、迷子の心配。けれど、だからこそ準備の工夫で「安心して楽しめる」レクリエーションに変わります。しかも、当日だけで終わらせず、前日や翌日に繋げると、楽しさがジワジワ長持ちして、施設全体の話題にもなりやすい。何より職員側も「今日、いい顔見たなあ…」と、地味に心が回復します。これ、けっこう大事です。

この記事では、プリント中心の活動が悪者にならないようにしつつ、「大人の誇りを守って、気持ちが動く時間を作る」ために、初午の縁日をどう取り入れるかを、現場目線で楽しくまとめていきます。読んだ後に、「よし、うちも“小さな初午”から始めてみようか」と思えるような形にしますね。

【2026年の初午は2月1日】

[広告]

第1章…脳トレはテストじゃない!大人のプライドを守る“遊びのコツ”

認知症の方の「脳トレ」を考える時、最初にぶつかる壁があります。内容の難しさ以前に、“やらされ感”が出た瞬間に、心のシャッターが降りることがあるんです。例えば、プリントを配っただけで「学校みたいだねぇ」と苦笑いされたり、「私、もう無理だよ」と先に降参されたり。こちらは善意で「頭の体操になりますよ」と言っているのに、相手の中では「出来ないと恥ずかしい」「間違えたら怒られそう」という気配がムクムク育ってしまうことがあります。

ここで大事なのは、認知症の方が“子どもに戻る”わけではない、という点です。記憶が薄れたり混乱が起きたりしても、大人として積み上げてきた誇りや、人前での気まずさ、出来ない時の居心地の悪さは、案外しっかり残っています。むしろそこは最後まで残りやすい、と現場の肌感覚でも感じます。だから、「脳トレ」という言葉そのものが、相手によっては地雷になることもあるんですよね。踏んだら最後、職員の靴下に“気まずさ”がベッタリ張りつきます。けっして脱げません。

じゃあどうするか。答えはシンプルで、「テストに見えない形」に変えることです。ここでのコツは、脳を鍛えるより先に、気持ちをほぐすこと。頭って、緊張していると回らないじゃないですか。私たちだって、突然「今から暗算やってください」と言われたら、「え、メガネどこ?」ってなりますよね。認知症の方ならなおさら、焦りが混乱に火をつけやすい。だから、目的は同じでも入口を変えるんです。

例えば、プリントに向き合うより、「これ、昔あったよね?」と話が始まるもの。匂い、音、景色、手触り、屋台の賑わい、太鼓の響き。そういう“体験の入口”は、正解・不正解の世界ではなく、「思い出せた」「懐かしい」「面白い」という世界に連れていきます。そこに入れたら勝ちです。勝ち負けを言い出した時点で、もう勝ってます。ややこしいけど。

ここで初午が効いてきます。稲荷神社、赤い鳥居、いなり寿司、甘酒、のぼり旗。地域差はありますが、多くの方にとって「見たことがある」「聞いたことがある」要素が揃っています。しかも、昔の行事は家族や地域と結びついていることが多いので、「誰と行った」「どこで食べた」「帰りに転んだ」みたいな、笑える小事件まで一緒に出てきたりします。この“思い出のオマケ”こそ、プリントでは出ません。プリントは黙々と出題しますが、縁日は勝手に話題を配ります。優秀です。

もちろん、施設の中だけで完結させる工夫もできます。外出が難しい方がいる日もありますし、天候もありますし、職員数の都合もあります。だから第1章では「テストっぽさを外す」という考え方を、室内でも使える形に落としておきます。

「脳トレ」を前に出さないだけで空気が変わる

まず、呼び方を変えるだけでも空気が変わります。「脳トレしましょう」より、「初午の話しようか」「お稲荷さんの思い出ある?」の方が、参加のハードルがグッと下がります。目的は頭を動かすことでも、表向きは“おしゃべり”で良いんです。気持ちが動けば、頭も勝手に動きます。

例えば、職員が小道具を1つ持ってくる。小さないなり寿司の写真でも、稲荷神社の鳥居の写真でも、折り紙で作った小さな狐でも良い。すると会話が始まりやすい。「これ何だっけ?」と聞くのはクイズっぽいので、敢えて「これ、見たらお腹空くよねぇ」と言ってみる。すると「いなり寿司だよ」「昔は…」と、向こうから言葉が出てくる確率が上がります。こちらが答えを取りに行かない。相手が話したくなる空気を置いておく。これが“テストじゃない”入口です。

失敗を作らない設計が一番の優しさ

認知症の方が苦手なのは、難しい問題だけではありません。「失敗した感じ」が残ることです。短期記憶が弱いと、失敗の理由は忘れても、気分の悪さだけが残ることがある。だからレクリエーションは、失敗を極力作らない設計が大切です。

初午の話題なら、正解は1つじゃありません。「初午っていつ?」と当てさせるより、「初午って聞くと何を思い出す?」の方が、全部が正解になります。全部が正解だと、参加者は安心して話せます。安心して話せると、職員も安心します。職員が安心すると、声が優しくなります。声が優しくなると、場の緊張が減ります。こうして、良い循環が回ります。地味だけど、これが強い。

“頑張る脳トレ”より“気づいたら動いてた”を狙う

理想は「やったぞ!」ではなく、「あれ、もうこんな時間?」です。集中できる時間は、認知症の方にとって大きな価値があります。ただしそれは、根性で乗り切る集中ではなく、楽しくて引き込まれる集中です。

縁日の話題は、自然に五感を使います。太鼓の音の話をすると耳が働き、鳥居の赤を思い出すと視覚が働き、いなり寿司の話で味覚の記憶が動く。さらに「誰と行った?」で人の記憶、「帰り道は?」で場所の記憶、「何を買った?」で選択の記憶が動きます。ここまで来ると、もう立派な“頭の体操”ですが、本人は体操している気がしません。むしろ「雑談してただけなのに、今日は楽しかったね」となります。これが最高です。

第1章の結論はこうです。認知症の方のレクリエーションは、点数よりも、誇りと安心を守ること。テストに見えない入口を用意して、失敗を作らず、気づいたら夢中になっていた時間を作ること。そのために初午は、かなり使える季節の“しかけ箱”なんです。

次の章では、「気持ちのスイッチ」をどう入れるかを、もう少し具体的に、笑いも混ぜつつ深掘りしていきますね。


第2章…笑う・驚く・うなずく!“気持ちスイッチ”が入る仕掛けの作り方

認知症の方のレクリエーションで、一番頼りになるのは「正しさ」ではなく「気持ち」です。ここ、現場だと本当に実感します。難しい問題を完璧に解けた日よりも、フッと笑った日、急に話し始めた日、目が合って頷いた日。そういう日こそ、「今日は良かったな」と職員の心に残りやすいんですよね。

そしてこの“気持ちスイッチ”は、押そうとして押すものというより、「押せる位置に、そっと置いておく」ものに近いです。強引に押すと壊れます。最新のリモコンみたいに、落としたら反応しなくなります。だから第2章では、押しつけずに自然にスイッチが入る仕掛けを、初午の縁日を例にして組み立てていきます。

「目的を説明し過ぎる」と逆にしんどくなることがある

レクリエーションって、真面目な職員ほど「今日はこういう効果があって…」と丁寧に説明したくなります。もちろん悪いことではないんです。でも認知症の方にとっては、その説明が長くなるほど、「出来なきゃいけない」「期待に応えなきゃいけない」というプレッシャーになることがあります。

例えば「記憶を刺激して…」「集中力を高めて…」と続いた瞬間に、相手の顔が「え、そんな大事なことなの?」って雲行きになる。そこでこちらが気づかずにさらに熱弁すると、場が静まり返って、なんなら職員の喉だけが元気に動くという悲劇が起きます。目的は、職員の中にあれば十分。本人に伝えるのは「楽しいことをしようね」で足ります。むしろその方が、ちゃんと目的に近づきます。

初午の場合も同じです。「初午は2月の最初の午の日で…」と講義が始まると、縁日が急に社会科になります。そうなると、お稲荷さんもびっくりして鳥居の影に隠れます。だから導入は短く、軽く。「近くでお祭りがあるんだって。ちょっと見に行ってみる?」これくらいが、一番強いです。

感情は“最後まで残りやすい”からこそ丁寧に扱う

認知症が進んでも、喜怒哀楽の感覚は比較的残りやすいと言われます。現場でも、言葉が少なくなっても、表情や仕草で「好き」「嫌」「落ち着く」「怖い」を示してくれる方がいますよね。だからこそ、気持ちが動く場面を意識して作ると、レクリエーションは一気に生き物になります。

初午の縁日には、感情を動かす材料が揃っています。太鼓の音で胸がドンとする。屋台の匂いでお腹が鳴る。赤い鳥居に目が引き寄せられる。人の声で「ああ、お祭りだ」と分かる。こういう刺激は、紙の上の問題と違って、脳だけでなく身体ごと「今ここ」に連れてきます。

ただし、刺激は多ければ良いわけではありません。強過ぎる刺激は混乱を呼びます。大事なのは「ほど良さ」です。キラキラの縁日を、過剰に浴びせない。少しずつ、職員が横で受け止めながら、安心のクッションを挟んで届ける。これが“気持ちスイッチ”を安全に押すコツです。

「混乱」を減らすのは説明より“安心のセット”である

認知症の方が混乱しやすい場面は、実は「情報が多い」ことだけではありません。「何をしたら良いか分からない」「次が見えない」「置いていかれる」が重なると混乱が起きます。だから縁日レクでは、説明を増やすより、安心のセットを増やします。

例えば歩く時は、横につく人が“同じリズム”で歩く。手を繋ぐ、腕を組む、カートを一緒に押すなど、本人が「一人じゃない」と感じられる形にします。声掛けも、「あっち行きます」「次は右です」より、「ゆっくり行こうね」「一緒に見ようね」の方が落ち着くことが多いです。方向より、関係性の言葉。これが効くんです。

そしてもう1つ大事なのが、選択肢を増やし過ぎないことです。縁日は屋台が多いので、「どれでも好きなのどうぞ」は、意外と難題になります。迷うこと自体が疲れに繋がることもあるからです。なので「甘いのとしょっぱいの、どっちが良い?」くらいの、選びやすい二択がちょうど良い。これだけでも、「自分で決めた」という気持ちが生まれて、スイッチが入ります。

“会話の火種”は質問より実況して少しだけ盛る

会話を引き出そうとして「昔は行ってましたか?」と聞くと、上手く出ないことがあります。記憶の入口が見つからないと、質問が重たく感じるからです。そんな時は質問より実況です。「わあ、太鼓の音すごいね」「赤い鳥居がズラッと並んでる」「この匂い、食欲が目覚めるやつだね」みたいに、今見えているものを声にする。すると相手が「昔はね…」と勝手に続けてくれることがあります。

さらに、少しだけ盛ると効果があります。もちろん大袈裟に嘘をつくのではなく、場を明るくする程度の盛りです。「この匂い、胃袋が起床しました!」とか、「今日はお稲荷さんに呼ばれた気がする!」とか。職員が笑っていると、利用者さんもつられて笑いやすい。笑いは最強の合図で、「ここは安全だよ」のサインになります。

縁日は当日だけじゃない、前日と翌日で“気持ちスイッチ”が長持ちする

初午の縁日をレクリエーションにするなら、当日だけで完結させるともったいないです。前日に小さく予告して、「明日、お祭り見に行こうね」と楽しみを仕込む。これだけで、翌日への期待が生まれます。期待は、立派な心の運動です。

翌日も同じで、「昨日どうだった?」と聞くより、「昨日の太鼓、凄かったね」「あの鳥居、綺麗だったね」と実況の復習をする。写真を見せられるならなお良いですが、なくても構いません。話題が戻ってくるだけで、思い出の回路がもう一回動きます。すると、当日だけの出来事が、数日分の“楽しかった”になります。これ、現場の空気を明るくする力が地味に強いです。

第2章の結論はこうです。認知症の方のレクリエーションは、説明で納得してもらうより、安心して笑える空気を作ること。気持ちが動くと、会話が動き、身体が動き、結果として頭も動きます。初午の縁日は、そのスイッチを押しやすい材料がたくさんある。ただし押しつけず、ほど良く、職員の安心を添えて。これで「良い時間」を作れます。

次の章では、いよいよ実際に初午の縁日に参加する時の段取りを、混乱を防ぎつつ楽しさを最大化する形でまとめていきますね。


第3章…初午の縁日へ出陣!迷子ゼロ・混乱ゼロを目指す安全お出掛け術

初午の縁日に行くレクリエーションって、言ってしまえば「外出」なんですが、気持ちはちょっと“遠足”です。遠足って、前の日からワクワクしますよね。大人になっても、何故かワクワクしますよね。なのに当日、職員側の顔だけが修学旅行の引率みたいに真剣になる。わかります。安全は命です。でも、真剣過ぎて眉間にシワが刻まれると、利用者さんが「え、何か事件?」って心配しちゃうので、真剣さは胸にしまって、表情は明るめでいきましょう。心はバリケード、顔は春の陽だまりです。

初午はお稲荷さんのお祭りで、赤い鳥居、のぼり、太鼓の音、屋台の匂いなど、思い出の引き金がたくさんあります。だからこそ、刺激が強過ぎると混乱に繋がることもあります。第3章では「楽しさを逃さず、混乱は増やさず」を合言葉に、現場で実装しやすい段取りをまとめます。

行く前に勝負は決まる~下見と「安心の仕込み」~

まず、可能なら下見が最強です。神社の境内って、平らに見えて意外と段差があります。砂利、石畳、坂、狭い通路。屋台の前は人が溜まりやすく、音も匂いも情報も大渋滞します。そこで下見をしておくと、「ここで一息」「ここは混むから通らない」「ここなら座れる」が事前に見えて、当日の焦りが激減します。焦りが減ると、声が優しくなります。声が優しくなると、利用者さんも落ち着きます。落ち着くと、笑えます。笑えるともう成功です。

参加する方の選定も、現場の優しさが出るところです。「行きたい」を尊重しつつ、当日の混み具合や音の大きさ、寒さへの耐性、歩行状態、トイレの間隔など、いつもの生活のリズムを思い出して決めるのが現実的です。もちろん“行けない人を作る”のが目的ではありません。外出が難しい方には、施設内で「初午ミニ縁日」を用意すると、同じテーマで一緒に盛り上がれます。外出組だけが特別にならないようにするのも、空気作りとして大切です。

それから、意外と大事なのが「宗教的な気持ちの確認」です。初午はお稲荷さんの行事なので、参拝そのものを負担に感じる方もいらっしゃいます。ここは、無理に“拝む”方向に寄せず、「縁日の雰囲気を楽しむ」「屋台を見て季節を感じる」「太鼓の音を聴く」といった、文化体験としての参加に寄せると、参加の幅が広がります。神社に行く=参拝強制、ではありません。散歩の延長で、鳥居の赤を見て「綺麗だね」と言えるだけで十分です。

最後に、当日の“安心アイテム”も派手に増やし過ぎず、必要最低限を気持ち良く持ちます。寒い日は首元、乾燥の日は水分、長い滞在は座れる工夫。こういう準備は、利用者さんのためでもあり、職員の心のためでもあります。心の中で「大丈夫、大丈夫、準備した」と唱えられるだけで、顔が柔らかくなりますからね。

当日の動線は「短く・ゆっくり・戻れる」が正義

当日は、欲張らないのがコツです。縁日は見どころが多いので、つい「あそこも見せたい」「これも食べさせたい」となりがちですが、詰め込むほど混乱の種が増えます。おすすめは、最初に“落ち着ける場所”を確保してから動くことです。到着したら、いきなり屋台のど真ん中へ突撃しない。まずは境内の端や少し空いた場所で、「来たね」「音がするね」と呼吸を整える。ここで利用者さんの表情を見て、目線が合うか、足取りはどうか、音にびっくりしていないかを確認します。

移動中の声かけは、方向指示より“関係の言葉”が効きます。「右に曲がります」より「一緒に行こうね」「ゆっくりで大丈夫」。手を繋ぐ、腕を組む、車椅子の操作をゆっくりに合わせるなど、“同じリズム”を作ると安心感が出ます。安心感が出ると、景色を見る余裕が生まれて、そこから思い出話に火がつきやすくなります。

屋台を楽しむ時は、選択肢を減らすのが親切です。屋台がズラッと並ぶと、どれも魅力的で、逆に迷って疲れます。だから「甘いのとしょっぱいの、どっちが良い?」みたいな二択がちょうど良いんです。選べた、という感覚が残ると、本人の誇りが守られます。誇りが守られると、表情が保たれます。表情が保たれると、写真がだいたい良い顔になります。写真が良いと、あとで振り返りの材料にもなります。全てが繋がってます。

混乱の芽は「人混み・音・疲れ」~早めに摘むコツ~

縁日で混乱が起きやすいタイミングは、だいたい決まっています。人が急に増えた時、太鼓や放送が大きく鳴った時、歩き続けて疲れが溜まった時。ここで大切なのは、「本人が限界を訴える前」に先回りすることです。言葉でうまく伝えられない方もいますし、我慢強い方ほど急に崩れます。

だから、“小休憩”を予定として組み込みます。座って、温かい飲み物や水分を一口。周りを眺めて、「賑やかだね」と一緒に笑う。休憩はサボりではなく、成功のための技術です。ここを堂々とやると、職員の心拍数も落ちてきて、全体が穏やかになります。

もし音が強くて表情が固くなる方がいたら、「音の少ない場所に一旦退避」が最優先です。無理に「大丈夫大丈夫」と押し切ると、本人も職員も苦しくなります。退避して落ち着いたら、また戻るか、戻らずに境内の景色を楽しむ方向に切り替える。切り替えの判断を“失敗”と捉えないことが大事です。むしろ「安全に楽しむための上手な舵取り」です。

それと、迷子対策は“迷子にさせない”より“迷っても戻れる”を含めて考えます。常に横につくのは基本として、集合場所を決めておく、目立つ場所を目印にする、短い範囲で動く。万が一のために、連絡先や施設名が分かる情報を持つなど、出来る範囲で備えます。備えがあると、職員の顔に余裕が出ます。余裕が出ると、利用者さんは安心します。安心すると、縁日の“良いところ”がちゃんと届きます。

縁日を「回想法」に変えるのは質問じゃなく実況

現地で会話を引き出す時は、質問攻めにしないのがコツです。「昔も来ましたか?」と聞くより、「わあ、太鼓の音が体に響くね」「鳥居が赤くて綺麗」「良い匂いだね、胃袋が起きたね」みたいに、今の景色を言葉にする。実況にすると、相手は答えを探さずに済みます。するとフッと「昔はね」と出てくることがあります。

そして、話が出てきたら、正しさの確認はしません。年代がズレても、場所が混ざっても、そこは“気持ちの旅”です。「そうだったんだね」「楽しかったんだね」と受け止めると、その人の世界が守られて、表情が柔らかくなります。ここが、縁日レクの強いところです。

第3章のまとめとしてはこうです。初午の縁日は、思い出の引き金が多い分、段取りで安心を作ると一気に化けます。下見で不安を減らし、動線を短くして、休憩を堂々と入れ、刺激が強ければ退避して切り替える。これだけで「外出=危ない」から「外出=楽しい」に変わります。

次の章では、帰ってからの“もう一回楽しめる仕掛け”を作って、初午の余韻を施設の中に広げる方法をまとめますね。


第4章…帰ってからが本番!写真・お土産・いなりで「もう一回」を作る

初午の縁日は、行って終わりにすると「楽しかったね」で完結します。もちろんそれでも十分良い。でも、ここで欲張るとレクリエーションが“二度おいしい”どころか“三度おいしい”になります。何故なら、認知症の方にとって大事なのは、出来事そのものだけでなく「後から安心して思い出せる回数」だからです。思い出すたびに、気持ちがもう1回動く。気持ちが動くと、会話が動く。会話が動くと、周りとの繋がりが強くなる。繋がりが強くなると、施設の空気が少し明るくなる。地味ですが、これが積み重なると強いんです。

しかも、帰ってからの工夫は、外出が難しかった利用者さんにも“同じ話題”を届けられます。外出組だけが特別になり過ぎないようにする意味でも、ここはとても大切です。第4章では、初午の余韻を施設の中に持ち帰って、全員で「もう一回」を作る方法をまとめます。ここからは“お稲荷さんの仕込み”が始まります。狐もびっくりの仕込みです。

帰所直後の5分が勝負~「お疲れさま儀式」で安心に着地させる~

外出から帰ってきた直後は、体も心も情報がいっぱいです。楽しかった人ほど興奮していることもあるし、疲れが出てぼんやりすることもある。だから帰所したら、まず「終わったよ」「戻ってきたよ」という安心の着地を作ります。

ここで大事なのは、盛り上げ直すよりも“ホッとする”方向です。「お帰りなさい、寒くなかった?」「お茶飲もうね」「座って一息つこうね」と、体の安全と安心を先に満たす。これは脳トレというより、心の安全確認です。ここが整うと、その後に思い出話が自然に出てきます。施設に戻って放置時間が長いとか逆にここの扱いが雑だと、疲れが不機嫌として出てしまって、せっかくの良い時間が「なんか疲れたね」で終わっちゃいます。もったいない。

思い出の回路は「質問」より「実況の再放送」で動く

帰ってから「どうだった?」と聞くと、うまく言葉が出ない方もいます。そこで、また質問攻めにすると、本人は答え探しで疲れます。おすすめは、当日の実況を“短く再放送”することです。

例えば「太鼓の音、体に響いたね」「鳥居が赤くて綺麗だったね」「屋台の匂いでお腹が鳴ったね」と、こちらが先に情景を置く。すると、相手はその情景に乗っかるだけで良い。「そうそう」「昔もあんなだった」「あれ食べたかった」みたいに、言葉が出やすくなります。ここで間違い探しはしません。年代が混ざっても、場所が違っても、気持ちが動いているなら成功です。

そして、ここでこっそり“褒め”を仕込むと、次に繋がります。「今日は歩くの上手だったね」「人が多いのに落ち着いてたね」「いい顔してたよ」。褒めるのは点数ではなく、その人の“居方”です。認知症の方は「出来ない自分」になりやすいので、「出来た自分」を小さく積み上げる言葉が効きます。

写真は万能だけど無くても勝てる~「記念の一言」が宝物になる~

写真が撮れたなら、ぜひ活用します。本人が写っている写真だけでなく、鳥居、のぼり、屋台、境内の景色など、情景の写真でも十分です。写真は“記憶の取っ手”になって、思い出しやすくしてくれます。

でも、写真がなくても大丈夫です。スマホの電池が切れる日もありますし、撮影が負担になる方もいます。そんな時は「記念の一言」を作ると強いです。例えば「初午、太鼓がドーンの日」「お稲荷さんで胃袋起床の日」みたいに、皆で笑える合言葉を付ける。合言葉があると、翌日もその一言で話題が戻ってきます。言葉って、実は写真より軽くて持ち運べるんですよね。

お土産は“物”より“役割”が大事~持ち帰り係で誇りを守る~

お土産は楽しいです。だけど「買うこと」より、「誰が何を担当したか」という役割が、認知症の方には効くことがあります。例えば職員と一緒に「皆の分、これにしようか」と相談して選ぶ。持ち帰りの袋を一緒に持つ。「これは皆に見せようね」と言って大事に扱う。役割があると、その人は“参加者”から“メンバー”になります。誇りが守られます。

そして、外出できなかった方に対しても、同じテーマで渡せる工夫をすると一体感が出ます。「今日は初午だったから、雰囲気だけでも」と、甘い物を一口だけ分けたり、鳥居の話を共有したり。ここが出来ると、施設の中で初午が“皆の行事”になります。

いなり寿司は最強の橋渡し~行事食を「物語」に変える~

初午といえば、やっぱりいなり寿司です。ここは真面目に言いますが、行事食は思い出を引き出す強い道具です。味と匂いは、記憶の扉をノックする力があります。

もし可能なら、初午の日の昼食やおやつに「いなり風」を少し入れるだけでも、話題が繋がります。外出組が屋台の話をして、室内組が食事の話をする。話題が同じ線で結ばれて、全員が参加しやすくなります。

そして、ちょっとだけ物語にします。「今日は稲荷神社のご利益で、いなりが増える日です」と冗談を言うと、場がフッと明るくなります。真面目だけでは回らない日もあるので、こういう軽口は大事です。狐も、たぶん笑っています。たぶん。

翌日・翌週に続けると“伸びる”~小さな振り返りは短く何度も~

初午レクの強みは、翌日にも続けやすいことです。大きなイベント報告会をやる必要はありません。短く、何度もが効きます。例えば翌日の入浴前に「昨日の太鼓、凄かったね」と一言だけ。お茶の時間に「鳥居の赤、綺麗だったね」と一言だけ。言葉が短いと負担がなく、でも回路は動きます。

外出が難しかった方にも同じように「初午だったね」と声を掛ける。小道具があるなら、鳥居の写真や小さな狐の飾りを見せる。ほんの少しで良いんです。初午の話題が施設の中に“薄く広く”漂うと、利用者さん同士の会話も生まれやすくなります。「行ったの?」「太鼓どうだった?」って。職員が全部回さなくても、場が回り始めます。これが理想です。

第4章の結論は、こうです。初午の縁日は、当日よりも“帰ってから”で伸びます。安全に着地させて、実況を短く再放送して、役割と合言葉で誇りを守り、いなり寿司で話題を繋ぐ。こうすると、外出できた人も出来なかった人も、同じテーマで笑える時間が増えます。

次は最後に、全体をまとめながら「初午に限らず季節行事をレクリエーションに変える考え方」を、優しく締めていきますね。

[広告]


まとめ…赤い鳥居と太鼓の音は最強の思い出ボタン—また来年も行こうね

初午の縁日をレクリエーションに取り入れる話を、ここまで長々と語ってきましたが、結局、一番言いたいことはシンプルです。認知症の方にとって大切なのは、「頭を動かすこと」そのものより、「安心して気持ちが動く時間」を増やすこと。気持ちが動くと、表情が変わり、声が出て、身体が少し前に出ます。そういう小さな前進が、生活の中ではとても大きいんです。

プリントやドリルが全部ダメ、という話ではありません。場面によっては役に立つし、好きな方もいます。ただ、誰にでも同じ方法を当てはめると「テストっぽさ」が出てしまうことがある。そこで季節行事の出番です。初午は、お稲荷さん、赤い鳥居、太鼓の音、屋台の匂い、いなり寿司といった“思い出の取っ手”が最初から用意されている行事でした。こちらが無理に引き出さなくても、向こうから話題が寄って来やすい。これが強みです。

そして外出レクは「危ないからやめよう」で終わらせるよりも、「安全の作り方を覚えて、短く、ゆっくり、戻れる形でやろう」に変えると、可能性が広がります。下見で焦りを減らし、動線を短くし、休憩を堂々と入れ、刺激が強ければ退避して切り替える。これだけでも混乱の芽はかなり摘めます。真剣さは胸にしまって、顔は明るく。これが意外と効きます。職員の表情って、利用者さんにとって天気予報みたいなものですからね。「今日は晴れだな」って顔で行くと、場が晴れます。

さらに、帰ってからの“もう一回”が、初午レクを本物にします。帰所直後は安心に着地させて、実況を短く再放送して、合言葉や役割で誇りを守って、いなり寿司で話題を繋ぐ。ここまでやると、当日の楽しかった一時間が、翌日・翌週までジワジワ効いてきます。外出できなかった方にも同じテーマを届けられるので、施設全体の空気が一緒に温かくなりやすいのも嬉しいところです。

最後に1つだけ、現場へのエールとして。季節行事のレクリエーションって、準備も気配りも必要で、正直、楽ではありません。でも、利用者さんがフッと笑ったり、「昔ね」と語り始めたり、太鼓の音に合わせて小さく手を動かしたりする瞬間に、「ああ、やって良かった」と思える真実の介護があります。あの瞬間は、職員側の疲れも少し薄くしてくれます。お稲荷さんのご利益があるとしたら、多分それです。狐は、たぶん見ています。たぶん。

初午に限らず、梅祭り、節分、ひな祭り、春の彼岸、夏祭り、秋の例大祭、年末の市…季節の行事は毎年やってきます。毎年やってくるということは、毎年アップデートできるということでもあります。今年は“短く安全に”、来年は“もう少しだけ深く”。そうやって積み重ねていけば、レクリエーションは「やらなきゃ」から「やって良かった」へ変わります。

さあ、次の初午は、まずは小さくで大丈夫です。鳥居の写真一枚でも、いなり寿司1つでも、太鼓の動画を一分だけでも。「今日は初午の気分だね」と笑えたら、それはもう立派なスタートです。お稲荷さん、今年もよろしくお願いします。こちらも、転ばないように頑張ります。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


[ 応援リンク ]


人気ブログランキングでフォロー

福彩心 - にほんブログ村

[ ゲーム ]

作者のitch.io(作品一覧)


[ 広告 ]
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。