目次
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「ちょっと焼きすぎじゃない?」
「いや、まだ中が赤いんだけど…」
そんな会話がバーベキュー会場で飛び交う季節になりました。
肉を前にした人間は、なぜこんなにも真剣になるのでしょう。
焼く?煮る?蒸す?それとも、思い切って生でいく?
なんなら「食べ方」に性格が出るとか、人生観がにじむとか…そんな噂もあったりなかったり。
でもよく考えてみると、世の中には「生で食べたら美味しいのに、施設では出せない」とか「この焼き加減が好きだけど、お腹が心配」とか、「あの部位は骨まわりが美味しいらしいけど加熱大丈夫?」とか、食の奥深さと安全の狭間に立たされる場面がたくさんあります。
この記事では、そんな**「美味しいのに出てこない」「焼き加減で人生迷子」**なあなたに向けて――
焼く、煮る、蒸す、そして生。
それぞれの食べ方の意味を、知識とユーモアでふんわり包んでご紹介します。
安全って何?
美味しさってどこ?その境界線の向こう側にこそ、夏の旨味とロマンがある――
さぁ、火をつけましょう。
心にも、お肉🍖にも。
ステーキの焼き加減を語り出すと、人はなぜか急に哲学者になる。
ミディアムレアだの、センターが温かい赤身が至高だの、ついには「ブルーが一番」とか言い出す猛者まで現れる。
あの青い肉(※見た目はほぼ生)を誇らしげに口にする姿には、「火って…必要か?」と問いたくなる余韻すら漂う。
でも確かにステーキって赤い方が旨そうだ。
血みたいな赤身も、実はミオグロビンというたんぱく質の色だって分かってくると、知識が美味しさを後押ししてくれる。
ところが、ハンバーグ。
牛肉であることは同じでも、こちらは赤いと場の空気が凍る。
「あれ?焼けてる?」「中、ちょっと生っぽくない?」と誰もが箸を止める。
ステーキのときは拍手喝采だった赤色が、ハンバーグでは緊急停止のサインになるのだ。
なぜだろう?
答えは実にシンプル。
ステーキは塊肉で、菌は基本的に表面にしかいない。
だから表面をしっかり焼けば、中心はレアでも問題ない。
対してハンバーグは、挽いた時点でその表面が全部バラバラになり、菌も一緒に中まで巻き込まれる。
つまり中までしっかり火を通さなければ、「お腹壊します予備軍」になるのだ。
温かければいい?──残念、それは大いなる勘違い。
菌は熱に弱いが、“ぬるさ”では死なない。
中心温度75℃、1分以上キープ。
これが安心のライン。
中がジューシーなのと、生焼けなのは、まったくの別物です。
さて、ここで一つ、通ぶった疑問を挟みたくなる。
「じゃあ塊肉の表面を洗うか削り落として、中だけ使えば生で食べてもいいんじゃない?」というやつだ。
理屈だけで言えば、これはほぼ正解。
実際、フランスやイタリアの高級料理店では、表面を削いで使う手法が確立されている。
生肉を提供する場合には、まず表面の筋や脂肪、外気に触れた部分を包丁で丁寧に取り除く。
調理器具もすべて別管理。
生食用の牛は飼育段階から指定農場で管理され、衛生基準をクリアした屠畜ルートを経て、お店に届く。
それを職人が、目利きと繊細な技術で仕上げるからこそ、安心して「生の旨さ」に出会えるのだ。
だがこれ、家庭で再現できるかといえば…正直、無理がある。
まな板、包丁、手の温度、保存環境。
どれか一つ欠けただけで、安全ゾーンは崩れる。
おまけに家庭用冷蔵庫はプロ仕様と比べて温度の安定感に欠ける。
削ったからセーフ、なんて言ってると、菌が口元で苦笑いしているかもしれない。
そして気をつけたいのが、調理環境だけでなく「季節」の影響だ。
夏の火加減と、冬のそれは同じじゃない。
気温が低いとフライパンの立ち上がりが遅れ、肉自体の温度も低いまま焼き始めることになる。
すると、同じ“時間”で焼いても、中心がまだぬるい…なんてことが起こるのだ。
冬のバーベキューこそ「+1~2分の愛情」が必要。いつもの“ちょうどいい”が、油断すると“ちょっと危険”に変わる。
赤くてもいい肉、赤いとダメな肉。
どちらも美味しさと隣り合わせの「安全🩷」の壁を持っている。
ステーキは語る肉、ハンバーグは守る肉。
焼くって、実は奥深くて、ちょっとドラマチックなのです。
刺身はいいんですよ。
堂々としてます。
スーパーでもパックに鎮座してるし、寿司屋では主役級。
火を通してないのが当たり前、どころか火を通そうもんなら「えっ、それはしゃぶしゃぶじゃ?」と周囲がざわつくレベル。
生で食べることへの信頼感、そこには何かしらの“許された感”が漂っています。
なのにユッケや鶏刺し、ちょっと空気が違う。
メニューにあったら「あ、ここ出すんだ…」と小声になり、注文したら「チャレンジャーね」と若干ざわつく。
これ、何なの?魚の生はOKで、肉の生はNG。
え、どっちも生じゃないの?
このギャップ、鍵は“リスクの種類”にある。
魚にいるアニサキスは、きちんと冷凍すれば死ぬ。
だから刺身は、冷凍処理されたものを解凍して安全に提供してるお店がほとんど。
冷凍済みネタは回転寿司でもスーパーでも常識です。
つまり“見た目は生だけど、ちゃんと処理してある”という安心感があるんですね。
ところが肉の方。
ユッケや鶏刺しの裏には、O157、カンピロバクター、サルモネラ、E型肝炎ウイルスなど…聞いただけでお腹がキュッとなるような食中毒リスクが潜んでいる。
特に鶏肉はカンピロバクターの温床といわれていて、生で食べた場合、少量でも症状が出ることがあるのです。
で、これらの菌たち、冷凍じゃ死なない。
下手に冷凍すると元気になって帰ってくることもある。
冷凍でOKなアニサキスとは、ここが大きな違いです。
だから厚生労働省は、生肉提供に厳しいルールを設けています。
たとえば牛レバーの生食は2012年から全面禁止。
鶏のレバーも生での提供は禁止されています。
もちろん「焼いて食べる」分には問題ありません。
火を通せば菌は死ぬので、焼きレバーや唐揚げはOK。
でも“生”では出しちゃダメよ、というのが正式ルールです。
このあたり、知ってるようでうっかり忘れがち。
なまじレバ刺し文化があっただけに「今もどこかで食べられるんじゃ…」と思ってる方もいるかもしれませんが、今の日本では法律でNG。
見かけたら、「それ、大丈夫なの?」と内心ツッコミを入れておきましょう。
ちなみに韓国のユッケ文化も、かつてはフリーダムでしたが、最近は規制が進んでいます。
高齢者や子どもへの提供を控えるように指導され、加工や調理法も指定されたものだけが許可される時代になってきました。
ユッケはもはや、信頼と衛生管理の上で咲くグルメ界の儚い花。
昔のように気軽に食べるには、ちょっとハードルが上がっているんですね。
それでも、生肉って美味しいんです。
柔らかくて、とろけて、脂がまろやかに広がって。
だから人は惹かれる。
でもその美味しさには“安全の知識”という名の鍵が要る。
知らずに食べると、お腹を壊すどころか、命に関わることすらある。
美味しいけど危うい、それが生肉の宿命。
刺身だけが特別なんじゃない。
ちゃんと処理すれば、魚は生でもいける。
肉は、その“処理”が難しいから、生での提供が禁じられているだけ。
つまり生食文化の境界線は、味じゃなくて、菌とウイルスの気分次第。
今日はお腹がセーフでも、明日はアウトかもしれない。
ならばやっぱり、火を入れる勇気も、愛🩷なのです。
「だってさ、一度凍らせれば大丈夫なんでしょ?」という、なんとも軽やかで雑な安心感が、時として食卓に現れる。
寄生虫も菌も冷凍でピシッと止まる。
そんなイメージが、どうやら世間には根付いているようだ。
でも冷凍って、そんなに万能だったっけ?
――そう首を傾げたとき、北海道の端っこから小さな声が聞こえてくる。
「ちょっと…それ、ルイベの努力を軽く見てない?」
ルイベ。
それはアイヌの知恵が生んだ、冷凍刺身の芸術🩷。
サケやマスなど寄生虫のリスクがある魚を一度凍らせ、解凍せずに半冷凍のまま食べる。
シャリッとした口当たりと、ひんやりとろける脂の旨さ。
それはもう、“冷たい刺身”なんて言葉では表現できないほど繊細で、計算され尽くした食文化なのです。
この「一度凍らせてから食べる」って技法、実は魚にはとても有効。
特にアニサキス。
あの胃壁に穴を開けにくるヤバいやつは、-20℃で24時間以上の冷凍で確実にノックアウトされる。
だから刺身を安全に食べるには、冷凍処理されたものを選ぶのが今や基本の“たしなみ”。
ルイベはそれを最も美しく形にした例とも言えます。
でもだ。
じゃあ「肉も一回冷凍したら安全でしょ?」と、ここぞとばかりに豚のレバーを冷凍庫に放り込んで、そのまま薄切りにして出してきたら…それはもう、ルイベが泣くどころか、保健所が動くレベルの事件である。
なぜかって?
魚と肉では、リスクの中身がまったく違う。
魚は主にアニサキスという「冷凍で死ぬ」系の敵を抱えている。
でも、豚や鶏の敵は違う。
E型肝炎ウイルス、サルモネラ、カンピロバクター、トキソプラズマといった面々は、冷凍ごときではビクともしない。
むしろ一部は「おっ、休眠か?じゃあ元気に復活っと!」みたいな、軽くホラーな展開すらある。
つまり肉の場合、「冷凍したから生でいける」は、幻想であり、下手すると病院送りの片道切符。
ちなみに、牛肉でタルタルステーキを出すフランスの高級店などでは、冷凍に頼らず、飼育から流通、調理、器具の衛生に至るまで、すべてを専用で管理している。
まな板やナイフまで別。包丁を取り替えるタイミングに職人のプライドが宿っていると言っても過言じゃない。
それくらい徹底して“菌を寄せ付けない”努力があって、やっとあの生肉は成立しているのだ。
冷凍が生を安全にする。
それは半分正解。
でも全体に当てはめると、大いなる勘違い。
ルイベは冷凍の勝者ではあるけど、それは“相手がアニサキスだったから”に過ぎない。
肉の敵はもっとしぶといし、筋肉の奥にまで入り込む。
冷やしたぐらいで静かになるようなやつらじゃないのだ。
だから、「冷凍してるから安心でしょ?」と笑いながら豚刺しを出そうとしていたら、後ろでルイベがそっと手を差し出してくるかもしれない。
「冷凍を、あまり雑に扱わないで…」って。
高齢者施設のメニュー表に“刺身”と書かれていたら、ちょっとした事件である。
職員が「えっ?これ出していいんですか?」と確認に走り、栄養士さんが「解凍済みで、湯引きしてあります」とそっと言い添える。
そう、施設の食事に“生”はなかなか登場しない。
どんなに魚好きでも、焼き魚、煮魚、味噌煮が主流📌。
ましてや肉の生なんて夢のまた夢だ。
それにはちゃんと理由がある。
高齢になると、免疫力が落ちる。
胃酸の分泌も減る。
ちょっとした菌でも、お腹の中で大騒ぎを始めてしまう。
さらに、噛む力、飲み込む力――嚥下機能も衰えてくる。
だから、やわらかくて、しっかり加熱された、飲み込みやすい料理が求められる。
生食なんて、まさにリスクの塊。
おいしさよりも“安全”が最優先される現場なのだ。
でも――食べたい気持ちは、消えない。
「昔はトロが好きでねぇ」「若いころはレバ刺し、よう食べとった」と、目を細めるおじいちゃんおばあちゃんがいる。
生卵をぐるぐる混ぜたすき焼き、寿司屋で握ってもらったマグロの赤身、その記憶が口元に浮かぶ。
舌は覚えてるのだ。あの味、あの温度、あのとろける感触を。
施設食は工夫されている。
見た目は刺身風の蒸し魚、やわらか加工のネギトロ風ペースト、低温加熱で再現されたしっとりローストビーフ。
でも、どれだけ工夫しても、「本物とはちょっと違う」の壁はある。
けれどもその努力は、記憶に寄り添う努力でもある。
「また食べた気がした」「これもおいしいね」と微笑むその顔に、料理が届いていることが分かる。
時々、行事食という名のサプライズがある。
夏祭りの日、敬老の日、年末年始。
そこに“ほんのひと切れのマグロ”が、特別ルートで安全に届くことがある。
管理された冷凍、再検査、少量限定。食べるのはほんの一口。
それでもその日ばかりは、口の中より先に心がとろけるのだ。
高齢者施設に“生”が登場しないのは、食べる人の命を守るため。
でも、生を味わってきた人生を否定するわけじゃない。
むしろ、その記憶の鮮やかさを大事にするために、今日も厨房では「似てるけど全く別で安全な何か」を作り続けている。
“本物”とは何か。
“味わう”とは何か。
火を通してなお、とろける思い出がある限り、生の記憶は食卓のどこかで生きている。
結局のところ、火入れとは、愛なのか。
いや、安全策なのか。
はたまた、保険対応を恐れる施設側の自己防衛なのか。
…答えは、全部です。
焼く、煮る、蒸す、そして生で食べる。
そのどれもが、食材の個性を引き出す手段である一方で、命に関わるスイッチでもあるというのが、今回のお話でした。
ステーキは赤くて美味しいけど、ハンバーグは赤いと怒られる。
刺身は市民権を得ているのに、ユッケや鶏刺しはまるで禁断の果実扱い。
ルイベに至っては、冷凍という繊細な芸を披露してるのに、「とりあえず凍らせりゃいいんでしょ」なんて言われて泣いている。
そして施設では、“生”は基本お断り。
もちろんそれには納得できる理由がある。
でもそれと同時に、コストと責任逃れの都合が「安全」という大義に包まれているのも否めない。
ほんの一切れのマグロを出すために何枚の申請書がいるか、誰が検品するか、予算がどうか…そんな裏側があるのも、これまた事実。
だけど人間ってのは、火の通り加減ひとつで幸せにも不満にもなるめんどくさい生き物だ。
ちょっと赤いと不安で、ちょっと焼きすぎるとガッカリする。
生がいいとか、よく焼きがいいとか、好みで争うくせに、どこかで「安全なら何でもいいよ」なんて急に大人ぶる。
でもその曖昧さこそが、食べるって行為の“人間らしさ”なんじゃないかと思う。
安全とは、体調を崩さない範囲のこと。
美味しさとは、体が歓ぶ温度と味わい。
この二つのバランスを取るのが、火加減の妙。
そしてその火加減をめぐる物語には、調理師だけじゃなく、食べる人、作る人、管理する人、それぞれの事情と思惑が詰まっている。
📍夏のバーベキューで焼き加減に文句を言うあなたも、厨房で湯せんしすぎてパサつかせる職員も、冷凍庫からトロを出して「これ解凍でいけるよね?」と聞いてくる経営者も――全員、火と生のはざまで生きている。
だから今日も私たちは、焼きすぎず、焼かなさすぎず。
美味しさと安全のちょうど中間で、あの一口の“うまっ”を目指してトングを握るのです。
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