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高齢者施設のお食事って…
食べやすくて…
美味しくて…
飲み込みやすくて…
と、お金も絡むほど、条件が重なるほどありきたりになってしまう欠点があるんです。
日常は家庭料理。
でも、お祝いや行事など、
特別な日を1年に何日か設けて華やかさや意義を食卓に盛り込んでみませんか?
今日は、11月3日の文化の日にちなんで行事食を考えてみました。
文化の日は、じつは戦前は明治節と呼ばれた明治天皇の誕生日でした。
現在の天皇主権…いや国民主権ではありますが…。
礎を築いたのは明治天皇です。
明治時代と言いますと、江戸時代の慣習を一気に壊して西洋化が推進された時代です。
もちろん、戊辰戦争など国内の争乱もあって、
外国の圧力の風に押されて誕生したこともあって、
急速に西洋化が進みました。
鉄道などの鉄の世界。
行事もまた、欧米文化が積極的に導入されて世間に広がり…。
建築様式や学問もまた広く欧米化していきました。
いろんな事柄が、明治の45年の間には著しい変化を遂げたので、
現在では文明開化の時代とも呼ばれています。
もちろんもちろん、倒幕から戊辰戦争…それ以外にも廃仏毀釈など、
一昔前の江戸時代の文化破壊という、
大きな犠牲ありきだったことを忘れてはいけません。
と…固いところはともかくとしまして、
明治時代は、現在に至る大事な舵取りの時代だったことは歴史が証明しているところです。
さて、今回は食文化の話題。
いやいや、現代の高齢者施設での行事食をどうする?
そこがテーマの話題です。
現代の施設に暮らす高齢者さんが生まれたのは、
戦後生まれの方が圧倒的に多くなりました。
しかし、高齢者さんの親御様のほとんどは皆様、明治時代の生まれです。
分かりますか?
お料理は、食べる方の人生における生活背景、
歴史を注視することが、基礎として、とても大事です。
ですから、明治後半から昭和初期の頃の食文化はどうだったのか?
どんな教育や食生活を経てきたのかを知ることが、大事なキーになるわけです。
現在の高齢者施設の行事食・文化の日をいろいろと調べてみますと…。
□ ちらし寿司
□ にぎり寿司
□ かぼちゃプリン
□ お浸し
□ 吸い物
□ 香の物
この辺りが定番です…。
ちなみに、ちらし寿司…予算があるのかないのか…刺身のネタは数切れの具材だけです。
それも生魚はマグロ1枚…なんて、
どこの定食屋でも出さない貧相な料理が、じつは多いのです。
味覚の秋で、食材は山ほどあるのに…
量が限られてしまったり、
食材も限定されてしまう。
課題…というか施設の言い訳としましては、
□ 食事代の予算が限られているから…。
□ 入居者様の数だけ分の大量の調理をしないといけないから…。
□ 厨房スタッフの数が限られてしまうから…。
□ 食あたりしそうな食材は体調を崩されたり、クレームになりやすいから…ちょっと…。
このような理由で、質素というか、
通り越して、貧相な行事食が提供されてしまっているようです。
他にも、
□ たくさん並べても、個人に均等に分けると残飯が大量に出る…。…残飯の山が出てしまう。
□ 咀嚼能力の低下した高齢者さんが多いから、食材の吟味が重要なので…噛めなきゃ出さないスタンスです?
□ トロミ剤とのマッチングが難しくて…加工するトロミ剤ありきなんです…片栗粉や葛粉は試してみたのでしょうか…。
□ 好き嫌いで残される方、アレルギーの方など嗜好の訴えが複雑すぎて…個別追及と対応が甘いのではないでしょうか…。
□ お金のない方に負担を強いられない…法人減免や生活保護はきちんと適用したのでしょうか…十人十色は認められないですかね?
と、いろいろな理由があるようですが、
何とも私個人としては、納得がいかないところです。
しかしです。
障害や病気を負われた方が、文化の日に行事食を楽しめない…そもそも文化とは何か?
結論を持って行く前提が、食事にあるとして、
導き出され見える結果が貧しさだったら…とても悲しくなりませんか?
是非、誰もが納得して楽しめるような文化的な行事食を考えましょう。
□ 芋
□ 栗
□ 南瓜
□ 柿
□ 蜜柑
この辺りの果物は、秋の味覚としてデザートにそのまま出すなり、
プリンやお菓子にして、おやつとして提供しましょう。
ただし、ありきたりな定番というイメージは拭えません。
さて、話は振り出しに戻りますが、
明治発祥とされる食文化の代表に牛鍋があります。
江戸時代は、とても神聖視されて一般的に食べられなかった農作業の友でもあった牛さんのお肉・牛肉。
明治の文明破壊と西欧化の恩恵の1つが、日本でも牛肉を食べられるようになったこと。
ですが、当時の牛鍋は、牛肉と葱だけの質素なものです。
それでも、牛鍋のお店は大繁盛だったそうです。
牛鍋というと、ピンとこないかもしれませんが、
現代では、すき焼きに発展しています。
現代のすき焼きは豆腐やしいたけ、糸こんにゃく、白菜などなど多くの具材の入る複雑な味わいになることが多いです。
昔の牛鍋の肉は、ブロックの四角いカット肉だったようですが…
スライス技術が未発達だった時代ですから仕方がありません。
もちろん四角いカット肉の旨さは、馴染がない分、最高の味だったのかもしれません。
工夫としては、肉質を松阪牛などのブランド牛にしますと、
高齢者の嚥下にも、大きく貢献してくれることでしょう。
もちろん、昔には松阪牛などありませんし、固いお肉だったかもしれません。
牛鍋そのものを高齢者さんへ提供するよりも、
すき焼きとして現代風に食べられる具材を楽しんでいただいてはいかがでしょう?
もちろん、生卵とじ付き。
すき焼きが1つめのおすすめの行事食の提案です。
夕食にご家族を招いて、
□ カセットコンロと鍋と材料を各ご家庭より持参いただく。
… 家族分を施設でご用意するのは大変というより不可能ですからね。
□ ご家族と二人鍋を楽しんでいただく。
… 家族の団欒の演出をしてみはいかがでしょう?
肌寒い時候ではありますが、施設の庭など野外で、
すき焼きをご家族と一緒に楽しんでいただくと団欒の温かみもあって楽しめるかもしれません。
さて、その2。
朝食にあんぱんと成分無調整牛乳はいかがでしょう?
え?突飛な提案?
普通に出すことがある?
今や庶民的とも言えるあんぱん。
明治時代に誕生して、メジャーデビューした食べ物です。
是非、朝食はあんぱんと牛乳、あるいはコーヒー牛乳をご提供してみてください。
さらに、その3…は工夫の数々をご紹介。
□ 1 肉類の変更
すき焼きを取り上げましたけど、肉類全般、江戸時代には禁忌だった食べ物なんです。
もちろん飢饉のあった時代ですから、陰ではこっそりと食べられた食材です。
その辺りは↓の記事を参照してみれくださいね。
秋は鴨肉、猪肉も冬眠前で、旬とも言えます。
ジビエ料理の世界です。
施設の高齢者の分、人数分の確保と調理、味わっていただく方法まで確立できましたら完璧です。
□ 2 果物は全員がとれるように加熱調理した世界を…。
腎臓の機能が低下した高齢者には、生の野菜や果物は、
カリウム値が高くなりやすいので禁止されがちです。
そこで加熱して加工して、満足いくような味のお料理へと調えるのも工夫です。
秋冬の果実が揃う季節ですので、芋栗南瓜に偏らずに、
柿やリンゴ、みかんの美味しい加工に力を入れると喜ばれがちです。
もちろん、芋栗南瓜デザートも捨てがたいですが…文化の日の行事食を考えるなら、今日は是非とも譲ってもらいましょう。
伝統一色の行事食へ転換。
それも施設のいろいろな方が共有して楽しめるということを前提にしましょう。
特別であるからこそ行事食。
□ 是非、コストや好き嫌いなど膨大な量の情報を整理して蟻の一穴…全体的な一致点を見出すか?
□ あるいは各個人が満足できるオリジナリティーを追及するか?
□ 令和の年代に相応しく全員が納得する行事食を提供するか?
いろいろな工夫がありそうです。
11月3日の文化の日らしいメニューは思い浮かびましたでしょうか?
すき焼きやジビエ、あんぱんにデザートをざっくり語った記事でした。
レシピ?分量?材料?
そんなものは、個々人の味覚に寄り、差異が出るものです。
むしろ、餡やシロップなどの多寡を個人で決められるなど、
加減を斟酌することが出来るように配慮することで、全員がより楽しめる要素になります。
そして大事なのは、行事食を提供する時に、
一般流通レベル未満で留まっていただきたくないのが事実です。
良い材料、悪質な材料まで、いろんな高い安い料金の材料が蔓延る世界です。
行事だからと貧相な見栄えになってしまうことを第一に防ぎ、
文化的な価値観を個々人で合わせてもらい、文化の日の行事食を謳歌していただく…。
あるいは逆に少量で貧相に見えつつも、味を絶品に整えるかです。
どちらにしても、誰も満足しきれないような悲惨な状況だけは避けましょう。
高齢者施設では、何事も施設側が横柄に仕切りたくなり、
コスト面で施設負担に気を配り過ぎると、結果は必ず貧相一択になってしまう。
もちろん、様々な理由をもっともらしく語った上で言い分けにしかならないわけです。
食べたいものは食べたい…食べられるものならば!
高齢者さんの本音や希望は絶対に、ここにあります。
ご家族と共に食べる特別なお祝いやイメージを共有する料理。
施設に暮らす高齢者さんにとって、
何よりも替え難い思い出になると共に満足を引き出す料理になることでしょう。
11月3日の文化の日に、その基点となる行事食の企画を立ててみるのも、
文明開化を掲げる文化の日に相応しい内容となるのではないでしょうか?